*

スポンサーリンク

プロのエンジニアが教えるドラム、ベースの編集テクニック

公開日: : 最終更新日:2014/04/16 楽曲の制作過程を全公開

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第8弾です。

前回のボーカロイドの調教テクニック記事に続き、ドラムとベースの編集テクニックについての記事です!

前回までの記事はこちら
作曲やミックスの知識が身につく:楽曲制作のプロセスを全て公開します 1
ボカロの作曲やミックスに役立つ:楽曲制作のプロセスを全公開します 2
ギターのレコーディングのコツとは?楽曲制作のプロセスを全て公開します 3
ボカロ曲をミックスするときに知っておくべきコツとは?楽曲制作のプロセスを全て公開します 4
メジャーのロックバンドのギタリストが教える、作曲の極意とは?(5)
プロのエンジニアが教えるボーカロイドの調教テクニックとコツ(前編)(6)
プロのエンジニアが教えるボーカロイドの調教テクニックとコツ(後編)(7)

おふたりのプロフィール

【choro】
choro (x_choro_x)さん

http://choroidea.com/

2010年、ロックバンドJeeptaの
ギタリストとしてメジャーデビュー。
インディーズ時代から幅広く活動し、
年間90本以上のライブを敢行。

ROCK IN JAPAN FESをはじめとする
大型フェスにも多数出演。

独特なライブパフォーマンスに
定評があり、ブルース、ロックを基礎として
生み出されるペンタトニックフレーズは多彩。

【上原翔】
ShoUehara (upopo_sho)さん

http://shouehara.wordpress.com/

Recording / Mix / Mastering Engineer

2004年、レコーディングエンジニア目指して上京。
2005年、HAL Studioに入社し、DJ KrushやSPANOVAから、Superflyや西野カナなど、幅広いジャンルのセッションワークに数多く関わり、エンジニアリングを学ぶ。
2012年、HAL Studioを退社。
2013年、フリーランスとなり活動を始める。

最近では、クリエイターとして初の作品「Once and Again feat.Chihiro」を配信限定シングルで発表した。
レコーディングエンジニア上原翔、初作品をCCライセンス下公開(BARKS)

今回の対談のテーマとなった楽曲『全力症状』はこちら↓↓

choro

choroさん2
今回は上原さんにドラム、ベースの編集テクニックについて伺おうと思います!

まず、ドラムに関してですが、今回は僕が打ち込んだMIDI音源を元に上原さんのほうで改めて打ち込んでもらった形だと思うのですが、僕のMIDIデータを元にした理由と、実際にどのようにして打ち込み直していったのか教えてもらえますか?

ドラムエディタ1

こちらが元の僕が打ち込んだドラムです。

これは僕の打ち込んだ1サビ部分のドラムのMIDIデータです。

下の棒状のパラメーターがベロシティ(音量)の大小を示しているのですが、生のドラムっぽさを出すために、こんな感じで1音1音ボリュームに強弱をつけています。

これは普段からやっている作業です。後は演奏データのみで、この状態で上原さんに渡してます。

上原

上原さん2
choroさんからMIDIデータでもらったので、僕の環境でもMIDIデータとしては全く同じものになっています。choroさんからもらったデモの段階で、フレーズとか、強弱という部分でかなりうまくドラムが打ち込んであったんですよね。これは僕が一から打ち込んでも敵わないなと(笑)

ただ、音色がもう少しこちらで差し替えた方が良さそうだったので、MIDIデータ自体はそのまま使って、音色を差し替えるという方向に決めました。

choro

choroさん2
なるほど。となると音色でドラムを生っぽくしていく作業があったと思うのですが、具体的にどんなテクニックを使って作業しているんでしょうか?

