非常に共感できる主張が「NOと言えない若者がブラック企業に負けず働く方法」に記されていました。
体を壊すくらいなら、ブラック企業を辞めて生活保護を受けた方がいい
労働相談に取り組むNPO、POSSEの事務局長・川村さんはこのように語っています。
やや挑発的な物言いになりますが、たとえば「ブラック企業」で働いて体を壊したり、詐欺まがいの営業を続けたりするくらいなら、仕事を辞めて生活保護を受けた方がいいと思います。
(中略)「生活保護を受けたくないけど他に仕事がないから」といって詐欺まがいの営業に加担しつづけることは、ある種のわがままだと言ってよいでしょう。
突飛な意見ですが、本人はもちろん、社会にとっても、そのまま働き続けて精神疾患にかかるより、よほどいいとのことです。
生活保護を受けながら再就職先を探す。POSSEに来る相談者でも躊躇する人がほとんどですが、個人的な生活を考えても、社会全体にとっての経済負担を考えても、そのまま「ブラック企業」で精神疾患にかかってしまうよりは、よっぽどいいと思います。
これはまったく同感で、一度うつ病にかかってしまうと、復職は非常に困難になります。何度も復職に失敗して、いつの間にか会社からいなくなってしまう方。みなさんの周りにもいらっしゃるかもしれません。ぼくの知っている範囲でも、長期間苦しんでいる方が、軽く5人くらい思い浮かびます。
うつ病を主因として休職した社員は、職場に復帰しても50%が再発して再び休職してしまうという。2回目の復職では70%、3回目では90%といわれる。
うつ復職者への甘やかしは不要 従来型も現代型も根にある要因は同じ 精神科産業医 吉野聡医師に聞く WEDGE Infinity(ウェッジ)
うつや自殺の経済損失は、年間2.7兆円の損失になっているとか。もっとも、このデータはブラック企業を起因としたうつ病、自殺に限ったものではありませんが。
厚労省は今年9月、うつ病や自殺による日本の経済損失額が、年間約2.7兆円に上るという推計結果を公表した。
毎日新聞の報道によると、経済損失額の内訳は、09年に自殺した15~69歳の2万6539人が働き続けた場合に得られたはずの生涯所得額が1兆9028億円。うつ病による生活保護の支給額が3046億円。うつ病の医療費が2971億円。うつ病で休職したことによる賃金所得の損失額が1094億円――などとなっている。
自殺や精神疾患による経済損失は年間約15.2兆円?対策を怠ってきた日本が被る“大きなツケ”|「引きこもり」するオトナたち|ダイヤモンド・オンライン
インフルエンザに掛かったら、おとなしく休もう
「ブラック企業で頑張って働きつづける」のは、「インフルエンザに掛かっているのに頑張って出社する」ようなものだと思います。頑張って働くことはすばらしいですが、それが原因で体を壊したり、「違法な労働」というウイルスを蔓延させてしまっては、結局自分と他人のためにならないわけです。
明らかに辛い状況なんですから、おとなしく休みましょう。その期間にしっかりと体力を回復させるべきですし、「過度に頑張らなくてもよい環境」に移動すべきです。そういった「必要な休憩」を取るために、ぼくは税金を払っているつもりです。
生活保護を躊躇する方は、よく「社会に迷惑をかけたくない」とおっしゃいます。自分が入った「ブラック企業」を生き残らせないかたちでその思いが実現されるのであれば、それはすばらしいことだと思います。でも、そういう思いは、えてして「ブラック企業」を生き延びさせてしまうことにつながります。
違法な労働を強いる企業を延命させてしまっては、元も子もありません。社会をよくしていくためにも、「心身を壊したり、違法な労働に関わりつづけるくらいなら、生活保護を受給する」という選択肢を広めていきたいものです。
なお、川村さんも書中に書いているとおり、「生活保護くらいしか頼れるものがない」という状況にも課題があると考えられます。精神的なハードルも高い制度ですし、より気軽に利用できる仕組みが用意されると、違法な労働、人の健康・命・人権を蝕む労働を減らしていくことができるでしょう。ここら辺はより大きな動きを作っていきたいところです。
自分の仕事に悩んでいる方は、ぜひとも手に取っておきたい一冊です。POSSEは労働相談も受け付けているので、お困りの方は頼ってみるとよいでしょう。