後手番角頭歩戦法の研究
まえがき
私は、数年前に「最近の風潮として、どの将棋もある程度までは同じような形になるというのはつまらないな」と思い始めていました。
要は、「コピー将棋はつまらない」ということですね。
そこで、苦手な序盤で不利になるくらいならば何か面白い戦法はないか、と模索を続けていました。
その頃と時を同じくして、将棋倶楽部24で某高段者の方の将棋を観戦して衝撃を受けました。
というのは、その方は2手目に△2四歩として無防備な角頭を曝け出していたのです。
そして、何とその方は六段を相手に圧勝してしまいました。
驚きはこれだけに留まらず、その方の棋譜を拝見したところ、ほぼ全ての将棋を角頭歩で戦っておられました。
こうして、この方の独創的な序盤と機械のように正確な終盤に魅せられた私は、角頭歩の研究を始めるに至りました。
そして、今までの一応の成果として、恥ずかしながら私の研究を公開することに致しました。
拙い研究で大変恐縮ではありますが、「へぇ〜将棋にはこんな戦法もあるんだな」くらいに思って頂ければ幸いです。
なお、PCの画面が小さい方などは、文章の改行が不自然な形で表示されて見にくいこともあるかと思いますが、ご容赦下さい。
最後に注釈です。 便宜上、以下の文中では断定の形をとっていますが、ここに書かれていることが正しいとは限りません。
むしろ、間違っていることを前提として参考程度に読んで頂けると有り難いです。
私は以下の研究にそこまで自信があるわけではない(元々趣味として始めた研究なので…)ので、何か御座いましたらご指摘下さい。
それでは、以下のページをご覧下さい。
※このホームページの文章や画像の著作権は、特に記述のない限り、全て著者(牛久)に帰属します。
無断使用はご遠慮願います。 …と、大それたことを書くほど大した内容ではないのですけれども(笑)
筑波大学将棋部HP管理人 牛久 純
後手番角頭歩戦法の最序盤について
後手番角頭歩戦法とは、初手▲7六歩に対して2手目に△2四歩と突く指し方です。
一見すると簡単に飛車先が破れるように見えますが、様々な罠が仕掛けられており、そう簡単にはいきません。

△2四歩に対しての先手の指し手は、「▲2六歩」または「それ以外」の2種類に大別できます。
「それ以外」については、実に様々な指し方が考えられるので後で簡単に書くことにして、「▲2六歩」に対しての指し方を考えることにします。
▲2六歩に対しては、△3四歩が絶対手です。 この図が後手番角頭歩戦法の基本図とも言える図で、ここから色々な局面へと発展していきます。

ここでもまた指し手が分岐し、「▲2五歩」または「それ以外」の2種類に大別できます。 このように序盤から色々と分岐があるのがこの戦法の特徴です。
このように、後手番角頭歩戦法には、定跡形にはない面白さがあるのではないかと思います。
ここで先手が▲2五歩とすれば「超急戦型」となります。 以下は、この型に関しての研究を記したいと思います。 また、それ以外に関しては後述します。
超急戦型
先手が5手目▲2五歩とすれば、大乱戦は避けられません。

▲2五歩以下は、△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三桂までは一本道です。

ここで、先手の応手は以下の4通りに分岐します。
1:▲1五角 2:▲2一飛成 3:▲2三飛成 4:▲2八飛
以下は、1:▲1五角から順に変化を記していきます。 ちなみに、私の将棋倶楽部24における実戦での遭遇率は 1:5% 2:25% 3:55% 4:15% といったところです。
なお、相手が五段〜六段と高段者になるほど、3:▲2三飛成や4:▲2八飛を選ぶ傾向が高くなるようです。
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1:▲1五角以下の変化

▲1五角は無理気味な手ではありますが、応手を誤ると後手が不利になります。
しかし、正しい応じ方をすれば後手が良くなりますので、以下は正しい応手を記していきます。
▲1五角には△4四角と打ちます。 これは、8八の銀に当てながら3三の桂にヒモをつけることによって、先手を取る意図です。

