ウォールストリート・ジャーナルに米国の投資銀行における株式のブロック・トレーディングが空前のブームになっているという記事が掲載されました。
ここで言うブロック・トレーディングとは一度に数百万株にものぼるまとまった株数の株式を売り手から投資銀行が買い取り、それを一般投資家に売り捌く行為を指します。
この場合、投資銀行は先ずその株式を買い取ります。大きいディールの場合、一回で1,000億円もの在庫リスクを取るわけです。一旦、投資銀行が全部買い取ってしまうことからボート・ディール(Bought deal)と呼ばれることもあります。そして次の日のマーケットが開くまでに、在庫にした株式を投資家に片っ端から電話して、転売するわけです。
ウォールストリート・ジャーナルの記事によると今年は現在までに132億ドルものブロック・トレードが敢行されたそうです。

件数ベースでは、年初から現在までで既に去年の実績を上回っています。

投資銀行は、ある銘柄のその日の引け値より数パーセント安い値段で、売り手からまとまった株数を買い取ることに合意します。このディスカウントをグロス・スプレッドと呼ぶこともあります。
ここで言うブロック・トレーディングとは一度に数百万株にものぼるまとまった株数の株式を売り手から投資銀行が買い取り、それを一般投資家に売り捌く行為を指します。
この場合、投資銀行は先ずその株式を買い取ります。大きいディールの場合、一回で1,000億円もの在庫リスクを取るわけです。一旦、投資銀行が全部買い取ってしまうことからボート・ディール(Bought deal)と呼ばれることもあります。そして次の日のマーケットが開くまでに、在庫にした株式を投資家に片っ端から電話して、転売するわけです。
ウォールストリート・ジャーナルの記事によると今年は現在までに132億ドルものブロック・トレードが敢行されたそうです。
件数ベースでは、年初から現在までで既に去年の実績を上回っています。
投資銀行は、ある銘柄のその日の引け値より数パーセント安い値段で、売り手からまとまった株数を買い取ることに合意します。このディスカウントをグロス・スプレッドと呼ぶこともあります。
今年のこれまでのグロス・スプレッドの平均は3.2%で、これは適正な水準だと言えます。

この手の買い取りディールではどれだけのディスカウントを売り手に承諾してもらうか? という値段交渉の巧拙が、取引成立のカギになります。
もちろん、売り手の立場からすればディスカウント幅が小さいに越したことはありません。
しかし投資銀行の立場からすれば、ディスカウント幅が小さいということは在庫の「仕入れ値」が高いことを意味し、一般投資家に転売を試みる際、在庫が捌けない原因になりかねないのです。
従って投資銀行の立場からすればディスカウント幅が大きいほど安全ということになります。
このディスカウント幅は、その出物の株式としての魅力や流動性(=日頃の出来高)などにも影響されます。またデリバティブなどによるヘッジがしやすいかどうかも重要な考慮点となります。
シーズンド・ストック(=新株ではなく、既に市場に出回っている株式)の場合、売り出し目論見書を刷り、ロードショウに出る手間がかからないため、投資銀行部門のアナリストの労働負担もありません。つまりコーリング・オフィサー(=事法マン)の胆力と交渉力だけが勝負になるわけです。
一旦、ディスカウントで売り手からそのブロックを買い取ってしまえば、あとはその在庫を幾らでオファーするか(=通常、仕込み値段より少し高い金額になります)は投資銀行が勝手に決めればよいことです。だからブロック・トレードのマージンは通常の株式の委託注文のビジネスより遥かに利幅の大きい仕事と言えます。
このブロック・トレードを販売した際のセールスマンにつくセールス・クレジット(=手数料)は、通常の委託手数料より大きいので、セールスマンは競ってブロック・トレードのハメ込みをします。さらに通常の新規株式公開(IPO)や公募増資(セカンダリー・オファリング)のようにブックビルディング(=需要をまず集計し、それから丁寧にどの機関投資家に何株割り当てるかを決める作業)が無い「早い者勝ち(First come, first serve basis)」です。このためブロック・トレードが行われている朝の証券会社のトレーディング・フロアは、ハチの巣をつついたような騒ぎになります。
しかしブロック・トレードは、仕込む株の市場性、言い換えれば「人気」を読み間違えると、大変なリスクを抱え込むことになります。さらにコミットメント・ミーティングで引受部長、株式部長などがリスクを取ることに対しOKを出すとはいえ、ディールの直前までごく一握りの担当者のみしかその大玉が出てくることを知らないわけで、極秘のうちに商談を進めなければいけません。
担当者の頭の中には、その株の現在の水準という問題だけではなく、どの顧客が、どのくらいそのブロックを買う意向があるか、その需要地図がしっかり入っている必要があるのです。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
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しかし投資銀行の立場からすれば、ディスカウント幅が小さいということは在庫の「仕入れ値」が高いことを意味し、一般投資家に転売を試みる際、在庫が捌けない原因になりかねないのです。
従って投資銀行の立場からすればディスカウント幅が大きいほど安全ということになります。
このディスカウント幅は、その出物の株式としての魅力や流動性(=日頃の出来高)などにも影響されます。またデリバティブなどによるヘッジがしやすいかどうかも重要な考慮点となります。
シーズンド・ストック(=新株ではなく、既に市場に出回っている株式)の場合、売り出し目論見書を刷り、ロードショウに出る手間がかからないため、投資銀行部門のアナリストの労働負担もありません。つまりコーリング・オフィサー(=事法マン)の胆力と交渉力だけが勝負になるわけです。
一旦、ディスカウントで売り手からそのブロックを買い取ってしまえば、あとはその在庫を幾らでオファーするか(=通常、仕込み値段より少し高い金額になります)は投資銀行が勝手に決めればよいことです。だからブロック・トレードのマージンは通常の株式の委託注文のビジネスより遥かに利幅の大きい仕事と言えます。
このブロック・トレードを販売した際のセールスマンにつくセールス・クレジット(=手数料)は、通常の委託手数料より大きいので、セールスマンは競ってブロック・トレードのハメ込みをします。さらに通常の新規株式公開(IPO)や公募増資(セカンダリー・オファリング)のようにブックビルディング(=需要をまず集計し、それから丁寧にどの機関投資家に何株割り当てるかを決める作業)が無い「早い者勝ち(First come, first serve basis)」です。このためブロック・トレードが行われている朝の証券会社のトレーディング・フロアは、ハチの巣をつついたような騒ぎになります。
しかしブロック・トレードは、仕込む株の市場性、言い換えれば「人気」を読み間違えると、大変なリスクを抱え込むことになります。さらにコミットメント・ミーティングで引受部長、株式部長などがリスクを取ることに対しOKを出すとはいえ、ディールの直前までごく一握りの担当者のみしかその大玉が出てくることを知らないわけで、極秘のうちに商談を進めなければいけません。
担当者の頭の中には、その株の現在の水準という問題だけではなく、どの顧客が、どのくらいそのブロックを買う意向があるか、その需要地図がしっかり入っている必要があるのです。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
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