欧州とロシアのはざまに高まる緊張が、外交解決に向かうのか。ウクライナ情勢の改善は、ここからが正念場である。

 米国とロシア、欧州連合、ウクライナの外相級が会談し、事態の沈静化で合意した。

 同国の東部では、公庁舎などを占拠した親ロシア派勢力に対し、国軍が強制排除に乗り出した。内戦にも陥りかねない危機である。

 その瀬戸際で、武装勢力の退去や暴力停止など緊急行動の必要性で4者が一致した。打開へ向けた一筋の光明といえよう。

 共同声明は、欧米が問題視するロシアのクリミア編入にはあえて言及していない。逆にロシアが求めたウクライナの「連邦化」も盛り込まれなかった。それぞれが譲歩した形だ。

 ウクライナの暫定政権と、その正統性を認めてこなかったロシアが初めて対話の席についたこと自体、重要な一歩である。

 ウクライナは、来月の大統領選や憲法改正などを経て国家再建に進まねばならない。ロシア系住民が安定した暮らしを営める融和の社会づくりは、ロシアにとっても有益なはずだ。

 ロシアでは株価と通貨が下落し、輸入品の値上がりが市民生活をじわじわと苦しめている。工業地帯であるウクライナ東部に混乱が広がれば、取引が多いロシア経済へのさらなる打撃は避けられない。

 エネルギーや金融でロシアと深く結びつく欧州でも、さらなる対ロ制裁が自国経済にはねかえる心配が高まっていた。

 冷戦時代と異なり、世界のどの国も地域も経済面で互いを必要としている。その相互依存の構図が、事態の悪化を防ぐ力学になりつつある。東西対決の時代ではないのだ。

 今なすべきは、合意した言葉を実行に移すことだ。

 まず求められるのがロシアの行動だ。速やかに国境に集結させた軍部隊を撤収させねばならない。親ロシア派に武装を解かせるよう働きかけるべきだ。

 依然不穏なのは、ロシアのプーチン大統領の言動である。

 外相級協議の直前、「私にはウクライナに武力を行使する権限がある」と述べた。国際社会は引き続きロシアへの警戒を怠ってはならない。

 ウクライナ暫定政権が果たすべき課題も大きい。合意は、すべての国内勢力による対話も求めている。東部の自治権拡大やロシア語を話す住民の保護などを進め、東西の亀裂を着実に修復してゆく必要がある。

 緊張緩和への道のりはスタート台に立ったばかりだ。