笹井芳樹の「STAP細胞」捏造の関与疑惑 - 大隅典子の告発から

週末、「STAP細胞」の問題を考えながら、あらためて4/4の山中伸弥の国会答弁に意味深い内実があることを思い知らされた。山中伸弥はこう言っている。「僕たちは(ノートを)出さない人は、『不正をしていると見なします』と言明しています」。この発言は、婉曲的ながら、小保方晴子の「STAP細胞」研究が十分に信用できないものだということを示唆しつつ、指導者の立場からの教育論に変換し、理系の学生や研究者たちに自然科学の正規の方法を諭したものだ。この話を聞いたとき、私だけでなく誰もがそうだろうが、後者の意味にアクセントが置かれていると感じた。科学教育の一般論が説かれ、この事件の教訓として念押しされていると受け取った。だが、笹井芳樹の会見を聞き、2013年のNature論文について内情を知り及んでくると、山中伸弥のこの言葉が、単なる科学教育の訓範を垂れたものではなく、もっと鋭く深い含意があったことが察せられてくる。われわれは、小保方晴子の実験ノートの問題について、それをかなり善意に解釈してしまっていたようだ。本人が未熟で、記録の要領や定則をよく心得ず、実験そのものも粗雑だったため、結果的にノートに中味がなく散漫になったのだろうと、そう安易に理解していた。しかし、どうやらそれは誤解なのだ。山中伸弥の言葉のとおり、小保方晴子は不正を意識し、不正を隠蔽するために故意にノートを杜撰な態様にしていたのである。オーディットの目を眩ますため。

そのことに気づかされたのは、笹井芳樹の会見の後の2chの書き込みを見たことによる。2013年のNature論文(リバイズ版)が投稿されたのは3月10日。その前の投稿は1年前の2012年の春で、このときはリジェクト(不採択)だった。笹井芳樹の説明では、2012年12月から「STAP」論文をNatureに再挑戦するプロジェクトに加わり、執筆を受け持ったという経緯になっている。何事も責任逃れが身上の笹井芳樹は、この件についても、竹市雅俊から依頼されて引き受けたのだと醜い言い訳を言っている。で、3か月間で論文をリバイズして、体裁をよくしてNatureに投稿した。が、採択になったのは2013年12月で、Nature合格の金星を射止めるまで9か月もかかっている。この間に、Natureは3度にわたって、分化した細胞が初期化して多能性を獲得した根拠を示す追加資料の提出を求めていて、理研(笹井・小保方)との間で往復のやり取りが続けられていた。論文を審査したNature側が、より説得的な補足データを要求していたのである。Nature側からすれば、一度落選させた投稿と基本的に同じ趣旨だから、たとえそこに権威の笹井芳樹が加わって箔をつけ、華麗な論理と表現になって論文全体が化粧され、完成度が格段に上がったとしても、アクセプトに当たっては念には念を入れ、審査の内部でネガティブに評価する慎重派を押し切る必要があったのだろう。

笹井芳樹の会見では、「STAP細胞」のライブセルイメージングの観察と撮像において、何やら、小保方晴子を手取り足取り指導したような話が披露されていた。これは、例の蛍光発色するOct4-GFP発現の部分に関わる事実だが、実験の現場に笹井芳樹が直接タッチして、小保方晴子を指導し、より説得力のある、すなわち「STAP細胞」の仮説を証明する精度の高いデータ(この場合は動画)を取得させている。つまり、論文のNature採択の果実を得るべく、2013年の1年間、笹井芳樹はずっと小保方晴子に密着し、Nature側からの要求や依頼に応じ、論文を補完するための追加のデータ解析をさせていた状況が想像される。Natureにアクセプトされた論文(リバイズ版)には、80点の写真や図表が掲載されていて、この種の科学論文では数が多いという指摘がされていた。2012年(小保方・若山)の論文にはなく、2013年(笹井・小保方)の論文に追加された写真や図表があるとすれば、それは、笹井芳樹が小保方晴子に命じて、過去の実験データから作成させたものか、2012年12月から2013年2月の間に実験させて作成させたものである。あるいは、Natureから特別の配慮を受けて、投稿後、2013年12月までに補充されたものもあるかもしれない。いずれにせよ、本来なら、画像の前提に実験があり、実験にはそれを裏付けるノートの記録がなければならない。

が、この2013年のNature論文の写真や図表については、その根拠を追跡して確定できるノートの記録がないのだ。おそらく、2013年3月から12月までに、3度にわたってNatureに提出した追加資料が作成された実験についても、ノートは録られていないだろう。ノートが録られていないのは、録り忘れたからではなく、小保方晴子が杜撰だったからでもないのだ。捏造がバレるから、証拠となる記録を残さなかったのである。笹井芳樹は、何としてもNatureを納得させる「合理性のある」データが欲しかったから、あれを持ってこい、これを持ってこい、こういう結果(画像)が出るはずだ、きれいな解析結果を持ってこいと、小保方晴子に催促したに違いない。小保方晴子はそれに応え、「合理性のある」「実験データ」を笹井芳樹に手渡していたのだろう。小保方晴子が1月末の会見で言っていた、「眠れない夜や泣きたい夜もありました」とか、「もうやめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れない」という談話は、単に嘘八百ではなくて、笹井芳樹が次々と注文するところの「合理性のある」「実験データ」をどうやって捏造するか、その苦心の日々を語った本音だったのかもしれない。私は疑っている。捏造は、単に摘発されているテラトーマの3枚の画像だけでなく、もっと広範に多数あるのではないかと。また、そうした捏造について笹井芳樹も薄々感じとっていたのではないかと。

