k_airyuuのブログ
k_airyuuさん

2014年04月17日 12:00

参加者として「後の祭り」を考える

先日下のようなエントリーを書きました。

復興予算と電子書籍の未来
https://kacco.kahoku.co.jp/blog/k_airyuu/49218

2012年、復興支援の名の下に東北中心に電子書籍を作る「緊デジ」という補助金事業があったのですが、その問題点を河北新報が報じていて、それについて触れました。

その続報が出ていました。

コンテンツ事業、電子化一部完了せず 補助金適正化法抵触か
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140416_73013.html

制作会社、10カ月で6万冊「無理」 震災復興コンテンツ事業
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140416_73026.html

作業内容の見積もりが甘く(もっと簡単にできると踏んでいた)、また作業開始を含め日程が大幅に遅れたため、年度内に完了すべき電子書籍の制作作業が、期日までに終わらなかった、というのが概要です。

当時所属していた会社で、「東北の制作者」として参加していた自分にとって、記事の内容自体は既知の事実でしたが、いまなお電子書籍の仕事に携わる者としては電子書籍に対するイメージダウンが心配なところです。まあ事実なので仕方ありませんが…。

今後事実関係の究明は報道機関の方の手により進むでしょうからそれはお任せするとして、このエントリーでは「ではどうすれば良かったのか?」を「後の祭り」として考えてみようと思います。なおこれは「制作する立場」の一個人の考えであって、関係者全員の総意にはなり得ないことは自覚した上での内容であるとご理解下さい。

最初に制作ノウハウの習得が必要だった
事業の見通しの甘さが問題として指摘されていますが、そもそも緊デジ開始時点でこの事業に確固たる見通しを立てるのは非常に困難だったと思います。なぜなら「何万という単位の紙の本をいっぺんに電子書籍化する」という作業を経験したひとが皆無だからです。
であれば、その見通しがしっかり立てられるくらいの制作ノウハウを、その事業を先導する組織自体が充分習得し、かつ制作に参加する会社とそのノウハウを共有できるようにしてから事業を始める必要があったと思います。

縦割りによる分業という方法もあった
もし上記のように準備に時間を掛けられなかったのであれば、事業を「縦方向」に展開すべきだったのではないかと思います。
具体的には、当時それなりに制作ノウハウがあった会社(東京の会社)の下に、ノウハウのない会社を、下請けでもいいので「下に入れて」作業する。※私の所属していた会社をはじめ、東北の地場から参加した制作会社はどこも大したノウハウは持ってなかったはずです。そのなかで制作ノウハウを「上の会社」から「下の会社」へ、作業の中で伝えて行く。また、この形を取ることにより「下の会社」は自分たちの得意分野に特化した作業のみ請け負う、ということも可能だったと思います。

著者・出版社の「ボランティア的な参加形態」を取れなかったか?
推測ですが「震災復興を唄った事業で作った電子書籍データ。それを販売して利益を得る」ということに対し、出版社や著者の方は居心地の悪さを感じたのかもしれません。これが当初緊デジでの電子化を希望する本が集まらなかった原因の一つのような気もします。
であれば最初から「緊デジで作った電子書籍の売り上げは全額は被災地に寄付されます」などとすれば良かったのではないかと思います。
自分の著作の売り上げが、被災地の復興に役立つと聞いて協力を拒む著者はいないと思います。出版社ももっと積極的に参加できたかもしれません。紙の本で同じことをしようとしたら印刷費や材料代や流通費用など、コストがいろいろ大変ですが電子書籍はそれがありません。ここに「電子書籍であること」の意義も見いだせます。

終わってしまった事を「考える意味」
終わってしまった事業について「たられば」を言うのは、あまり意味のないことかもしれませ。また私自身が緊デジに対して「恨み節」のようなことを申し述べたい訳でもありません。
この緊デジの経緯から「被災地関連の補助事業の難しさ」についてより多くのひとが考え、そこから教訓を学ぶ事が「終わってしまった事」について考える意味だと思います。

この補助事業の公募に係る募集要領の文書には下記のような文言がありました

事業の目的
東北関連情報の発信、被災地域における知へのアクセスの向上、
被災地域における新規事業の創出を促進し、
被災地域の持続的な復興・振興や我が国全体の経済回復を目的とする。(一部引用)

引用元(pdfです)
http://www.meti.go.jp/information/downloadfiles/c111202a01j.pdf

上記の事項が本来「達成すべき目的」であったはずなのですが、それがいつのまにか「6万冊の紙の本を電子化する」に変ってしまい、そしてそれを達成するためにあらゆる手段を講じた結果、

  • 被災地域の知へのアクセス にも
  • 被災地の新規事業の創出 にも
  • 被災地域の持続的な復興・振興 にも

あまり関係ないの事業になってしまいました。

今後も様々な分野で震災復興関連の補助事業は続いていくと思います。
そのときに同じようなことが起きる可能性はどの事業にもあると思いますので、そうならないよう今回の緊デジの事例から学び、ひいては被災地復興や経済全体にプラス効果のある事業が多く行われる事を願います。

コメント(0)

コメントを書く