△4四角には▲7七銀・▲7七桂・▲7八金・▲2八飛などの応手が考えられますが、▲7七銀・▲7七桂・▲7八金に対しては、いずれも△1四歩として角をいじめます。
先手は、打ったばかりの角が目標になってしまっており、辛い展開であると言えます。(以下の図面では、▲7七銀の変化を表示しております。)

△1四歩に対しては、いきなり▲3三角成とする手もありますが、以下△同角として▲2一飛成には△2二飛、▲2三飛成には△3二銀として後手十分です。
先手は角桂交換の駒損であり、それに代わる代償(後手の歩切れなど)もないため、苦しいと言えます。
よって、△1四歩には▲2四角とします。 これに対しては△2二飛として、次に△6二玉〜△2五桂を見せて先手を焦らせます。

なお、7七に先手の銀か桂がいる場合は、△2二飛のところで△2三歩▲3三角成△同角▲2三飛成△4四角打とする指し方も有力です。
△4四角打以下は、角を攻める手に対しては角切り、角切りを受ける手に対しては△2二飛とぶつけることになります。
これで後手よしですが、△2二飛以下の変化で、▲2四歩と龍にヒモをつけられた場合について少し解説します。
後に大駒でこの▲2四歩を払う展開になった場合、▲3六桂と両取りを掛けられるのが少し気になりますが、▲2四歩には△3二金として後手が十分良いと思います。
戻って、次は△2二飛以下の変化を記したいと思います。 △2二飛に対しては、▲2八飛と飛車当たりを避けるのがほぼ必然の一手です。
これに対しては、△2六歩として角をいじめます。

△2六歩に▲同飛や▲4六角は、以下それぞれ△同角▲3三角成△6二玉、△2七歩成▲8八飛△1八とで後手良しです。

そこで、△2六歩には▲2五歩として角にヒモをつけて抵抗します。 △同桂とはできないので、歩を取るために△6二玉と上がって角筋を避けます。

先手は歩損が確定している上に歩切れであり、大駒の働きも大差であるため、文句なしに後手良しです。。
一応補足しておくと、△6二玉に対して▲4六歩には△2五桂▲4五歩と進め、ここで角を切って△2四飛として問題ありません。
戻って、12手目の△4四角には▲2八飛と引くのが最善です。
これに対しては、△1四歩として角をいじめます。 ここまでの各変化でも見てきたように、先手は打った角が負担になってしまっています。

▲2六角なら△3五歩として、△2五歩の角殺しを見せます。

これに対して▲1六歩なら△4五桂、▲3六歩なら△2二飛としてそれぞれ後手良しです。

いずれの変化も、後手の角が先手の左銀に直射していることが非常に大きいことがわかります。
なお、後者の手順では、これに加えて△2六飛▲同歩△1五角の王手飛車の筋もあります。
▲2六角は悪くなることがわかったので、△1四歩に▲2四角とする変化を見てみます。
これに対しては△2二飛と回ります。

この変化でも、後手の角が先手の左銀に直射しているのが大きく、次に△2四飛や△2七歩などの筋があります。
そこで、先手はこれらの筋を同時に防ぐために▲7七銀と上がりますが、△2六歩と打って上記で述べた変化に合流します。

勿論、後手良しとなります。
以上のように、1:▲1五角に対しては後手が優勢となることがわかりました。
それでは、次は2:▲2一飛成以下の変化を記していきたいと思います。
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2:▲2一飛成以下の変化
▲2一飛成は龍を作る自然な手ではありますが、選べる変化の幅が狭まるので▲2三飛成よりも少し劣ります。

しかし、後手は先手以上に不安定な陣形で戦っているため、一歩間違えると即敗勢になる怖さがあります。
よって、変化を熟知しておく必要があります。
▲2一飛成には△2二飛とぶつけます。

これに対して▲1一龍と香を拾いつつ交換を避けるのは、△2九飛成とされて先手劣勢となります。

△2九飛成には▲1八角が先手の狙っていた手ではありますが、△1九龍として、▲6三角成に△5五角とします。

以下、変化はあるものの、後手が良くなります。
この変化は横歩取りのような激しい将棋に似た展開になるので、慣れが必要ではないかと思います。
なお、▲1八角に△同龍▲同香△5五角という指し方もあります。

