格安タクシー:運輸局が是正勧告 業者側は反発
毎日新聞 2014年04月22日 16時30分
国土交通省近畿運輸局は22日、今月から値上げされたタクシー運賃の公定幅に従わず、格安営業を続ける事業者に是正勧告を始めた。大阪など管内4府県で法人7社と個人16人が格安営業を続けており、勧告に従わなければ是正命令を出し、タクシーの使用停止や事業許可を取り消す。これに対し、初乗り500円で営業する「ワンコインドーム」(大阪市西区)は「営業の自由の侵害だ」として、提訴を視野に法的措置をとる方針を固めた。
運輸局によると、格安事業者は、大阪4社、2人▽京都1社、14人▽神戸1社▽滋賀1社。23日までに勧告を終える。
タクシー運賃を巡っては、今年1月に「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が施行され、消費増税の対応や運転手の待遇改善を目的に、4月以降は公定幅内(大阪の初乗りは660〜680円)に規制された。運輸局は格安業者に対し、運賃を公定幅に収めるよう繰り返し指導したが、従わなかったという。業者が15日以内に運賃を変更しなければ是正を命令する。タクシーの使用停止や事業許可の取り消しの処分に至れば、営業は困難になる。
これに対し「ワンコインドーム」の吉岡和仁社長(58)は「憲法の保障する営業の自由や公共の福祉に違反し、値上げは利用者の理解を得られない。ワンコインタクシーの灯を消したくない」と主張し、格安営業が続けられるよう仮処分申請などで対抗する。「訴訟で司法の判断を仰ぐことも考えている」と話す。
同様に初乗り500円で営業する「壽(ことぶき)タクシー」(東大阪市)の浦木山峰壽(うらきやまみねとし)社長(64)も「日本は自由主義経済なのに、行政による統制価格の強要がまかり通っていいのか」と疑問を呈し、訴訟を検討する。MKグループは、近畿圏で従来の格安運賃に消費増税分だけ転嫁し、大阪では初乗り運賃を580円から600円に引き上げた。広報担当者は「企業努力を無視する統制価格だ」と批判している。
タクシー業界は小泉政権下で規制緩和が始まり、新規参入や料金が自由化されて、大阪ではワンコインタクシーが増えた。しかし、過当競争で運転手の労働環境が悪化したとして、近年は待遇改善のため逆に規制が強化されている。【木村健二】