上原

上原さん2
ドラムを生っぽくという事だったので、単純に生音に近い音色にまず差し替えました。ベロシティ等は大きく変えていません。MIDIではこういったフレーズだけはそのままで音色だけを差し替える事が出来るので便利ですよね。

音色はもう10年以上前のサンプリング音源なんですが、クリプトン社のDRUM SERIES 1 / GIGAというものから選びました。現在は廃盤になってるのでもう手に入らないかもです。

DRUM SERIES 1 / GIGA

今はもっと生音の再現がより精巧なドラム音源があったりするんですが、そういったものを僕は持っていないので、現状持っている音源では上記が一番生っぽい音源です。

下記が上原が音色を差し替えたドラムです。

choroさんが打ち込んだドラムでもミックス次第でなんとかなりそうな感じでもあったのですが、生っぽさという面ではやはり音色を差し替えた方が良さそうでしたね。

それで、ロックでの生ドラムとなってくると、やはり荒々しさというのが重要になってきます。これはミックスの部分での話にもなってくるのですが、そういった雰囲気を出すにはアンビエンスという部屋鳴り感が重要になってきます。

通常生ドラムの録音では、オンマイクと言われるスネアやキック、タムなどに数センチの距離で立てます。その他に、部屋の鳴りを集音する為にドラムから距離を離して立てるマイクをアンビエンスと呼んでいます。

僕の場合は、そのアンビエンスで録れた部屋鳴りの音にもうかなり深くコンプレッサーをかけてもの凄く荒々しい音にするんですね。その音を各オンマイクの音との混ぜ具合で荒々しさを調整していきます。

でも今回の場合は打ち込みでそのアンビエンスが無いので、疑似的に再現したものを作りました。

どうやって作ったかと言うと、かなり仕組みは単純なんですが、各それぞれの単音をまとめてステレオ2ミックスにします。それの2ミックスでまとまったドラムのタイミングを単音の音源より少し遅らせてみました。

音が空気中を伝わる速度は結構遅いので、オンマイクに比べてアンビエンスのマイクで録れる音は少し遅れて録音されるんですね。もうほぼ無理やりですが再現してます。

choro

choroさん2
実際に「全力症状(ZENRYOKU syndrome)」のパート別mp3をダウンロードしてファイルを見させてもらったんですが、実際の生ドラムを録った時と同じようにトラックが再現されてビックリしました。

アンビエンスの再現もそうですが、スネア、シンバルなど別々のトラックになっていて、これも生の録音では当たり前のことですが、打ち込みでは1トラックで編集することが普通なのでビックリしました。

全力症状(ZENRYOKU syndrome)ダウンロード

上原

上原さん2
それにコンプレッサーもかなり深くかけて荒々しくしてます。その疑似的に再現したアンビエンスの音が下記です。

この音の混ぜ具合でロックドラム感を調整していきます。

これが実際にアンビエンスも混ぜて、音作りもしたドラムです。

これは、完成品のドラムだけを抜き出している状態なんですが、ミックス作業でキックがどうも打ち込みドラムでは低音が足りなくて軽かったので、以前僕が実際に録音したバンドのドラムキック素材を持ってきてそれに差し替えました(笑)

ちなみに、BFDのような生ドラムの音を再現してマイクの位置やドラムの音を細かくいじれるようなドラム音源だと上記のような音をずらすようなアンビエンスの作り方をしなくても、ソフトウェアからアンビエンスが作れたりするので、今回やった方法はかなりイレギュラーなやり方ですね。

BFD3 リンク

choro

choroさん2
なるほど。ありがとうございます。
次に、ベースについてなんですが、ベースについてはMIDIデータではなく、僕のほうで作ったオーディオデータをそのまま使って頂いた形ですが、その理由は何なのでしょう?

ドラムエディタ2

ドラムエディタ3

これが上原さんに渡した元のベースです。

上の画像が、僕の打ち込んだ1サビ部分のベースのMIDIデータです。ベースもドラムと同様に、ベロシティを1音1音変えています。

下の画像が、MIDIデータにプラグインしたエフェクターです。MIDIデータは演奏データであって、「音」ではないので、このようにピックベースの音源を選び、ベースの音が出るようにします。アンプシュミレーターでさらにアンプを通した音を再現、コンプレッサーも音作りで使ってます。

上原

上原さん2
ベースを差し替えなかったのは、いくつか僕の持ってるベース音源で差し替えてみたのですが、いまいち合う音がなくて、結局一番良かったのがchoroさんが作ったベースの音が一番良かったという事です。

こちらが音作りをしたベースです。

ベースやドラムの音作りに関してはまたミックス編で詳しく説明できればと思います。

choro

choroさん2
ありがとうございます。
では、次回またミックスについてのお話で詳しくお伺い出来ればと思います。よろしくお願いします。

最後に

いかがでしたでしょうか?

ミックス編の記事については4月18日(金)に公開予定です。こちらも併せてチェックしてみてください!

