従軍慰安婦問題をめぐり、日本と韓国の外務省の局長がソウルで話し合った。

 互いの主張には隔たりがあり、今回は基本的な立場の確認にとどまった。次回は来月に東京で開くという。

 解決への道のりは曲折も予想されるが、安倍政権と朴槿恵(パククネ)政権のもとで直接協議が始まったことを歓迎したい。

 この問題を放置できないとの認識を両政権が確認し合った。少なくとも、そこが出発点だ。両政府は、この協議をきっかけに、総合的な関係改善の足がかりを築いてほしい。

 今回の協議の伏線は、先月、オランダで開かれた日米韓首脳会談にあった。オバマ米大統領が仲介し、就任から1年以上実現していなかった日韓両首脳の直接対話ができた。

 この首脳会談と、いわばパッケージの形で進められてきたのが今回の局長級協議である。

 調整は難航した。韓国側は慰安婦問題にしぼった話し合いを求めた一方、日本側は竹島問題や対北朝鮮政策なども協議すべきだと主張した。

 開催にこぎつけたのは、日韓の和解を強く求めるオバマ氏が来週、両国を訪れることを双方が意識したためだろう。

 結局、初回の協議は慰安婦問題を集中的に話し合ったが、次回以降は幅広いテーマが取り上げられる見込みだという。

 慰安婦問題で日韓がもっとも対立するのは日本の「責任」をどこまで認めるかだ。

 韓国政府は、市民団体などの強い主張を背景に「法的責任」の認定を求めるが、日本側は国交正常化の際に「法的には解決済み」と主張する。

 ただ、日韓ともに前政権だった一昨年秋に、政治決着の間際までこぎつけたことを、双方の当事者らが証言している。

 日本側は当時、駐韓大使によるおわびや、すべて政府資金による被害者支援を提案した。

 日本の衆院解散で実現しなかったが、韓国側は朴政権下でも同様の提案を求めてきた。

 安倍政権も人道的な措置の必要性は認め、韓国側と水面下の折衝を続けている。

 日本政府は今後も誠意をもって可能な限りの措置を探るべきだ。一方の韓国政府も市民団体との対話を進め、現実的な解決策に対する国内世論のとりまとめに取り組んでほしい。

 日韓の間にはこの問題以外にも多くの懸案が横たわる。両国のトップは、対話のチャンネルを広げ、真の未来志向の日韓関係を切り開く指導力を発揮してもらいたい。