IDEAS + INNOVATIONS

WIRED VOL.11

WIRED VOL.11

WIRED VOL 11
 
NEWS

宇宙で盲腸になったときのための「おへそから入る手術ロボット」

おへその切開部から体内へ入り、緊急手術を行う重量400gのロボットを米企業が開発した。宇宙船などでの使用を想定している。

 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加

TEXT BY OLIVIA SOLON
IMAGE BY WIKIMEDIA COMMONS
TRANSLATION BY TOMOKO TAKAHASHI/GALILEO

WIRED NEWS (UK)

恐ろしいことに、おへそからロボットが入っていくという。Wikimedia Commons

火星へ向かう途中で、宇宙飛行士が虫垂炎になったらどうする? 小型の「手術ロボット」が、おへそから入って治療してくれるかもしれない。

そんな未来を目指しているのが、ネブラスカ州に拠点を置くVirtual Incision社だ。同社が開発した外科手術法(PDFファイル)は、重量400gの小型ロボットを、腹部の切開部から体内へ入り込ませるというものだ。

同社のロボットは、宇宙飛行や探検旅行での使用を想定しており、2015年初めには、航空機を放物線飛行させることによる無重力状態での試験が行われる予定だ。システムの試作品は、すでにブタを使った試験が行われている。

同技術は、もともとは米航空宇宙局(NASA)の人間研究プログラムの一環として、ネブラスカ大学リンカーン校で開発されたものだ。

ロボット本体には「胴体」と、2本の独立した腕がある。腕には「肩」と「肘」の関節があり、前腕部にはグラスパー(補足器具)や傷を焼く器具、外科用ハサミなど、付け替え可能な各種専用ツールが装着される。

ロボットの関節は直流モーターで動き、オンボードの制御システムによって制御される。制御システムは、手術用のユーザーインターフェースに搭載されたLinuxマシンから命令を受け取る。

手術用インターフェースは、仮想物体に触れて操作することが可能なインターフェース装置「PHANTOM Omni」と、モニター、フットペダルからなる。モニターを通じて、腹部内の様子を視覚的に知ることができる。触覚のフィードバックが得られることで、遠隔からの手術操作が可能となる。

手術中の腹部内は、より良好な視界と作業スペースを確保するために、ガス(通常は二酸化炭素)で膨らませる。フットペダルは、ロボットの両腕に対するクラッチとブレーキとして機能する。

ロボットは、へそに開けた1カ所の切開創から、専用のポートを使って体内に入る。このポートは、ロボットが体内に入る際、膨らませた腹部からガスが漏れるのを防ぐ。ロボットの一部は体外に残り、手術中の腹部の密閉状態を維持する。

開発に当たる研究チームは、同技術が虫垂や胆嚢の切除、腹部内の出血や胃潰瘍の穿孔の防止など、「腹部の緊急処置において、侵襲性を最小限に抑えた外科的切除を促進する」と期待している。

無重力状態での手術については、そのほか、ルイヴィル大学等の研究チームが、「Aqueous Immersion Surgical System」(浸水手術システム:PDFファイル)のテストを行っている。これは、観血的手術(メスを入れたり縫ったりする手術)を行う際に、手術箇所を透明な箱で覆い、この中に生理食塩水を満たすものだ。このシステムは、血液や組織の飛散によって宇宙船内が汚染されるのを防ぐほか、(生理食塩水の圧力によって)出血を抑える利点がある

また、ワシントン大学の研究チームは、集束超音波を使って、腹部の非侵襲的手術を可能にする技術(PDFファイル)の開発を目指している。

※以下の動画はVirtual Incision社によるプレゼンテーション。

 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
SHARE A COMMENT

コメントをシェアしよう

 

BACK TO TOP

WIRED Vol.10 JOBS Interviewbanner