HOME   »   富野由悠季関連  »  女子中・高生の見つけたガンダムの魅力
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年のはじめにこんな呼び掛けをしてみたのだが案の定答えは梨の礫。
ただ、自分の中でなにか手をつけていないものがあったよなぁ、と悶々としていた。
ところが先日クローゼットの中を整理していたら、こんなものを発見。

それは日経トレンディの99年1月臨時増刊号。
この中に「日本のアニメが強い理由」という特集記事が組まれ、
富野がインタビューを受けている。
情報そのものは入手当時にここで書いたのだが、
全文紹介はまだだったので…。

でも、まだそんな資料がこれ以外にも残っている気がするんだよなぁ。

女子中・高生がガンダムの魅力を
発見するとは、予想もしなかった


70年代後半にロボット物アニメが数多く作られる中、
「機動戦士ガンダム」の登場は画期的だった。
そこには悩み傷つくヒーローがあり、さまざまな人間関係があり、成長物語があった。
富野由悠季監督以降、アニメの作家性に期待が集まるようになった。
ガンダム20周年を迎え、今なお支持され続ける理由を、生みの親が語る。



ぜ、ガンダムが20年間生き残ったか、という話になると、どうしても結果論でしか語れなくなりますね。ロボットアニメのTVシリーズを作るという手順の中で生まれてきただけで、「20年、皆で食べられる作品を作ろう」なんて気持ちでやっていたわけではないですから。
 僕にとって「無敵超人ザンボット3」「無敵鋼人ダイターン3」に続いて、3本目のロボットものとなると、ちょっと毛色の変わったものを作りたいという気持ちもありました。
 それまでの作品の多くは、児童向けの巨大ロボット活劇物で、敵が宇宙人であろうが、怪獣であろうが、玩具メーカーが提供する商品が大活躍するフィルムを作っていたからです。しかし、こうした考え方だけで作られた作品には限界があるし、もう作り様がないところまで本数も出ていました。極端な言い方をすると固有名詞を変えるだけで、話なんか変えなくても済んでしまうみたいな感じです。
 そんな状況ですから、もう少し違った作り方があるんじゃないのかなって思って、まずなぜ大きな人型のロボットが必要なのか、と考えてみると、金属の頑丈そうな機械なのだから、兵器として扱うしかない。そういう兵器が、不自然なく動いていられる世界を考えたみた(原文ママ)ところ、ガンダムで提示した宇宙戦争しかなかったということです。
 70年代の後半から80年代っていうのは、ちょうど宇宙産業がもう少し可能性があると言われていた時代です。作品の背景には、そうした時代の空気みたいなものを引き写した部分もあります。そうしてできたのが「ガンダムワールド」だったわけです。
 スポンサーである玩具メーカーからは、初めはかなりの抵抗がありました。それまで知っている巨大ロボット物のコンセプトにはないものでしたから、玩具のPRにはならないんじゃないかと心配されました。このへんについては、一話に必ずガンダムが活躍するシーンを盛り込むという条件も飲んで、制作的ウソをついたというところはあります。
 こうして作品を作っていったら、たまたま中・高生の女の子がついてくれたんです。ロボット物なのに、この年齢層の女の子が熱烈なファンになってくれたのが不思議であると同時に、映画は女性客をつかまなければダメだという鉄則を思い知らされたわけです。
 作り手としては、彼女たちに気に入るように仕掛けていませんでしたから、予想もしていなかったのです。実際、1年間のオンエアの予定が途中打ち切りになっています。それも43本というとても変な打ち切りになったのです。商売という観点だけで見ていけば、やむを得ない理由もあったのですが、その後、中止したというストラクチャーだけが生き残って、女性客の問題を考える土壌を育てるということを関連会社のスタッフが学ばなかったのは残念ではありますね。
 ところが作品が再放送され、映画化もされていくうちに、一過性のブームで終わらずに20年続いてきたのには、物語の構造自体をシンプルに作っていたので、僕以外の人でも簡単にガンダムワールドが作りえたという事情もありましょう。
 初めのファンが女の子だった理由は、彼女たちが一番興味を持っている人間関係が描かれていたからでしょう。ヒーローの男の子もかわいいし、敵方の男の子もかっこいい。その間をつなぐ人間関係が、わかりやすい青春群像として描かれていたのでしょう。彼女たちは、ロボット物というジャンル分けを無視して、自分たちの好きなものを見てくれました。時代に関係ないピュアな部分があったから、その後の長いリアクションが呼んだのだと思います。
 その上で、メカ物としてのプラモ人気などが重なって、作品へのさまざまな人口ができたことが、20年保った理由なのでしょう。

