「残業代ゼロ」が話題になっています。
- 「残業代ゼロ」一般社員に拡大 産業競争力会議に提言へ (ハフィントンポスト)
おはようございます。今朝の朝日新聞には、政府の産業競争力会議が「残業代ゼロ」を一般社員を広げることを6月の「成長戦略」に提言するとあります。2面には「少子化対策」の記事がありますが、「残業代ゼロ」は少子化対策に拍車をかける政策。労働分配率をあげ、「残業ゼロ」にする方向とは逆。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2014, 4月 21
消費増税を追うように進められている法人減税。大手企業の内部留保は膨らんでいるが、労働分配率を賃金上昇で実現することはごくわずか、あっても規模が小さい。残業代ゼロ社員となれば、今以上に子育て世代は苦しくなるのではないか。少なくとも、子育て社員に対する企業の社会的責任を果たすべき。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) 2014, 4月 21
上のtweetのように、労働分配率低下を懸念する声があるので、最近の労働分配率の水準を確認しておきます。
労働分配率については、脇田成が2005年の論文で以下の指摘をしています。
近年懸念されることの多かった労働分配率上昇は,巨額の資本減耗費用を反映したものである。「所得」概念ではなく,「生産」概念で考察した労働分配率は「失われた10年」と言われる停滞期であっても,経験的にほぼ一定である。そして後者が理論的には望ましい性質を持つ。なお巨額の資本減耗費用が企業の潤沢なキャッシュ・フローを他方で生んでいる。
「生産」概念による労働分配率は、歴史的には低水準にあります。【『賃上げはなぜ必要か』が明かす日本の閉塞の構造】にも示しましたが、バブル崩壊後の「人件費の高止まりが企業利益を圧迫」する状況は、2000年代初頭に終わっています。
一方、固定資本減耗の対GDP比は、1990年代末から高止まりを続けています。
企業が過剰貯蓄に励むことが、家計消費を抑圧して経済全体の成長を妨げる「倹約のパラドックス」が生じています。
「企業を儲けさせる政策≠日本経済の停滞を打破する政策」であることへの配慮が求められます。
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