スマートフォンで全ての買い物ができる時代に、なぜカタログが郵送されているのか。
このEコマースの時代に、伝統的なマーケティングスタイルが生き残り、重要でクリエーティブな役割を果たしている。今日、カタログは商店のショーウインドーのように顧客を誘惑するものであり、商店街をぶらつくのと同じようにインスピレーションの源となっている。消費者が気に入ったページに印を付け、それからネットショッピングをしたり、店舗を訪れたりすると期待されている。
今日のカタログは小売業者が手掛ける全ての商品を盛り込んだ、電話帳のような大型のものではない。今ではページ数や説明が少ない一方で、より大きな写真とライフスタイルをイメージしたものが増えた。
小売業者にとっては、写真の費用は高く、郵送料も上昇しており、消費者のインスピレーションを刺激することは高くつく。またカタログは何カ月も前に制作しなければならず、小売業者は一定のトレンドや商品に縛られることになる。他方、ネットでは数分の内に内容をアップデートすることができる。
そうではあっても、売り上げを伸ばす可能性があることから、印刷されたカタログには新たな関心が持たれるようになった。よくフィットするパンツをウリにする紳士衣料ブランドのボノボスなど当初からネットで始まった一部の小売業者も、カタログを利用している。以前からカタログを使っている多くの伝統的な業者は、これまで通りカタログに依存している。
ポッタリーバーンなど、カタログを使っている7つのブランドを持つウィリアムズ・ソノマの最高マーケティング責任者パット・コノリー氏は「カタログは依然としてマーケッティングで、とてもとても重要な部分だ」とし、消費者は「これを見てアイデアや買う気を起こす。うまくやれば、消費者はこれまで欲しいとも思わなかった商品にも心が動かされることがある」と述べた。
同社はカタログの写真用に2000戸の民間住宅のデータベースを持っている。同社のマーケティング予算の半分以上はカタログ制作とその郵送に充てられている。
米ダイレクト・マーケティング協会によると、昨年のカタログ発行部数は119億部で、過去数年で初めて上向いた。ただ、ピークだった2007年の196億部に比べるとはるかに少ない。08年のリセッションでカタログを発行する業者は効果のない宛先を削り、どのように、いつ郵送するかについてもノウハウを向上させた。
ボノボスは1年ほど前に、少数の既存顧客と有望な消費者宛てにテストカタログを郵送した。同社はその結果を見て、あと何回かトライし、その都度部数を増やしていった。マーケティング担当のクレーグ・エルバート副社長によると、今ではネットで初めて同社製品を購入する消費者の約20%はカタログを見てからそうしているという。その支出額はカタログを見なかった新規のネット購入者の1.5倍になる。
ディスプレー上の広告や電子メールといった、新規の顧客をつかむためのネットでのツールはしばしば、画像1件あるいはテキスト1行となる。エルバート氏は「カタログでは人々の注意を引き付けるための余地がもう少しある」とし、「ブランドストーリーについて少しばかり語ることができる」と話した。
ボノボスはカタログの説明文を意図的に少なくし、大きさや注意事項などを省いている。これらの情報はネットで見ることができるとの考えからだ。
同社は、カジュアルシャツの力強い販売の要因は何か、など販売パターンを理解するために、カタログへの反応を研究している。最初のカタログは昨年3月に出たもので、この中でモデルは白のジーンズに青と緑のチェックのシャツを着ていた。多くの人は両方を注文してきた。その結果、同社はいつでも一部の衣料ではなく、モデルの全体像を示すようになった。
カタログの発行までには企画、生産に何カ月もかかる。ギャップの一部門である、スポーツウエアのアスレタにとってはこれが季節ごとの課題だ。アスレタのカタログは、スポーツウエアをまとい、スポーツ用具を使っているモデルのアクションショットを載せている。冬のカタログ写真は7月に撮影しなければならないため、適切な撮影場所を見つけることが不可欠であり、同時に困難だ。
アスレタのマーケティング担当副社長テス・レーリング氏は「ヨガ道場を冬場のように見せかけるのは簡単だ」としながらも、しかし、スキーだったら「われわれは本物の雪がある所まで行く必要がある」と語っている。アスレタ・チームは今度は数カ月内にニュージーランドまで行く予定だ。
カタログの長いリードタイム(完成するまでの所要時間)によって、ブランドは特定の商品に縛られることになる。アスレタは4月のカタログで青と黄色のランニング用タイツを特集したが、タイツが店舗に届くまでに10日間の遅れが生じた。カタログを見た顧客はまだ到着していない品物を求めて店に行ったのだ。レーリング氏は「これには失望した」としている。ただ、タイツが棚に並ぶとその売れ行きは好調だったという。
多くの小売業者は、店舗とネットでの動きの変化によって、カタログがいつ顧客の郵便受けに届いたかを正確に知ることができる。ニーマン・マーカスの店舗・ネット担当社長ジョン・コリル氏は「(カタログが届くと)売り上げはすぐに増加する」と述べた。カタログのハロー効果(魅力的な商品の「後光」が他の商品も良く見せる力)はカタログ内容を越えて、その会社のより広範な商品にも及ぶ。
コリル氏は、消費者は「カタログの表紙にあるものを買わないかもしれない。カタログがカバーしているカテゴリーのものも買わないかもしれない」とし、「しかし、買いたいという気持ちにさせるのはこのインスピレーションの瞬間なのだ」と述べた。
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