こんな時代だからこそ「明日はある」と伝えたい


 マーケティングという話では、最初のガンダムのファンが中・高生の女の子であったことは重要でした。それまでにないマーケットを形成することになったわけですから。
 さらに20年という長いスパンを考えてみた場合、二次使用、三次使用のマーケットが当初からは想像できないくらい開けてきました。ビデオ、LDができ、そしてDVDへと移行していくとともに、ケーブル放送、衛星放送と、多チャンネル化時代を迎え、系列局でないところでも作品が再放送されていく。こうしたマーケットにうまく乗れていける要素があることも、女子中・高生が教えてくれています。
 とても重要なのは、最初に言ったとおり、これらのすべてが結果論で、ガンダムのような成功は、恣意的に作れるものではないということです。
 ソフトの企画というものは、「今は流行ってないけど数年後には人気が高まるかもしれない」と言ってみてもまず通りません。しかし企画というのは、多数決をとったって、勝てるものにはならないんです。アニメにしろゲームにしろ、ソフト産業に関わっている人は、本能的に将来性を計算できなければいけないものですから、データという過去論の中に企画が埋まっていると考える人々には向いていません。
 クリエイターを取り巻く環境は、20年前も今もあまり変わっていません。まだ慣習の中で搾取されている人もいるし、契約書だけで消えていく人もいます。ソフトを供出しうる固有の才能っていうのは、厳然とあるわけですが、それは同時に、企業なり国家なりが、庇護せざるをえないような不安定な存在でもあるのです。だから、これからの組織は、真の意味でクリエイターが生活できる基盤を保証しなければ、絶対いいものは出てこないでしょう。
 ガンダムが生まれてから20年の間に、オウムのようなイヤな事件がいくつかあり、バブルも崩壊して不況の時代を迎えています。99年にガンダムの新しいTVシリーズを始めたいと思っていますが、こういう時代だからこそ、若い人たちに「明日はあるんだよ」って伝えていくものにしたいですね。エンタテインメントの素晴らしさは、人を元気づけられることなのですから。

「ガンダムの中に20年間込められるようなものを見つけてくれたファンたちがいてくれることを大事にしたい」



ガンダムの最初のファンが実はいわゆるオタク層の青年や子どもたちではなく、
若い女子中高生だったのは、今となっては有名な話。
KINOのVol.2に収録されている富野と杉井ギサブロー氏との対談でも、

富野 あまりいったことがないんだけれど、『機動戦士ガンダム』が初めてやったことっていうのがあるんですよ。

杉井 ほう。それは?

富野 女性がロボットアニメを観てくれるようになったということです。(中略)打ち切りになっちゃったわけですが、女の子のファンがついた。

杉井 それ、最初の『ガンダム』のこと?

富野 そう、2クールが終わる頃からか、録音スタジオの前に「あれ?女の子がきてくれてる。でも、この子たちは普通だったら『ガンダム』なんか観てるわけないのに」ってことが見えたんです。最後のアフレコの夜は、50~60人のファンが集まってくれました。ほとんど中学生の女の子です。興業のキモは女を抑えろ、ですから、これは嬉しかった。


という会話から始まっている。
他にもここでは省くがそういった発言は多い(はず。)

しかしこの記事、ほかに載っているのが、

・鈴木敏夫:「ホーホケキョとなりの山田くん」→大ゴケ
・広井王子:「火魅子伝」→「サクラ大戦」に次ぐ二匹目のドジョウになれず
・坂口博信:「映画版ファイナルファンタジー」→……

という惨憺たる有様なのはどういうことかと。

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Comment
2145
No Title
>鈴木敏夫:「ホーホケキョとなりの山田くん」
高畑監督じゃないところがミソですよね。

2148
Re: No Title
もののけ姫と絡めているところを見ると、
「高畑作品」というよりも「ジブリ作品」という扱いですから。
その関係でプロデューサーなんでしょうね。

しっかし全米公開をもくろんで、
「マイネイバーシリーズ、ナンバー2」と「トトロ」の続編のような売り込み方してたとは。

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