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故意かミスか 汚染水処理トラブル頻発 福島第1

 福島第1原発の汚染水処理をめぐるトラブルが後を絶たない。最近もタンクから水をあふれさせたり、送り先を誤ったりするトラブルが立て続けに起きた。作業員のミス以外に、故意に誤った操作が行われた疑いも出ている。東京電力は作業員に聞き取りしているが、聴取に強制力はなく、調査の限界も露呈している。(福島総局・菅谷仁、山崎敦)

 東電は14日、普段使わない仮設ポンプ4台が稼働し、約203トンの汚染水が本来の送り先ではない建屋に流れ込んでいたと発表した。
 トラブルは、原子炉冷却後の水をためる集中廃棄物処理施設で起きた。現時点で外部に漏れた形跡はないが、水には1リットル当たり数千万ベクレルのセシウムとベータ線を出す放射性物質が含まれていた。
 仮設ポンプは2011年6月、緊急時に備えて施設内の二つの建屋に設置された。東電によると、仮設ポンプはその後使われておらず、普段はポンプがある建屋に人の出入りはないという。
 建屋の入り口は復旧作業で通した配管があって閉まらず、分電盤も施錠されていなかった。ポンプ4台を起動するには処理施設内に分散する二つの分電盤を開け、手動でスイッチを入れる必要があり、東電は「故意か作業ミスか、予断を持たずに調査している」と説明する。
 福島第1原発では2月、汚染水を移送する配管の弁を何者かが開け、約100トンの高濃度汚染水が、せき外に漏れ出すトラブルが起きた。水にはストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり2億4000万ベクレルの濃度で含まれ、漏えい水としては過去最高の濃度だった。
 東電は100人以上の作業員に聴取し、監視カメラの映像も確かめたが、肝心の「誰が」「何のために」弁を開けたのか不明のまま、1カ月後に調査を打ち切った。
 この際の漏えいでは、東電が「水位が高いという警報を故障と判断」「タンクの水位を見逃す」「閉じておく弁を開けていた」など複数のヒューマンエラーが重なった。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は「組織文化や作業マニュアルができておらず、相当根が深い」と東電の体質そのものに不信感を示す。
 現場では日々、4000人以上の作業員が働く。下請けが複雑に絡む多重構造にあり、初対面の作業員がチームを組むケースも少なくない。強い放射線にさらされる中、現場を指揮する熟練作業員になればなるほど、現場に短時間しかいられないという問題も横たわる。
 福島県原子力対策課の渡辺仁課長は「人に起因するトラブルが多く、東電の現場管理はずさん極まりない。原発事故の収束は福島復興の大前提。再発防止を徹底してほしい」と訴えている。


2014年04月20日日曜日

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