安倍晋三首相は22日、首相官邸で開いた政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討してほしい」と表明した。社員本人の希望や労使の合意を前提に、仕事の忙しさに応じて柔軟な働き方ができるよう労働時間の規制を外す仕組みの創設をめざす考えだ。
同日の合同会議で、競争力会議の民間議員である長谷川閑史経済同友会代表幹事が2つの案を提示したのを受けた発言。
1つ目の案は、高い能力を持ち、自らの判断で時間と関係なく仕事を進められる社員を想定する。この場合、年収は1千万円以上などの目安を設ける。報酬は働いた時間に関係なく、成果に応じて払う仕組みにする。
もう一つの案は、会社側が仕事の内容を明示したうえで1年間で働く時間などをあらかじめ労使で決める。この条件の範囲内であれば、社員が平日に働く時間を自由に調整できる。2案はともに社員が希望し選択することを前提にする。
現在、労働時間の規定の対象外となっているのは、一般企業では、労働組合員ではなくなった管理職らに限られている。
首相は「安心して職場を選び、事業者も安心して雇用創出ができるように、労働紛争の解決を促す、客観的で透明性の高い仕組みの検討を進めたい」とも強調。解雇無効をめぐる紛争の後、金銭で解決する制度をとり入れる必要性を訴えた。
2006年に発足した第1次安倍内閣でも、従業員の労働時間規制を外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ぶ制度を盛り込んだ法案の国会提出を検討した。しかし、野党などが反対して断念した経緯がある。
同日の会議では、麻生太郎財務相が、都道府県ごとに医療費の目標を決め、支出を抑える仕組みを提案した。各地域が病院再編やIT(情報技術)活用による効率化で医療費を減らす。同提案は田村憲久厚生労働相も検討する意向を示した。
安倍晋三、長谷川閑史