支持したい鹿島アントラーズの非フェアプレー
|
|
|
4月19日(土)にカシマスタジアムで行われたJ1の第8節の鹿島と神戸の試合は3対2でアウェーの神戸が逆転で勝利した。試合前の時点では、鹿島が2位で、神戸が3位。注目の上位対決だったが、リーグ戦は3連勝中と好調の神戸が主力2人(MFシンプリシオとMFペドロ・ジュニオール)の不在というマイナス要素を跳ね返した。本物の力を付けていることを全国のサッカーファンに示した。
この試合は鹿島の2点目となる後半9分のFWダヴィのゴールシーンと、DF青木剛のハンドで神戸にPKが与えられたシーンという2つが印象に残る場面だったと言える。特に前者はなかなか見ることができないパターンのゴールだった。プレーを流した主審の判断がどうだったのか?という見方もできるが、原因は神戸のキーパーのGK山本海の不用意なプレーであり、考えられないようなミスだったと言える。
この2つのシーンはゴールに直結して、試合展開に大きく関わってきたので、試合を観ていた多くの人の記憶に残っていると思うが、もう1つ、気になるシーンがあった。それは後半の終了間際のシーンで、神戸のGK山本海と鹿島のMF本山がペナルティエリア内でちょっと接触して、ボールをキャッチしたGK山本海が(故意に)タッチラインにボールを蹴って、うずくまったが、鹿島の方はボールを返さなかった。
改めて言うまでもないが、プレー中に激しい接触が起こって、誰かがピッチ上で倒れ込んでしまったときは、気を使ってプレーを切ることが多い。そして、その後、スローインで再開するときは、相手チームにボールを戻すのが暗黙の了解になっている。一種のフェアプレーで、わざとGK山本海が外にボールを蹴り出したにも関わらず、ボールを神戸に返さなかった鹿島の行為はフェアプレーとは言えない。
このことに関しては、鹿島でも長くプレーした神戸のFWマルキーニョスは「何でボールを返さないのか?」と相手選手や相手のベンチに不満の意を示したが、構うことなく、鹿島はスローインから普通に攻撃を再開した。会場がカシマスタジアムで、アウェーの神戸サポーターの数はそこまで多くなかったこともあって、会場が不穏な空気になることは無かったが、FWマルキーニョスの言いたいことはよく分かる。
■ 非フェアプレーとも言える行為
仮に、この試合が神戸のホームスタジアムであるノエビアスタジアムで行われていたら、神戸のサポーターから大きなブーイングが起こっただろうし、カシマスタジアムであっても、立場が全く逆で、神戸側がボールを相手に返すことなく、普通に攻撃を仕掛けていたら、鹿島のサポーター席から大きなブーイングが起こって、異様な雰囲気になったのではないかと思われる。
ボールを返さなかった鹿島の行為は「非フェアプレー」とも言えるが、個人的には、鹿島側の判断を支持したい。GK山本海とMF本山の接触というのは些細な接触であり、「ちょっとぶつかった。」という程度である。即座に治療をしたり、ピッチに倒れ込む必要は全く無くて、GK山本海がタッチラインにボールを蹴り出した行為というのは、明らかに「時間を稼ぎたい。」という意図が感じられるものだった。
もちろん、リードしているチームが時計を進めるためにボールキープに入ったり、(時間稼ぎが主目的と思われる)選手交代を行うことは、責められる必要はない範囲だと思うが、今回のGK山本海の行為はあまり宜しくないと思う。ボールをキャッチして、ボールをサイドに蹴って、そのまま倒れこんで、再開後にボールが返されたら、1分程度は楽に時計を進めることができるが、気持ちのいいプレーではない。
■ 賛否両論であるが・・・
相手側がわざとタッチラインにボールを蹴り出したとき、ボールを返す行為というのは、フェアプレー精神に則ったものであり、サッカーという競技の美しい部分の1つであるが、フェアプレー精神を逆手に取った行為もしばしばみられる。中盤でボールを失って、相手がカウンターのチャンスを迎えたとき、必要以上に痛がって、(相手に)ボールを外に蹴り出すプレーを要求することなどが、それに相当する。
どのくらいの痛みなのかというのは、当事者である本人にしか分からないが、そうは言っても、本人や周りの雰囲気などで、重症なのか、否かというのは、何となく分かる。J2の岡山はこういった行為に関して、数年前から独自のスタンスを貫いているが、個人的には、自チームに怪我と思われる選手がいて、自らの意思でボールを外に出した場合は、律儀にボールを返す必要は無いのではないかと思う。
(※ ただ、国際試合になると話は変わってくる。「ボールを戻す・戻さない」が原因で大きなトラブルに発展することがある。また、中立地での試合の場合、(そこまでの過程はどうであれ、)ボールを戻さないことで現地の観衆に良くないイメージを持たれてしまって、アウェーの雰囲気になることもあり得る。なので、国際試合の場合は、反感を持たれないように注意する必要がある。)
したがって、Jリーグの試合と国際試合は分けて考える必要があるが、W杯予選や五輪代表予選などで中東の国と対戦したとき、「試合の終盤に中東のキーパーが大袈裟に倒れ込んで、自分たちでボールを外に蹴り出したが、日本代表はボールを返さざる得ないので、無駄に時間だけが過ぎていく。」という流れでイライラさせられた経験は誰しもが持っていると思うが、傍から見ていると、見苦しいものである。
今回の「ボールを返さない。」という鹿島側が下した判断については、賛否両論あると思うが、個人的には、先のとおりで、鹿島の判断を支持したい。「1点ビハインドの終盤」という切羽詰まった状況も大いに関係していると思うが、相手のフェアプレー精神を逆手に取って、自チームに利をもたらそうとする行為にまで、フェアプレーでお付き合いするする必要は全く無いと思う。
関連エントリー
2010/02/03 ファジアーノ岡山の1つの宣言
2013/04/15 (続) ファジアーノ岡山の1つの宣言
2014/04/20 全記事一覧(2005年-2014年)