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オバマ大統領 訪日のねらいは

4月22日 19時35分

田中正良記者

アメリカのオバマ大統領が23日から日本を訪れます。
アジア重視政策を掲げるオバマ大統領の訪日のねらいはどこにあるのか。
ワシントン支局の田中正良記者が解説します。

3年半ぶりの訪日

オバマ大統領の訪日は2009年11月、2010年11月に続いて3回目です。
日本政府はオバマ大統領を初めて国賓として迎えることを決定。
歓迎行事や天皇皇后両陛下との会見、宮中晩さん会などが予定されています。
アメリカの大統領が国賓として日本を訪問するのは1996年のクリントン大統領以来、18年ぶりのことです。
日本のあと、韓国、マレーシア、フィリピンも訪問する予定ですが、日本では訪問する4か国の中で最も長い2泊3日の日程です。

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ホワイトハウスは天皇陛下と安倍総理大臣と多くの時間を過ごすことを挙げ、日本との関係を重視していると強調しました。

主眼は日米同盟強化

出発前の21日、ワシントンで記者会見したホワイトハウスのローズ大統領副補佐官は今回の訪問でアメリカが重視するのは同盟関係の強化だと明言しました。
まず、安全保障分野で同盟国に対するアメリカの関与を明確にすること。
そして、先月、オランダで首脳会談の開催にこぎ着けた日米韓3か国の協力をさらに推進することを確認したいとしています。

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次に貿易通商の分野。
世界で最も力強い経済成長を続けるアジア太平洋地域で、アメリカの貿易のチャンスを増やすことです。
念頭にあるのはTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉を前進させることです。
大統領は教育や文化の分野の人的交流にも強い関心を持っています。
大学生などの留学を通して相互理解を一段と深め、科学技術分野での協力をさらに進めたいとしています。
安全保障、貿易通商、科学技術といった分野の協力をこれまで以上に進めることで、アメリカとしては日米同盟が強固で盤石であることを強調し、アジア太平洋地域重視の政策を内外に示したい考えです。

TPP交渉にこだわるわけ

なかでもオバマ大統領が特に重視しているのが、日米首脳会談でTPP交渉の一定の成果を示すことです。
TPP交渉の成功がオバマ大統領にとってなぜ重要なのでしょうか。
それはTPPが大統領の「アジア重視政策」の要と位置づけられているためです。
TPPは貿易協定にとどまらず、中国が存在感を高めるなかで、日米両国が主導するルールに基づく経済秩序を形成するという外交戦略上の意味もあるからです。

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アメリカ国内の事情もあります。
アメリカの畜産農家からは日本の市場開放への強い圧力がかかっています。
一方、与党、民主党の議員の多くが支援を受ける労働組合からは、貿易自由化で雇用が失われるとして、抵抗する声も広がり始めています。
国内で賛否の意見が分かれるTPPについては、ことし11月の中間選挙が近づく前に、できるかぎり合意に向けた道筋をつけておきたいという思惑があるとみられます。
日米両政府は首脳会談の直前まで交渉を続ける構えですが、「首脳会談までに大筋合意に達することは難しい」という見方も出ています。
焦点となっている牛肉や豚肉の関税については、大幅な引き下げを求めるアメリカと、一定の水準の維持を目指す日本の対立が続いています。
首脳会談でどこまで一致した認識を示せるか日米の経済界も注目しています。

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対中国政策

日米首脳会談で発せられるメッセージは、軍備増強を続け海洋進出の動きを強める中国にも向けられています。
アメリカは、中国が東シナ海で沖縄県の尖閣諸島の上空を含む広い範囲に一方的に防空識別圏を設定したり、南シナ海でフィリピンと領有権を争うセカンド・トーマス礁の周辺で力を使って現状を変えようとしたりしているとして懸念を強めています。

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日米首脳会談で、両政府は日米同盟が地域の安定と繁栄に貢献していることを強調する共同文書を発表する方向で調整を進めています。
この中では、アメリカの同盟国に対する安全保障上の責任を果たすことや力による現状変更を認めない方針を盛り込むことが検討されています。
海洋進出を続ける中国を念頭に置いたものと言え、オバマ大統領は今回のアジア訪問で、東シナ海で中国と対立する日本だけでなく、南シナ海で中国と対立するフィリピンやマレーシアとも連携強化を確認し、中国による一方的な現状変更には反対する姿勢を示すものとみられます。

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オバマ大統領は最初の訪問国、日本でそのことを明確に示したいとしており、歴史を巡って一時ぎくしゃくした日米両国が強い結束を示し、日本がオバマ大統領のアジア重視政策の中核となるのかどうか中国など世界各国が注視しています。