また、前回の記事にも記載しましたが、今回のテーマ楽曲『全力症状』は無料ダウンロードが可能です。

パート別「歌ってみた」、「演奏してみた」はもちろん、歌詞・メロディ・編曲をアレンジした作品、本作品を使用したムービー制作など、幅広い用途で利用可能なので、ご興味のある方は下記のページでダウンロードしてみてください!

全力症状(ZENRYOKU syndrome)ダウンロード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

↓↓『YouTube再生回数増加プロジェクト』のチャンネルはこちらです!

スポンサーリンク

関連記事

choroさんと上原さん2

作曲/ミックス/レコーディングのコツを勉強したい人のための記事まとめ

デモ音源から完成版までの制作過程を全て公開する連載記事。今回はそのまとめ編です! これまでの4

記事を読む

choroさんと上原さん2

プロのエンジニアが教えるボーカロイドの調教テクニックとコツ(前編)

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第6弾です。 今回は上原さんにボーカロイ

記事を読む

choroさんと上原さん2

Mixの基礎:最も重要なバランスの組み立て方と流れの作り方

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第9弾です。 前回のドラム、ベースの編集

記事を読む

choroさんと上原さん2

ボカロの作曲やミックスに役立つ:楽曲制作のプロセスを全公開します 2

前回の流れはこちら↓↓ ボカロの作曲やミックスに役立つ:楽曲制作のプロセスを全公開します 1

記事を読む

choroさんと上原さん2

ボカロ曲をミックスするときに知っておくべきコツとは?楽曲制作のプロセスを全て公開します 4

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第4弾です。 今回はいよいよ、ミックスの

記事を読む

choroさんと上原さん2

作曲やミックスの知識が身につく:楽曲制作のプロセスを全て公開します 1

今回はなんと!デモの段階から楽曲が完成するまでの過程を全部公開する記事です。 Jeeptaギタ

記事を読む

choroさんと上原さん2

ギターのレコーディングのコツとは?楽曲制作のプロセスを全て公開します 3

デモ音源から完成型まで。今回は レコーディング現場潜入レポです! Jeeptaのギタリストc

記事を読む

choroさんと上原さん2

メジャーのロックバンドのギタリストが教える、作曲の方法とコツ

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第5弾です。 今回はJeeptaのcho

記事を読む

  • 金野和磨。1987年生まれ。学生時代に吉井和哉やノエルギャラガーに毒され音楽漬けに。人材サービス会社、Frekul勤務を経て現在はインフォバーンで編集やディレクションを担当。日本の音楽業界にエージェントを普及させるため、音楽ブログ『マナスタ!(学びのスタジオ)』等を運営。YouTubeチャンネル『海保けんたろーのドラム教室オンライン』&『Choroidea TV』(バンドマン全力坂etc…)のディレクター。 プロフページ>『金野和磨とは誰か?』

choroさんと上原さん2
Mixの基礎:最も重要なバランスの組み立て方と流れの作り方

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第9弾です。

募集
#バンドマン全力坂 挑戦者求む!

4月8日はバンドマン全力坂のロケハンでした! 【坂を走るだけの簡

Mikeさん バンドマン全力坂2
#バンドマン全力坂 撮影11日目のダイジェスト!

本日(4月13日)もバンドマン全力坂の撮影日でした! 累計撮影回

record マナスタ!
曲はいいのに人気が出ないのはなぜ?広告代理店のプロデューサーさんに聞いてみた(前編)

先日、某大手広告代理店のプロデューサーの方に音楽業界やバンドの活動につ

choroさんと上原さん2
プロのエンジニアが教えるドラム、ベースの編集テクニック

デモ音源から完成版まで。楽曲の制作過程を公開する記事の第8弾です。

ライト イメージ
バンドマン/アーティストにとって有効なアンケートの取り方とは?:第10回マナスタLIVE!アーカイブ(4/2)

4月2日(水)のマナスタLIVE!を見てくださった方々、ありがとうござ

http://manasuta.com/wp-content/uploads/2014/04/森田くみこ-バンドマン全力坂.png
#バンドマン全力坂 撮影10日目のダイジェスト!

本日(4月5日)もバンドマン全力坂の撮影日でした! 前回の撮影か

→もっと見る

  • follow us in feedly
PAGE TOP ↑