これに対しては、先手は銀取りを無視して▲2一飛と打つのが有力です。

以下△3二銀には▲2八飛成△4五桂あるいは▲4一飛成△同銀に▲3二金や▲5六香などという展開になります。
これは少し紛れが生じるので、△3二銀のところであっさり△8八角成として、金銀2枚を取らせる指し方が有力です。

以下は▲3一飛成△同金▲同龍△6二玉▲6六香という展開が予想されますが、△5二銀と受けておいて、△7八角などを含みにして後手良しかと思います。

この変化も、前述の変化と同様に激しい戦いになるので、終盤力に自信がないと厳しいです。
どちらかと言えば横歩取りの感覚に近いので、振り飛車党の方が苦手とする局面かもしれません。(私もその一人ですが…。)
なお、△2九飛成に▲6五角と打つ手も考えられますが、これに対しては△5五角や△4五桂として、以下変化は多いものの後手優勢です。

変化を全て書くとかなりスペースを消費してしまうのでここでは省きましたが、もし詳しい変化を知りたいという方がいらっしゃいましたら、気軽にメールを送って頂ければ幸いです。
少々話が横道に逸れましたが、△2二飛に▲1一龍は先手悪いとわかりました。
よって、△2二飛には▲同龍として、以下△同銀と進みます。

ここで先手には▲6五角・▲2八飛・▲2三歩のようにすぐに攻める手と、▲7七銀・▲3八金と陣形を整える手の両方が考えられます。
結論から述べてしまうと、すぐに攻める手はなかなか先手が良くならず、よって陣形を整えて待機する手が有力であるようです。
まず、▲6五角についてですが、これに対しては△2五飛と打ちます。

以下▲4三角成△2九飛成までは必然です。

ここでは後手は桂得であるため、相手に決定的な手段を与えずに駒得を主張する展開に持ち込めれば自ずと有利な局面へと持って行くことができます。
ここからは変化があまりにも多すぎるために省きますが、1つだけ確かなのは、後手が指しやすい形勢であり、即ち▲6五角はまずい手であるということです。
それでは、▲2八飛〜▲6五角はどうでしょうか?
▲2八飛には△2三歩と△3二金の2つの応手が考えられます。

前者は比較的穏やかな手順で、以下▲6五角△7四角となり、後手十分です。
以下▲同角なら△同歩で、手得の上に先手が飛車を手放しているので後手有利となります。
怖いのは▲4三角成ですが、これには△4七角成として攻め合えば、先手が飛車を手放している分だけ後手が少しいいでしょう。
なお、△3二金は突っ張った指し方で、変化によっては相当危険を伴います。
予想としては、以下▲2一角△4二玉▲3二角成△同玉▲4二金△2一玉▲2三歩△3一銀▲同金△同玉▲2二歩成△4二玉▲2三飛成△4五桂という展開が一例です。

これはギリギリの変化ですが、僅かに後手が一手勝ちしているような気がします。
ただ、私は実戦なら前者(△2三歩)を選びます。
というのは、△3二金だと、決戦になった場合に非常に正確な指し手を要求されるので、それを避けて△2三歩でゆっくり有利を築いて行くのが私の好みだからです。
どちらにせよ、▲2八飛に対しては後手が良くなることがわかりました。
では、次に▲2三歩について考えてみます。

これに対しては△3一銀もありますが、△同銀と取ってしまう方が明解かつ紛れが少ないので有力です。

△同銀以下は、▲2二角・▲2一飛の2つの手が考えられます。

まず、▲2二角に対しては△4四角と打ちます。

これに対して▲7七銀など銀取りを防ぐ手には、△2一飛と打って角を殺します。

以下▲3三角成には△同角、▲1一角成△同飛▲4六香△3五角▲4三香成には△3二銀▲同成香△同銀でそれぞれ優勢となります。

このように、銀取りを防ぐ手には駒得で後手有利になります。
そこで、▲7七銀のところで、銀取りを無視して▲1一角成△8八角成▲2八飛△9九馬▲2三飛成と駒を取り合う手も考えられます。

これに対しては、△3二銀としっかり受け、▲1二龍に△8九馬として桂得を図ります。

以下は、▲2四香△6七馬や▲2三銀△3一香▲3二銀成△同香などの展開が予想されます。

変化はこれだけではありませんが、△8九馬として駒得をした局面は後手有利だと思います。
以上から、▲2三歩△同銀に▲2二角と打つ手は先手が悪くなることがわかりました。
戻って、▲2三歩△同銀に▲2一飛と飛車を打ち下ろす手に対しては△3二銀と引きます。

