耳で観る歌舞伎 イヤホンガイド潜入取材!


2001年4月30日。歌舞伎座は来る團菊祭の開幕に向けて大忙しです。
そして、私とryoyuさんの二人は朝日解説事業株式会社さんにお邪魔しました。
今や歌舞伎の大切な裏方「イヤホンガイド」。
私もryoyuさんも毎月お世話になっています。
イヤホンガイドキャスターとして、すっかりお馴染みの塚田先生のご好意でお忙しい中、
沢山のお話を聞かせて頂きました。


Ryoyu 朝日解説事業株式会社訪問ミニレポート

團菊祭も間もなく初日を向かえるというこの日に、真葛さんに同行して
「イヤホンガイド」についてのお話を伺いに朝日解説さんへ訪ねました。
歌舞伎、文楽を観劇し始めてからず〜っとお世話になっている「イヤホンガイド」。
なくてはならないアイテムの一つです!
興味津々、「へえ〜」「ふむふむ」の数時間でした♪
くわしいレポートなどについてはプロの真葛さんにお任せするとして・・・。
(真葛さんよろしくお願いします〜♪)

★ryoyuのミニ感想文★
壱 ・ まず、朝日解説さん。社内の雰囲気が明るく、社員皆さんの感じがとても良かったです。
弐 ・ イヤホンガイドキャスターの塚田先生、オペレーターの渡辺さん。
とてもキサクでフレンドリーなお人柄に感激!!
私のような初心者に、わからないこともわかるよ〜に説明してくださいました。

例えば、オペレーターさんは出演者の方と同じように(多少の交代はあるようですが)
毎日劇場に通い、オペレートするとのこと。
これってわかっているようで、わかってない。認識していなかったことの一つです。
あらためて伝統芸能、歌舞伎や文楽のすごさというか、
いろんな方に支えられているんだなあと感じました。
舞台が始まり、役者に惹きつけられ、そして観客がさらに伝統に近づける大きな手段。
それが「イヤホンガイド」だと思いました。
「あっぱれイヤホンガイド!」ですね。へへへ。これからもお世話になります♪

そしてついに会員券購入しました!(ついつい時間がぎりぎりで機会を逃していました・・・)
なんともラクチン♪受付にカードを渡すだけ!これなら、開演前の慌ただしい時間も
短縮できますよ。

reported by ryoyu

真葛のイヤホンガイドレポート!!

イヤホンガイド設立から今年で25年。「イヤホンガイドの怪人」(笑)
塚田先生のご案内で収録現場にお邪魔しました。
歌舞伎ファンにはすっかりお馴染みの「イヤホンガイド」。
歌舞伎座での使用率は約4割と普及しました。
私が初めて歌舞伎座で観劇した16年前!にも勿論、イヤホンガイドはあったはずなのですがその頃まだ私はイヤホンガイドの存在すら知りませんでした。
この時に出逢っていれば、歌舞伎にハマるのももっと早かったように思えます。

この日は、團菊祭で上演される「伊勢音頭恋寝刃」の収録日。
塚田先生とオペレーターの渡辺智子さんが私たちの拙い質問に答えてくださいました。
まず、簡単に収録の流れについてご説明します。
歌舞伎座をはじめとした各劇場で演目が発表になると、キャスター&オペレーターの
人選がおこなわれます。
現在、歌舞伎・文楽キャスターの方は10人程いらっしゃるそうです。
キャスターの方は台本をチェックして、独自の解説部分を執筆します。
これをQシートといい、塚田先生が担当された「伊勢音頭恋寝刃」は全部で
74の解説文が書き加えられています。
録音は、歌舞伎座近くのこの朝日解説事業株式会社さんの
社内に設置されたブースでおこなわれます。



録音作業中の塚田先生と渡辺さん

こうして、収録されたテープは公演の各狂言ごとにオペレーターさんの手によって送りだし(再生)されるわけです。
この送りだしという作業は大変重要です。
みなさんは、これまでイヤホンガイドの解説はどのように放送されているか考えたことはありますでしょうか?
芝居のタイムコンディションには日によって違いがあります。
その微妙な間をオペレーターさんが調節して、私たちの耳に届けてくれます。
上演中のオペレーターさんの目は台本を追い、耳で役者さんたちの台詞を聴き、手元はミキサーのボタンを操作。
だんまりのように台詞のない芝居の時は振りをみながら解説を送りだすそうです。
この緊張感のある操作から、正確なイヤホンガイドの解説が毎日発信されるのです。

