中山敦支『ねじまきカギュー』14巻 Paint it black
ねじまきカギュー
作者:中山敦支
掲載誌:『週刊ヤングジャンプ』(集英社)2011年-
単行本:ヤングジャンプ・コミックス
[以前の記事→1-4巻/5巻/6巻/7巻/8巻/9巻/10巻/11巻/12巻/13巻]
カモ先生が体現する「愛」と、理事長の「非愛」が衝突する代理戦争。
中山敦支は無謀にも、前提となる「愛とはなにか」について定義をこころみる。
あやしい魔術で、カギューの心のなかへ迷いこんだカモ先生。
「正義」「理性」「性慾」「食慾」などが会議中。
カギューたんの性慾の擬人化!!!!!
かわいい感情たちが、ドス黒い「嫉妬」に食い散らかされた。
ここまでふかく内面をメスでえぐられるヒロインもめづらしい。
新篇に登場した敵キャラ「マルマン」の過去。
大道藝人だったころ、親方に強姦されかけた(常習かもしれない)。
カギューたんとちがって性慾うすいのか、セックスをかかない中山だが、
背景におどる「肉便器」などの描き文字は、どんなエロ漫画より禍々しい。
辛気くさい身の上話をマブルゥが一蹴、フラグへし折る。
悲劇をくぐりぬけた人間はつよい?
んなこたありえねぇ。
つよいヤツがつよい、そんだけだ。
それぞれの闘いに主題があり、ときにそれらは交錯する。
そこで矛盾したり、共鳴したり。
その瞬間を見開きで視覚的にえがく。
時空をねじまげ、ひき裂く。
モーゼが紅海を割るのをみたヘブライ人は、こんな気分だったろうか。
遠心分離機のごとく高速回転する物語をたばねる、ひとつの主題。
それはモチロン「死」で、10年前とおなじ。
カバー折返しにも「人類皆致死率1000%」とある。
桁がおかしい。
描き下ろしオマケ漫画は、カモ先生の幼少期の話。
クリスマスになにもらうか必死になやむ。
サンタさんがくれたのは両親の遺骨。
これって普通、重要イヴェントの直前とかにくる挿話では?
『ねじまきカギュー』に「オマケ」はない。
裏で糸ひく系女子、森センセもいよいよ前線にたつ。
連載開始から3年、よく我慢したものだ!
13巻と14巻をパラパラめくってみよう。
最新巻は黒い。
漫画は本来、黒くあるべきとおもう。
絵の密度、視線、出血、女の髪、本能的恐怖……。
ナカヤマ信者の末席をよごすボクでも、14巻はやや難解に感じた。
でもそうあるべきなのだから、しかたない。
ねじまきカギュー 14 (ヤングジャンプコミックス) (2014/04/18) 中山敦支 |
- 関連記事
- 中山敦支『ねじまきカギュー』14巻 Paint it black (04/19)
- 毒田ペパ子『てんぴん』 (04/18)
- カヅホ『カガクチョップ』 (04/16)
- ハナツカシオリ/タナカカナタ『ギリギリ魔法少女?法子』 (04/15)
- 荒川弘/田中芳樹『アルスラーン戦記』 (04/10)