これに対して▲2八飛成には、歩切れを衝く△2三飛という手があります。

先手は▲同龍と取るしかありませんが、△同銀で先ほどの局面に戻ります。
この手順の繰り返しで千日手にすることもできますが、、先手番で千日手というのは不本意でしょう。
次に、△2二同銀に▲2八飛△2三歩▲6五角とする手も考えられます。

これに対しては、△6四飛と打つ手もありますが、△7四角と打つ手の方が方が明快です。

△7四角に▲同角だと飛車を手放しただけの結果に終わってしまい、意味がないので勢い▲4三角成とすることになります。
これに対しては後手も△4七角成として乱戦となります。

この局面ですが、先手が飛車を手放している分だけ後手が僅かに良いと思います。
よって、戻って△3二銀に対しては▲1一飛成とします。

これに対しても、歩切れを衝いて△2三飛と打ちます。

△2三飛と打たれてみると、先手には桂取りを防ぐ適当な手段がなかなかありません。
▲2八香や▲3八銀に対しては、それぞれ△2七歩、△2七歩▲1二角△2四飛で後手良しとなります。
先手は龍があまり働かない上に、△4五桂〜△5五角の筋の標的にもなってしまっており、つらいところです。

よって、先手は△2三飛に対しては▲1八角とするのが最善です。
これに対しては、△4五角と打ち返します。
これでほぼ互角ながら、僅かに後手良しの分かれとなります。
ここまで飛車交換の直後に先手がすぐ動く展開を見てきましたが、なかなかよくなりませんでした。
そこで、先手としては、飛車交換の直後にまず▲3八金として大駒の打ち込みの隙を消すのが有力となります。

先手にこの方針で指されると、後手もすぐに仕掛ける手はありません。
よって、△3二金や△6二玉と駒組みに移る手が考えられます。

△3二金の場合、先手は▲9六歩と突く手があります。

△9四歩なら、常に端攻めを見せることで後手に駒組みに神経を使わせることができます。
例えば、▲9五歩△同歩▲同香△同香に飛車を打ち込んだり、▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9一飛としたりする筋があります。
実際には、色々と受ける手があり、必ず成功するとは言えないのですが、記憶しておいて損のない攻め筋です。
なお、▲7七銀▲7八玉型の場合にこの攻め筋を敢行すると、▲9五同香の時に△9八飛と打たれますのでご注意を。
戻って、▲3八金には△6二玉から一直線に玉を8二まで囲うのが有力かと思います。
▲2三歩には△3一銀で、△4五桂や△2五飛などの変化を組み合わせて応戦します。
無事に△8二玉〜△3二金あるいは△3二金〜△8二玉まで組むことができた場合は、囲いは美濃囲いか△6二銀△5一金型が考えられます。
個人的には、▲3八金の変化では少し先手を持ちたい印象を持っておりますが、これからの将棋だと思います。
最後の方の変化では、手が広すぎるために少々曖昧な説明をしてしまった部分がありましたが、以上で2:▲2一飛成以下の変化の解説を終わります。
それでは、次は3:▲2三飛成以下の変化を記していきたいと思います。
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3:▲2三飛成以下の変化
▲2三飛成は、▲2一飛成と比較すると、変化が多いために選択肢の幅が広い、という意味で優秀です。

▲2三飛成に対しては、これまでと同じように△2二飛とぶつけます。

ここでは▲3三龍、▲2二同龍、▲2四歩の3つの選択肢があり、これが上記で述べた選択肢の幅の広さです。

▲2二同龍は、2:▲2一飛成以下の変化で述べた変化と合流するため、割愛させて頂きます。
そこで、まずは▲3三龍について述べていこうと思います。
▲3三龍に対しては、△2九飛成として後手有利になります。

続いて▲4三龍には、▲5三龍〜▲4三桂の筋を防いで△4二銀と上がり、その後に△1九龍くらいで後手十分です。
また、▲1八角に対しては、△同龍▲同香△5五角▲4三龍△4二銀で後手有利となります。

