「京アニ」は何故落ちぶれてしまったのか。全盛期から凋落までを振り返る。

元請やり始めた後の京アニの絶頂と凋落について過去の作品を振り返ってみる。

 

MUNTO [DVD]

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MUNTO
「様を付けろ!」「やなこった!」な木上益治監督のオリジナル。
むしろ京アニが「オリジナルダメだろ」と言われる元凶。
山本寛さんが褒めちぎってたけど、まぁそういう事です。

Wikipediaによると
京都アニメーションのスタッフ自らがオリジナル企画を立ち上げ、製作・販売までのすべてを自社で行う「京アニプロジェクト」の第1弾として製作された。
とのこと。

MUNTOシリーズ - Wikipedia

メンヘラが2人で川を手を繋いで歩いているのを、周囲の「優しいモブ」が止めるでもなく黙って見守ってる所が良くも悪くも「京アニ節」だと思う所存。
電波厨二アニメとして割り切ると悪くない……かどうかはわからない。

1作目が後述の「ふもっふ」の03年リリース。
2作目が「AIR」「フルメタTSR」の05年リリース。
で、黒歴史化されかかった所で09年ハルヒ2期とけいおん1期の頃にひっそりと角川声優に固められてTV化・劇場化したけど第爆死。
けいおんがなかったら即死だった。

ややアンチ気味な目線で語ると、信者からすら半ば黒歴史化されてるせいかネタアニメとして見るなら何気に面白い。
リメイク版だと主人公のユメミが「日常」のちゃんみおの相沢舞氏に代わってたけど、最後の予告の「やなこった」は結構可愛かった記憶がある。

ただ絶頂期と言い切っていい09年ですら空気・黒歴史のような扱いだった事からも上級者向けっぷりが見て取れる。
そして恐ろしい事に「中二病でも恋がしたい」「境界の彼方」あたりのテーマは多分MUNTO様と根っこは変わってないだろうという事実。


フルメタルパニックふもっふ、The Second Raid

 

 

富士見書房から出てるロボット学園ラノベ
元々はGONZOさんからそこそこの出来でアニメ化されてたが、「ふもっふ」は原作の短編における学園パート中心のギャグもので評価された。

正直、「○○より京アニの方が素晴らしい」的な踏み台思想はフルメタの頃から見受けられる(フルメタだとGONZOが踏み台)のだが、暴力ヒロインを割り切れるなら今見ても楽しめる一作。

TSR」は逆にシリアス系の流れで原作者の賀東招二先生が関わりつつも、むしろ主人公の宗介の迷走っぷりが続くので人を選ぶ。ただ最終話で吹っ切れた後の「ただの掃除係」として無双っぷりは下手すると京アニ作品における最高の最終話ではないかと。

賀東先生がスパロボオタクな事も有名なのだけども、最近でた「第三次スパロボZ 時獄篇」ではシリーズ最終作(の前編)なのに学園パートに他作品を巻き込んだり、「W」でやりきったTSRまでの範囲で終わっちゃってて賛否両論だったとかなんとか。

アニメ化での使い捨てが激しい角川が3作もアニメやる事が珍しいとも言えるけども、それなりの売上で終わってしまったせいか天城ブリリアントパークのアニメ化にしろ「何を今更」感がある。

ただ賀東先生は「氷菓」でもシリーズ構成やってたし、それこそ氏の最新作・天城ブリリアントパークも京アニでアニメ化だそうで、まだこれでも「切り捨て」の度合いがマシというから恐ろしい。
それでも定期的に新作続けてたらここまで今更扱いされてなかった気もするんだけどね。


AIR 

AIR Blu-Ray Disc Box (Newパッケージ)

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東浩紀せんてーが大好きなゲームの一つ。京アニkey三部作。
なんか京アニ狂信者の人はなんかkeyの作風を敵視してる人がちらほら見受けられるけど、京アニほどkeyの「頭の弱い(オブラートな表現)女の子」の影響を引きずったアニメスタジオはないと思ってる。

フルメタふもっふが平均約8900、フルメタTSRが約4800で、AIRが約24000という点で契機の一つであったのは間違いない。

作風としては1クールで詰め込み過ぎており、過去編のSUMMER編が少し犠牲になってはいるものの「エロゲの1クール圧縮アニメ」としては割と理想的な一作。
05年頃は原作レイプ作画崩壊が当たり前だったせいか、この一作から09年ごろまで「原作準拠の京アニ」と謳われる。

