2012年12月11日

〈伊東秀子法律事務所 伊東秀子先生〉

伊東秀子先生にインタビューをさせて頂きました。photo_ito_20121129
 
Q1. なぜ、弁護士になろうと思われたのですか? 
A1. 昭和41年に大学を卒業したのですが、経済成長の最中、女性はまだまだ就職が厳しいというのがありました。そんな中、民間企業よりも、公的機関の方が女性としても働きやすいと感じ、まずは大学で勉強していた社会学、心理学を生かした、家庭裁判所の調査官という職に就きました。調査官とは事件の調査報告書を書いて、裁判官に渡す仕事です。調査官は10年間続けたのですが、30代初めに夫の北海道への転勤をきっかけに職を離れ、自分も北海道へ移住しました。
 北海道に移ってから半年間は専業主婦として、生まれたばかりの三人目の子供も含め子育てに専念していたのですが、10年間しっかり働いてきたこともあって、子育てだけでは少々物足りなさを感じていました。そこで半年後、大学の聴講生という形で、以前から興味のあった法律を学び始めました。家庭裁判所で働き色んな事件を見ていく上で、紛争の根底になにか解決の基準があり、それは自分のように社会学、心理学的観点からより、法律的観点から見れば分かるのではないかと思ったのです。そういうわけで、法律を勉強したいという気持ちは以前からありました。
 半年間勉強しましたが、やはりしっかり勉強したいと思うようになり、司法試験を目標に、子供も保育園に預けながら2年間集中して勉強することにしました。
 こうして54年の試験に合格することができ、現在まで弁護士を続けています。(途中5年間衆議院議員も務めました。)



Q2. 今までどのようなお仕事をされてきましたか?
また、現在どのようなお仕事をされていますか?
A2. 刑事、民事ともに関わってきました。
 民事では、行政事件、労働災害、医療過誤の3つに関わることが多いです。
とくに行政事件、医療過誤は事件の中でも最も難しいと言われていて、その時間的、精神的負担から敬遠する弁護士も多いです。しかし私は昔から数学が好きだからなのか、数々の事実を組み合わせて論理的に整理していくというような作業がとてもやりがいがあってこういった難しい事件に関わるのは楽しく、ライフワークとさせて頂いています。
 刑事事件も、現在6年半も「恵庭OL殺人事件」と称する殺人事件の弁護をした後、現在再審請求の主任弁護人をしています。被害者の職場の同僚の女性が被告として懲役16年の刑が確定し6年間刑務所に入っているのですが、証拠もなく、彼女はずっと否認しています。敗訴後、現在再審を申し立てているところです。この事件をどれだけ時間がかかっても解決するのが私の人生の最大の目標であります。

Q3. 弁護士としてお仕事をする上で意識していることは、何ですか。(信条・ポリシーなど)
A3. 相談に来るお客様は、相手方に対して「無念さ」を抱えてやってきます。その「無念」を代わりに晴らしてあげるのが私どもの使命だと考え、心がけています。
 また事件に対して手を抜くことは一切しないようにしています。一つ一つの事件を丁寧に解決していくため、あえて引き受ける事件は少なくしています。これは本当に解決してあげるべき事件だ、この人は救われるべきだと思える事件を全身全霊で対処することにしています。現在69歳になりますが、深夜になるまで仕事をすることも厭いません。ある種趣味の領域かもしれません。
 
Q4. 弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A4. Q2でもお答えしましたが、行政、医療過誤、労働災害関連の事件によく関わります。医療過誤事件は麻酔事故や歯科のインプラント治療での事故など色々と引き受けています。行政事件と共に、その難しさをやりがいとしています。
 

Q5. ページを見ている方々へのメッセージ、法曹界を目指している方に向けてのアドバイス等をお願いします。
A5. 弁護士は数がどんどん増えているのに、事件はそれほどないということで、就職難、収入減と、マスで見ると弁護士界にも問題が増えていますが、弁護士は常に一つ一つの事件に丁寧に向かい合っていく仕事です。手を抜いたり、お金にならない事件を不満に思ったりせず、事件において、ひとつひとつ事実の分析と積み上げ、整理により解決に導くような作業に、そしてそれによって人を救えることに喜びを覚えて欲しいです。
 人間の感情に直接向かい合い、本質を突き止めて整理していき、裁判官を含む色んな人を説得していくこの弁護士という職業は、人と関わるのが好きで、文章を書くのが好きで、人を論理で説得するのが好きという人に向いています。これらに該当する人は、是非目指して欲しいと思います。

〈取材学生からのコメント〉

今回伊東先生には大学の先輩というご縁でインタビューにご協力頂きました。先生の口調からそのお優しさが大変伝わってきたのですが、一方で3人の子供を育てながら司法試験を通られ、今日まで何十年間も激務を続けてこられた伊東先生の「パワフルさ」には大変頭の下がる思いでした。後輩として伊東先生を見習って、自分もパワフルな人間になっていきたいと思います。伊東先生、ありがとうございました!!

東京大学教養学部文科一類2年 輪嶋秀栄





bengoshiretsuden at 13:44│Comments(0)TrackBack(0)

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