戻って、△2九飛成に対して一番手強いのが、▲2三角と打つ手です。

この手は、例えば△1九龍なら、▲4一角成△同玉▲2三桂という手順を狙っており、放置すると危険です。
なお、▲2三角に対して△5五角は、▲4一角成△同玉▲4三龍△4二歩▲3三桂となって不利になります。

右の図(▲3三桂の局面)について、少し補足します。
△5一玉は▲5三龍から▲5五龍と角を取られるので、△同角しかありません。 以下、▲同龍△5五角▲4四角△同角▲同龍で後手不利となります。

戻って、▲2三角にはどうすればよいのかというと、△2二角が最善です。

△2二角に▲4三龍は△4二金▲3四龍△3三歩、▲4一角成は△同玉▲4三龍△4二歩、▲同龍は△同銀でそれぞれ後手有利になります。

これで、△2二飛とぶつけた局面で▲3三龍とされる手にはこちらがよくなることがわかりました。
それでは、△2二飛に▲2四歩とされる手について見ていくことにします。

▲2四歩に対しては、△2三飛▲同歩成△4五桂とすれば後手が有利になる変化が多いようです。
しかし、私自身が振り飛車党ということもあって、横歩取りの感覚に近いこの変化が得意ではないために割愛させて頂きます。
ただ、この変化は非常に有力なので、研究し次第記載する予定です。

それでは、戻って▲2四歩にどうするのかというと、△3二金とします。

△3二金に対しては、▲3二龍、▲2二龍、▲3四龍の3つの選択肢があります。

▲3二龍に対しては、△同銀▲3一角△2四飛▲5三角成△5二飛▲同馬△同玉で後手有利となります。

先手は飛車を取り返したものの打ち場所がなく、駒損になった分だけ不利です。
次に▲2二龍についてですが、これに対しては△同銀と取ります。
この局面では後手から色々と手段があるため、先手は攻め続けないと不利になります。
よって、▲2三角と打ち込みます。

△同銀や△同金と取るのは、清算した後に▲2一飛と打たれて後手不利となるので、△3一金とかわします。
以下、▲3四角成△4五角で下図のようになります。

ここでは、▲4三馬と▲同馬の2つの手段があります。

▲4三馬に対しては、△5二金として馬を追い払った後に△6七角成としてほぼ互角です。
問題は▲4五同馬で、以下△同桂の局面で何かいい手がなければ後手良しとなるのですが…。
ここで、私の将棋倶楽部24の実戦譜をご覧頂ければと思います。
この対局相手の方は、流石R2700点台前半といった感じで、30秒将棋でもほぼ完璧な対応をされました。
事前の研究で、「こうやられたらまずいだろう」と思っていた手順を(おそらく)初見で見事に指されました。
実戦は、以下相手の方にミスが出て逆転勝ちできましたが、46手目の時点では明らかに劣勢です。
この変化があるため、先ほど△3二金と上がるところで△2三飛〜△4五桂をお勧めしたというわけです。
先ほども書きましたが、私自身はそもそもゴキゲン中飛車や角交換振り飛車主体の振り飛車党です。
このため、この変化を今まで放置していましたが、研究が済み次第アップロードしようと思います。
戻って▲2三歩成〜▲3五飛以外ならそこまで悪くならないようです。
但しこの傷がある以上は、持ち時間の長い将棋では使いにくいと思います。
そもそも、この戦法自体が持ち時間の長い将棋では不向きなのですが…。
なお、先ほどの手順は、R2700点を超える強豪の方だからこそ指せた手順で、
誰にでも指せる手順ではないと思われることを申し添えておきます。
それにしても、私の対応は酷いものですね…自陣飛車まで打たされていますし(汗)
さて、△3二金の局面に戻って、これに対して▲3四龍の場合について解説します。
これに対しては、△4五角と打ちます。

これに対して▲4五同龍は、以下△同桂で△5七桂不成が残ります。
この金の両取りを防ぐ手に対して△4二銀または△6二玉として、次に△2四飛と走る手を見て後手十分です。