ただこれも「出崎統監督によるアレンジ効きまくった劇場版」が同時期にあり、それに比べれば「原作準拠」といった所か。
どうでもいいけど劇場版AIRも、往人の空気化を防ぐ意味合いではアレはアレで嫌いではない。
この時期が「踏み台」がどっかかしらあるのが引っかかるんですよねぇ。

 

内容は「エロゲの1クールアニメ化」としてはかなり良く出来てるから割合したい所だが、最終話で観鈴ちんを失った後の晴子さんが過剰演出のせいで「娘を失っても強く生きて行く女」ではなく「娘を失って頭おかしくなった女」に見えたのは割と突っ込み所。
最終話でなんかやらかし続けるんだなぁ。


Kanon

KANON BLU-RAY DISC BOX (初回限定生産)

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当時からして今更感もあったけど、AIRが売れたんだからこっちもだーってのがこれ。
やや地味だが18000くらい売れたそうで。
ただこれも以前に東映アニメーションからアニメ化されており、「アゴ」扱いされる辺り、やはり踏み台があった一作。

作画はともかくストーリー的にはそこそこ纏めてた東映版に対して、京アニ版は「全てのルートをまとめる」という事をより強めており、メインヒロインのあゆを他ヒロインに絡ませるなど積極的に「Kanon問題」を意識してる節があるがこれも今では賛否両論。

ただ男友達キャラの「北川」を、CLANNADの「春原」のようなギャグキャラとして強める所などは突っ込みが多い。
後述するが「男友達キャラの春原化」は、京アニの呪いの一つだと思う。
最近だと「中二病」の一色なんかまさに「春原のように扱えばいい」を引きずり過ぎたキャラかと。


・「涼宮ハルヒの憂鬱」一期

 お化けにして伝説。
なんか売りスレが某所で出来たのはハルヒ信者とコードギアス信者の殴りあいが酷かったからと言われてるけど、まぁ伝説の一作。

これもアニメ化自体はAIRCLANNADと同じく数年後の一作で今振り返ると遅いくらいだけども、それでもニコニコ黎明期で「らきすた」と一緒に持ち上げられてたり、とにかく全盛期の一作。
ハルヒ1期~けいおんまでが京アニ絶頂期であると言い切っても多分いいだろう。

原作はスニーカー大賞を受賞しており角川のライトノベルとしてもゼロ年代セカイ系の代表作の一つ。
当時からエヴァと引き合いにされてたけど、コンテンツ的に新劇場版やるまで死んでたエヴァの後釜として角川が据えたかったんじゃないかというのは当時から思ってたこと。

作品としては1巻の「憂鬱」で主人公キョンの心理は概ね完成しているため、アニメでは時系列シャッフルを使う事で憂鬱をラストに持って来た構成は英断だと思う。
ただこれが壊れたのは谷川流氏が「新たなライバル(他者)」である佐々木団の扱い方に困ってた事と、2期の「8話のアレ」かと。


らき☆すた

ハルヒの後釜にして当時推してた平野綾をヒロイン代替えに据えてネタにしたりと、まぁ良い意味でちょい一昔前のオタ臭ではしゃぎまわってる4コマアニメ。
ただ「4コマというジャンル」そのものを踏み台にする傾向はこの辺から見受けられている(けいおん思い出しながら)

原作がキャラ増やしつつも「オタク時事ネタ版サザエさん」的な立ち位置を確立していったりするけど、それについていかない辺りはこの時点から。
聖地巡礼とかごり押しされた草分けだという認識。

これに限らず、内輪で閉じる性質のせいか「原作で勝手に出た新しい仲間」に対してどうやって馴染ませるのかという事から逃げ続けてるスタジオという印象。中二病の七宮もあんま成功しなかったけど、そういう作品を続けてこなかったツケも大きいと思っている。

そのせいか原作が別物化しちゃってコンテンツの終焉っぷりも加速する傾向があるのがあのスタジオの気に入らないポイントの一つ。
別物化はいいんだけども、結局、長く作品に付き合うという事がないので原作だけで孤立化するとにっちもさっちもいかなくなるといいますか。

それでも角川系でちまちま連載されてて、よく頑張ってる一作なんですけどね。原作は。

あと勝手にカップリングでっちあげる癖もけいおんに受け継がれちゃってる感じ。こなかが的な意味で。


あとスピンオフを山本監督がやったけど空気で終わった。

 
CLANNAD

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2クール+分割2期で合計4クールの長編。
07年~09年のあたりは振り返ってみても大人しいといいますか、「アニメ化するなら原作を大事にする京アニがいい」という意見が一番多かった時期なんじゃないかなぁ。

