【コラム】責任持つべき人間が真っ先に逃げ出す国

最後まで残るべき船長が船と乗客を捨てて真っ先に脱出
誤った案内放送で犠牲増やす

 旅客船「セウォル号」の惨事を報じた本紙電子版の記事に、ある読者がこんなコメントを付けた。胸を打つ内容なので、そのまま引用する。

「17-19世紀に英国が帝国を建設した際、船乗りには大原則があったといいます。船が沈むときには女性と子どもを先に逃がし、救命ボートの座席が残っていたら男性を逃がし、最後に船員が逃げるというものです。この原則に背いたらその場で銃殺され、船員たちは死の恐怖に耐えるため、沈む船の甲板に整列して歌を歌ったといいます」

 船員たちが歌を歌って乗客を送り出す、というところが胸を打つ。この大原則は、1912年の海難事故を題材にした映画『タイタニック』でもリアルに描かれている。大西洋を横断中だった客船「タイタニック」号が氷山に衝突すると、英国人の船長は「女性と子どもから救命ボートに乗せるように」と指示した。健常な男性は後回しだった。その結果、ケイト・ウィンスレットは生き残り、レオナルド・ディカプリオは命を落とした。最後まで船を守った船長は「英国人らしく行動せよ(Be British)」と船員たちを激励し、船長と船員は全員沈む船と共に死亡した。

 女性と子どもを優先する理由は、弱者だからだ。20世紀初めまで世界の秩序を主導した英国は、強者が弱者に配慮するのが「文明」と考えた。船の中で最も力を持っているのは、船の事情をよく知る船員だ。(1)女性・高齢者(2)男性(3)船員の順で定められた脱出の順位は、100年前であろうと今であろうと変わらない。世界共通の客船避難マニュアルにも「船員は最後まで乗客を援助すべき」と書いてある。しかし「セウォル号」では、順序が逆だった。「文明」ではなく「野蛮」な状況だった。

 今回の惨事を見ていて最も怒りを感じたのは、乗組員と生徒たちの救出率の差だ。乗組員は69%(29人中20人)の生存が確認された。しかし修学旅行中だった安山・檀園高校2年生の救出率は23%にすぎない。ほとんどの生徒は、乗組員が船を去っていると知らないまま、右往左往して惨事に遭った。

 関係者の証言を総合すると、乗員乗客475人のうち、脱出第1号だった可能性が高いとみられるのは船長だ。船長は、午前9時ごろに遭難信号を発信してから、わずか30分で船を捨てた。船員の多くも同様だった。脱出の列の最後にいるべき船員たちが、一番先頭にいたわけだ。船が完全に沈没したのは、船員たちが逃げ出してから1時間50分もたった後のことだった。乗組員には、乗客を避難させる時間が2時間近くもあった。しかし船員たちは、そうしなかった。

朴正薫(パク・チョンフン)デジタル担当副局長
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