イヤホンガイドキャスターの塚田さんに解説についての工夫やご苦労をお尋ねしてみました。
まず、塚田先生がこのキャスターのお仕事を始めて一番最初に感じられたことは、劇評や過去の知識が
役にたたないということだったとか。
それは自分の持っている知識を解説に盛り込んでしまうことで芝居の邪魔をしてしまうというのです。
解説が役者さんの台詞にかかり、芝居をだいなしにしてしまってはイヤホンガイドの意味がありません。
今なにを望まれているのかなど、観客のみなさまのアンケートなどのご意見を取り入れ、
吟味して今日の塚田先生の「シンプルで的確な解説」が生まれたのです。
観る人に強制するような解釈はいけないと塚田先生はいいます。
また、役者さんによってはそれぞれの思い入れや解釈を持ってお芝居をされているので、
納得いかない解説に苦情もあるとか。
塚田先生に限らず他のキャスターのみなさまもそれぞれ苦心されて解説に挑んでいらっしゃると伺い
私とryoyuさんはますます頭が下がりました。



解説収録中の塚田先生

650円という貸出料金の中にどれだけの情報を入れられるかということが勝負。時には無駄も必要。
自分のしゃべりたいことと知りたいことの違いを察知して解説をする、
耳に残る解説を塚田先生が心がけているそうです。
時代は変わって最近の歌舞伎に足を運ぶ方の中には「長火鉢」といってもそれがなにか知らない方もいます。
そんな方にもさりげなく意味を伝えるなど、時代を追って解説も変化してきているということです。
塚田先生の解説を聞く度に的確な解説がお芝居に溶け込んでいるのを感じます。
イヤホンガイドを聴いているという感覚でなく、自然と頭に芝居と解説が染み込んでいるのが塚田先生の解説。
まさに「耳で観る歌舞伎!」といったところです。
イヤホンガイドのキャッチフレーズ「耳で観る歌舞伎」の名付け親は実は塚田先生。
もちろん、月読の看板連載「ツカちゃんのインターネットで聴くかぶき」も塚田先生のネーミングです。

また、イヤホンガイドの充実は芝居のテンポ、台詞のリズムにのせて送りだすオペレーターさんの
技術にもかかってきます。
渡辺さんはこのオペレーターのお仕事を始められて8年。
月末の収録から上演中の送りだし、貸出のお仕事と毎日大忙しです。
急な配役変更の時には役者名をキャスターが録音をしなおすこともあるのですが、
突然で不可能な時は担当キャスターの過去のテープから役者名を拾いだしして
編集するといったご苦労もあるといいます。
さて、もっとイヤホンガイドを楽しむために、渡辺さんからアドバイス。
従来の受信機のイヤホンが耳に合わないという方はいらっしゃいませんか?
実はこのイヤホンはジャックさえ合えばご自分で持参されたイヤホンと取り替えてもいいそうです。
また、通常貸出しされているイヤホンの耳の部分が大きすぎるという方のために
ワンサイズ小さいイヤホンの用意があります。
耳に合わないと感じていた方はぜひお気軽に声をかけてくださいとのことでした。

そして、イヤホンガイドのリピーターさんにはぜひ会員登録をオススメします。
ryoyuさんもご案内がありましたが、開演終演時の混雑もさけられ、料金もお得になっています。
なんでも、最長会員さんはこれまで69回の更新をしていらっしゃるとか!
長く愛されてきたイヤホンガイドならではのエピソードです。

世の総理大臣も会員のこのイヤホンガイド。
役者さんの中にも勉強のために借りにこられる方もいらっしゃると伺いました。
歌舞伎初心者の方から古い贔屓の方までに支持されるイヤホンガイド。
数々のお話を伺い、イヤホンガイドがさらに身近に感じた数時間でした。

朝日解説事業株式会社ホームページ
真葛

お忙しいのにお時間をくださった塚田先生、
朝日解説事業株式会社のみなさま、渡辺さん。本当にありがとうございました。

 ryoyu&真葛

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