この間、ハルヒ2期まだーとか驚愕まだーとか言われてたけども06年~07年に比べると落ち着いてたようなそうでないような。

ただCLANNADの話をすると、この作品とけいおんは呪いのように染みついちゃってる印象がある。
ぶっちゃけ、だーまえかきふらいをコケにしつつも彼らのオッサン臭い理想から未だに脱却できないという皮肉。

だーまえは「AngelBeats」のグダグダさや「結婚は女の幸せ」発言での暴走や自称評論家の信者あたりで色々あったけど、CLANNADの時期から「key」と「ハルヒらきすた」は別ジャンル扱いされてたような気がしないでもない。

ただkeyもまた踏み台にされた印象しかない。
CLANNAD以降は断絶しちゃったわけだけども、リトバスビジュアルアーツ京アニも「向こうが何も言わなかった」と主張してるそうで。

ただ確実に思うのは、
「可哀想な女の子」と「それを助ける俺」と「見守るヒロイン」と「割りを食う春原ポジション」というkey的構図が、ほんとに京アニは無関係なのか?という事。
誰よりも影響受けてる癖に、信者にはそれを認めない人が結構多いんだけどね。

京アニの硬直化の一つは、請ける作品の幅がどんどん狭まってきちゃって学ぶ作品が減ってきてしまってる事だと思う。
特に「CLANNAD」と後の「けいおん」は作者を踏み台にしてる癖に作風は大分引きずってるとしか思えないんですがそれは……という事がこの記事で主張したかった事の一つ。


空を見上げる少女の瞳に映る世界

空を見上げる少女の瞳に映る世界 OP曲 アネモイ

空を見上げる少女の瞳に映る世界 OP曲 アネモイ

 

MUNTO様だ!09年に突如としてリメイクされ厨二バトルものとして進化を遂げたMUNTO様だ!
最終話の展開を一言にすると、「ちゃんみおとアナゴさん(若本)。最後の戦い」としか言いようがなかった。いやほんと。


ハルヒ2期
エンドレスエイトとかいうループもの。
同じ内容の話を作画だけ変えて8話連続でやって最後に宿題して逃れられるというまさに時獄篇。
人気ヒロインの「長門」が精神的にぶっ壊れる過程という、別に原作にないオリ展開を入れ、意識の高い人に持ち上げられるのだった。

こんな時獄篇やらんでも2話で十分だったんじゃないかと言われてるし、残りの6話も後に劇場公開した「消失」をぶっこめば良かったんじゃないかとは今でも思う。
消失を映画にするためにエンドレスエイトで埋めたんじゃないかと。あくまで被害的妄想だけどね。

後の消失はそれなりに売れたし評価もされたけど、エンドレスエイトの時獄篇っぷりはハルヒというコンテンツにトドメを刺したとも言われてる。

原作も悪いけど、佐々木団もっとプッシュしておくべきだったよなぁ。
フルメタハルヒらきすたけいおんもだけど、「アニメが終わった後の新しい仲間・ライバル」に対して全く手が届かない感がかなり強い。
レーバテイン……佐々木団……いずみちゃん……そしてわかばガールズと恩那組……。

あとエンドレスエイトに関しては、消失がTV2期放映後に正式発表されたせいでリアルタイム当時は「これ消失やるのか?」と不安がられてた事も追記しておく。
1クールでの尺がどんどん同じ話による時獄で潰れて行くわけですから。
大惨事エンドレスエイト時獄篇ですよ。

 

ハルヒちゃんはまぁまぁ面白かった。

 
・となりの801ちゃん
なんかアニメ化されるはずが中止になって、山本さんがあてつけになんかやって終わった。
これがけいおんの代わりにやってたら今どうなったんだろうか


けいおん!