笹井芳樹の会見の後、日本分子生物学会理事長で東北大教授の大隅典子が、すぐに笹井芳樹の弁明を批判する記事を発信した。同じ4/16の出来事で、短い内容ながら専門的な知見からの本格的な反論であり、素早い反応に驚かされる。大隅典子はこの分野の権威の一人であり、こうして笹井芳樹の弁明を峻烈に批判する主張を上げたことは注目していい。その内容は、例の蛍光発色してOct4発現する細胞が、「STAP細胞」ではなく、自家蛍光する死細胞をマクロファージが捕食する場面を撮影したものではないかと分析するもので、いわば「STAP細胞」の存在を真っ向から否定する疑義が述べられている。この疑問は2月からずっと言われていたもので、2ch生物板では繰り返し提起されていたが、権威の大隅典子が公然と論じたことにより、単にネットの噂というレベルでは済まなくなった。大隅典子は、キメラマウス実験についても疑義を発しており、すなわち、理研や笹井芳樹や小保方擁護派のマスコミが言うところの「STAP細胞は科学的に価値のある仮説」とする見解を根底から覆す姿勢を示している。「STAP細胞」を否定する見地に立った。この大隅典子の記事に匿名者がコメントで補足を入れていて、次のように言っている。「ライブセルイメージングの開発を行っている者です。 話題になっているので、イメージを見てみました。 セッティングはx10オブジェクティブ、DICイメージの質が悪いのでおそらくプラスティックボトルかディッシュ、自動焦点機能を使用、といったところでしょう」。

「興味深いのは蛍光非発現の細胞が減っていること。 細胞死によるのであれば、死んだ細胞のカスが残りますが(DICでは白く光って見える)、きれいに無くなっているので何かによって処理されていると考えられます。 この系ではおそらくマクロフェージの類だと思います。 では、マクロフェージであればイメージ中に見えているはずですが、最初の方のイメージ中にはありません。 これは自動焦点機能によるマジックでしょう。 たぶん、輪郭抽出による自動焦点機能が使われていると思いますが、この場合、焦点はディシュ表面ではなく、丈のある物体(イメージでは球形の細胞)の方に当たります。 マクロフェージのようなディシュ表面にべたっと付くタイプの細胞はこの条件では見にくいはずです。 後半に行くに従い、激しく動く細胞が見えだしますが、これは球形の細胞が減ったため、自動焦点がディシュ表面に移動し、見え始めたと思われます。 もし、この激しく動く細胞がSTAP細胞であれば、蛍光発現細胞に由来するはずですが、このイメージング条件ではディシュ表面に居る細胞が分からないので何とも言えません。 が、マクロフェージに補食されたと考えた方が合理的なように思います。 焦点をディシュ表面に固定化するかz-スタックを取ってイメージングすれば答えは簡単にでます。 おそらく、蛍光発現細胞がマクロフェージに補食されたイメージが取れると思います。(略)個人的にはこのような細胞(おそらく死細胞)からマウスが発生するとは思えません。ですので、未だ隠されたトリックがあるはずです」。

長々と引用したが、要するに、ライブセルイメージングでトリックが使われ、実験データ(画像)が操作されているのではないかと推理、専門家の立場から手口を暴露している。小保方晴子の4/9の会見を思い出すと、たしか、イメージングの技工で笹井芳樹は熟練で、その面で多大なサポートを得たという証言があった。つまり、画像データを「よく見せる」手腕に長けていたという意味だ。そうすると、もし、このOct4発現の細胞が「STAP細胞」ではなく、死細胞の自家発色もしくはそれを捕食したマクロファージの現象であったなら、笹井芳樹自身が、「STAP細胞」の捏造に主体的に関与した可能性も生じる。大隅典子はこんなことも言っている。「STAP細胞はリンパ球やES細胞よりもさらに小型の特殊な細胞であるとして、ES細胞とSTAP細胞(仮)の電子顕微鏡画像が資料には貼り付けてあります。ただし、電子顕微鏡画像は2次元データです。細胞の切り方によっては、大きな細胞でも小さな断面を示すことは可能です」。すなわち、「STAP細胞」は他のES細胞などよりずっと小さい細胞だとする、「STAP細胞」の根拠に鉄槌の疑義を示していて、それはイメージングの細工でイカサマをやったんだろうと斬り込んでいる。きわめて大胆で辛辣な告発だが、権威の大隅典子が直言しているのだから、一聴に値する指摘と考えていい。「イメージング」をキーワードにして事件全体を俯瞰すると、捏造への笹井芳樹の加担の疑惑が浮かび上がる構図にならざるを得ない。