ということで、△4五角には▲3五龍ということになりますが、△6七角成として互角です。

このように、先ほどの実戦譜で取り上げた対策さえされなければ、角頭歩側も十分指せる展開になります。
以上で、▲2三飛成の変化の解説を終わります。
それでは、次は4:▲2八飛以下の変化を記していきたいと思います。
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4:▲2八飛以下の変化
▲2八飛は自陣に飛車を引き戻す落ち着いた手です。
先手の陣形が安定しているため、かなりの強敵となります。

▲2八飛に対しては、これまでと同じように△2二飛とぶつけます。
他には△2五歩などもあるのですが、後で桂で狙われる手があるので、少し気が引けるところです。
戻って△2二飛に▲同飛成は、先ほどまでで述べた変化に合流するので、省略します。
ここでは、先手の指し手は▲2三歩か▲2四歩の二択ということになります。

まずは、▲2三歩について考えてみます。
▲6五角があるので、△4二飛か△8二飛ということになるのですが、△8二飛だと玉の囲いに苦労します。
よって、△4二飛とかわします。

実はこの局面は△3三角戦法で類型がありまして、初手から示すと以下のようになります。
▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角▲同角成△同桂▲9六歩△9四歩▲2五歩△4二飛▲2四歩△同歩▲同飛△2二飛▲2三歩△4二飛
この局面に比べて、▲8八銀が入っている点と、先手の飛車が2八にいて安定している点がマイナスポイントになってしまっています。
ですが、そもそも△2四歩と突いた時点である程度の覚悟はしていますし、
角交換振り飛車は手損をあまり苦にしない戦法なので妥協するしかないと思います。
戻って、△4二飛とかわした局面で▲6八玉などなら、△3二金と傷を消しておいて十分です。

以下は△2二歩▲同歩成△同銀として手得を主張する指し方や、△2五歩などから歩のただ取りを目指す指し方などがあります。
自然に指せば、互角以上の分かれだと思います。
こうなっては先手も面白くないので、△4二飛に▲2二角と打ち込んでくることが予想されます。
これは最強の応手で、一歩間違えると敗勢に陥る危険性を孕んでいます。

これに対しては、△同銀▲同歩成△4四角とする指し方もありますが、少し欲張った指し方を検討してみます。
すなわち、▲2二角に対して△2七歩と打ち、▲同飛に△4五角と飛車取りに角を打つ指し方です。

これに対しては飛車を逃げる一手ですが、例えば▲2八飛には△2二銀▲同歩成△6七角成として微差で後手よしかと思います。
と金は作られていますが、駒得で馬も作っており、更にどこかで△4五桂の捌きがあるから、というのが理由です。

ということで、△2二飛に▲2三歩は先手不満な展開になることがわかりました。
それでは、△2二飛に▲2四歩の変化を見て行きます。
これに対しては、次に▲2三歩成があるので、何か守る必要があります。
△3二金か△3二銀ということになりますが、私ならバランスを重視して△3二銀と上がります。

放置すると△2五歩〜△2四飛があるので、先手は何か手を作る必要があります。
候補手としては、▲5六角と▲2三角の2つがあります。

まずは▲5六角ですが、これに対しては△2六歩と打ちます。

▲8三角成なら△2四飛と走って後手良くなります。
△2四飛に対しては▲3八銀とするくらいですが、△5四角と打って2筋突破と駒得が約束されるので後手優勢です。
ということで、戻って△3二銀に対しては▲2三角と打ち込むことになります。
これに対しては、先ほどと同じように△2七歩▲同飛△4五角とし、以下▲2八飛△6七角成とします。

以下は▲3二角成△同金▲2三銀という展開が予想されますが、△4五桂と捌いてどうなるか、といった局面です。
何度も申し上げますが、私自身は振り飛車党なので、このような激しい展開に慣れておりません。
よって、どちらが良いのかについての形勢判断に自信がありません。(個人的には後手持ちですが…。)
以上で、▲2八飛の変化の解説を終わります。
次の項からは、すぐに▲2五歩と突かない指し方を記載していきます。
超急戦回避型

この項では、先手が上図から▲2五歩と仕掛けずに駒組みを進める指し方を記載していきます。
既に定跡を外れており、指し方も膨大であるために全てを網羅することはできませんが、
比較的目にすることが多い形を中心に述べていきます。
以下作成中…乞うご期待!