けいおん!  college (まんがタイムKRコミックス)

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けいおん!  highschool (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! highschool (まんがタイムKRコミックス)

 


この作品について語るとなると気がめいるけど、厨二ラノベっぽく一言にするなら「最弱の原作」にして「最良の踏み台」としか言いようがない。

こんなまとめを以前にやってたんだけど、「やらおん」の前身たる「今日もやられやく」でプッシュしまくってた初の作品だった記憶がある。
ストパンにも触れてたけど、本格的にマーケティング臭い事やってたのがこれ。 
 

今日もやられやくの思い出(初期けいおん編) - Togetterまとめ

 

作品的にはアニメ化以前はkey作品・ハルヒらきすたフルメタ辺りに比べても圧倒的にマイナーだったし、未だに原作は読んでないって人が多い作品なので「踏み台」としてかなり使われてた印象。

色々言いたい事があるけど、原作踏み台っぷりから「原作準拠の京アニ!」から「つまらない原作を面白く出来る京アニ!」になってた時期もこのあたり。まぁこれハルヒらきすた辺りから元々言われてたけど、けいおんでもっと酷くなった印象。

澪のパンツモロだしをやる良くも悪くもスケベおやじっぽさを減らすのはまぁ一概に否定出来るものでもないけど、その優越感がまーたおかしな方向にこじれてしまったという気はしなくもない。
これで調子こいてオリジナルでもやれるとでも思ったのか知らんけども、良くも悪くも最後の絶頂期の一作といった所。
後、前々からあった「アニメ終了後の原作で登場したキャラ」に対する無関心さはこれにも通じている。

芳文社と上手く折り合い付けていればあの時の熱気を保って行けたかもしれないけど、結局そこで断絶しちゃったのが後に繋がってる.


・日常

 角川的にはらきすたの後を追えとでも思ってたのかもしれんけどそこそこで終わった。
原作では最初からクラスメイトのゆっこ・ちゃんみお・麻衣の三バカトリオと、なの・はかせ・阪本さんの東雲家を、2クール目まで断絶させるという謎アレンジ。
この頃からいかに「原作超え」してやるか。あるいは泣かせてやるか(だーまえリスペクト)ばっかが鼻につきだしてきた。
個人的な感想としてはNHKの再編集版なら割といけるとは思う。


氷菓

氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]

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角川との手切れ仕事だったのかは知らんけど、まぁえるたそ~とかでそこそこだった。
でも、えるの「アホの子(オブラートに包んだ表現)っぽさ」とか、これも含めてだーまえかきふらいの影響を変に引きずりすぎだろというのが残っててなんとも。

まぁ伊藤Pも声優ごり押しや「おっさんゴーカート」のような酷い特典私物化があったりするのだが。
次に原作モノをやるのが順当なら賀東先生の「天城ブリリアントパーク」になりそうなのもまた……
フルメタをちまちま進めてりゃ良かったのにねぇ。


中二病でも恋がしたい! たまこまーけっと(ラブストーリー) Free! 境界の彼方
Free以外、結局は「今までやったアニメ」の劣化品という。
中二病はkey、たまこはけいおん境界の彼方MUNTO様の模造品というとどうなんだろうか。
その中でFreeだけは新規層を取り込んだけど、「外部性の取り込み方」「最終話での収拾の付け方」などがあんま上手く行ってなく、どうなる事やら。

ひとくくりにしちゃってるけど、要するにだーまえかきふらいを踏み台にしてきた癖に、その理想を半端に参考にしてる。
その上で今までやった事のないタイプの作品に関しては全く影響を受けられてないという閉塞性がにっちもさっちもいかないというか。

結局の所、keyも芳文社ハルヒらきすたも切り捨てちゃって「長くやっていけるコンテンツ」が無くなっちゃったのが大きいよなぁと。
それでいて新しいものをやれてるか?というと、結局、過去作品の模倣しか出来て無いという。

天城ブリリアントパークだって、裏でどうだったかは知らんけど賀東先生との縁がずっと継続的に続いていたわけでもないし。

 

甘城ブリリアントパーク 1 (富士見ファンタジア文庫)

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偉そうな事を言うなら、ほんとに全く違った作風の人間連れて来て本当の意味で原作準拠でやる事で違った作風を取り入れた方がいいんじゃないんだろうか。
飽きられてるからこそ中二病も2期になって売上あんだけ落ちたんだろうし。

まぁ今でも京アニ×かきふらいが対等なwinwinの関係を築けていればまた違ったと本気で思ってますけどね、はい。
かきふらい芳文社を踏み台扱いしちゃった時点で、そこで血を吐き続けるマラソンをするしかない命運が決まったんだと思ってます。

 

最後にたまこラブストーリーのライバルであろうアニメ作品のアマゾンリンクを張って終わります。

 

劇場版「Wake Up, Girls!  七人のアイドル」 初回限定版[Blu-ray+CD]

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