笹井芳樹の4/16の会見を振り返ると、クリティカルなポイントが何か所かあった。第一は、理研のフリーザーに保存している「STAP細胞」について、遺伝子解析をして検証するべきではないのかという質疑での応答である。この点について、笹井芳樹は、それを調べても、いろいろな性質が混じっている結果が出るから、STAP細胞のあるなしが判明する材料にはならないというような言い方をして、巧妙に追及をすり逃げた。意味不明な回答だったが、質問者は煙に巻かれた。第二に、マウスのすり替えの問題である。この点は神戸新聞に問答の情報がある。若山照彦が小保方晴子に渡した129系統が、B6・1Fのマウスにすり替わっていたという問題で、まさに「STAP細胞」の捏造を証する決定的なポイントだが、この件について笹井芳樹は、「私は知らない」と言い、「論文とは関係ないことだ」と逃げた。4/9の小保方晴子の応答と同じである。この件に関しては、3/25の理研からのリーク以降、全く情報が途絶えていて、若山照彦が証拠を準備して会見で説明しないかぎり、真相は何も分からない状態になっている。3/25にこの事実がNHKにリークされたときは、理研(竹市・石井)も、「STAP細胞」が捏造による虚偽だということを正直に認める推移になるだろうという感触があった。そう期待をさせる重要なリークだった。だが、4/1の最終報告から状況が変わり、「STAP細胞」を生きさせる方向に理研がシフトしたため、マウスすり替えについては続報が止まる事態になってしまった。

第三に、論文不正が発覚して、2/18に小保方晴子が笹井芳樹に相談して、捏造したテラトーマ画像の「処理と対策」を協議し、早稲田に問い合わせをした件である。下書きだから別の論文で公表してもいいとか何とか。本来、これはNature論文とは何の関係もない別の実験の画像であるのだから、まさに不正行為であり、申し開きもできないはずなのだが、何故か二人は意味を取り違えた対応をして、2/18頃にNatureに掛け合って奇妙な問題収束に奔走している。この点は子細が謎であり、どういうことなのか真相を知りたけれど、笹井芳樹の会見ではウヤムヤにされて逃げられた。質問者の追及が手ぬるい。しかし、この問題になると、笹井芳樹が微妙にうろたえた表情になり、この点が事件のツボだということが察知できる。こうして、巧妙な官僚の詭弁で言い逃げられた形になったが、予想したとおり、笹井芳樹に世間の同情が集まることはなく、週末のマスコミ報道でも叩かれるだけの顛末となった。一方、先々週、ようやく科学の理性に回帰し始めたと思われたマスコミが、先週は早くも反動が始まり、フジが芦田宏直という男を引っ張り出し、小保方晴子の擁護と「STAP細胞」の正当化のキャンペーンに血道を上げる幕となった。フジは安倍晋三と直結している。安倍晋三と幸福の科学は紙一重だ。NHKの今後の報道が心配になる。他方、一点、朗報に聞こえたものもあり、それは理化学研究所改革委員会の岸輝雄が、笹井芳樹も論文責任者として小保方晴子と同じ責任があると語ったことだ。

ぜひ、Blogの記事が理研改革委のメンバーに読まれ、Nature論文の責任が笹井芳樹にあることを正しく認定して欲しい。市民の声に耳を傾けて欲しい。研究者の倫理問題として捉えたとき、笹井芳樹の行動は、これまでの過失以上に、今回の会見(4/16)での言い逃れと他者へ責任の押しつけこそが犯罪的なもので、科学研究者の倫理を冒涜する許されざる行為なのだ。



by yoniumuhibi | 2014-04-21 23:30 | Trackback | Comments(2)
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Commented by わかめ at 2014-04-21 20:28 x
ソースが週刊文春で申し訳ないのですが、
若山さんは憔悴していて体調も優れないようです。
何より理研を離れた身として、その巨大な組織から責任転嫁され
(社会的に)抹殺されてしまうのではないかと怯えているとか。

きちんと資料を揃えて、若山さんが会見することは難しいのでしょうか。

Commented by 熊三 at 2014-04-21 23:18 x
 理研改革委員会岸輝雄の、(笹井氏は小保方晴子氏と)「同等の責任を持つべきだ」、だけでは処分の軽重/程度がはっきりしません。同時に「共著者の責任を明確にするよう求めていく方針」も出されています。したがって理研内部では笹井、小保方、丹羽、(若山)の3(4)名が ”Guilty”と判定され、調査委員会の結論とは異なっています。理研外の共著者も含むかどうか不明ですが、含むとしても彼らには実質責任は問えません。しかし理研内部共著者の責任分散の効果はあります。まさにイカサマ論文の企画者が、「赤信号みんなで渡ればこわくない」と、考えた心理に迎合した方針です。これらから考えて、岸発言は「笹井・小保方をもっとも重い処分にはしないように」という、いわば指揮権発動のようにも見えます。もっと露骨にいえば、小保方を懲戒解雇にはするな、ということでしょう。
 
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