公立小学校に塾の指導法を導入へ 佐賀4月17日 18時50分
佐賀県武雄市は、来年の春から公立の小学校に民間の学習塾の指導法を取り入れ、官民一体で授業に取り組むと発表しました。
文部科学省によりますと、官民一体で公立学校の授業に取り組むのは初めてとみられます。
これは17日に、武雄市と、さいたま市に本部のある「花まる学習会」が文部科学省で記者会見をして明らかにしました。
「花まる学習会」は首都圏を中心に学習塾を展開していて、大きな声を出したり体を動かしたりしてゲーム感覚で授業を進めることで知られています。
武雄市はその指導法を来年の春から市内の一部の公立小学校に取り入れ、官民一体で授業に取り組むということです。
授業をするのは学校の教員で、学習指導要領に沿ってこれまでどおり検定を受けた教科書を使いますが、副教材として塾の教材を活用することも検討するということです。
今後、教員の研修を重ね、ことしの夏から1校で試験的に授業を始めることにしています。
文部科学省によりますと、官民一体で公立学校の授業に取り組むのは初めてとみられます。
記者会見で武雄市の樋渡啓祐市長は、「公教育の優れたシステムに民間のノウハウを大胆に取り入れ、子どもたちがワクワクドキドキして楽しく学べる新しい公教育を作りたい」と話していました。
また、花まる学習会の高濱正伸代表は、「正しく早く解く力ではなく、問題を設定して人を説得できる力を育てていきたい。厳しい競争の中で培ってきた民間の力を生かしたい」と話していました。
文部科学省「成果を期待したい」
今回の武雄市の取り組みについて文部科学省は、「塾の関係者が教員研修の講師になるケースはあるが、学校の授業に官民一体で取り組むのは聞いたことがない。先駆的な取り組みの1つとして成果を期待したい」と話しています。
武雄市のねらいは
武雄市は地域の魅力を高める政策の1つに「教育の改革」を掲げ、取り組みを進めています。
去年10月、東京・杉並区の中学校で校長を務めたリクルート出身の代田昭久氏を市の教育監に任命。来月から市内のすべての小学校で「反転授業」と呼ばれる新しいスタイルの授業が行われることになっています。
反転授業は、「学校は基礎的な学習の場」、「家庭は復習や発展学習の場」となっていた役割を逆転させようというものです。
家庭でタブレット端末を使って予習し、学校ではより発展的な内容を学びます。
武雄市はこの取り組みのために1億2000万円をかけておよそ3000台のタブレット端末を購入し、今月、市内のすべての小学生に配付しました。
武雄市は「これからの時代を生き抜く力」を重視する教育に転換することで、首都圏など都市部から移り住んでくる人を増やして地域の再生にもつなげたいとしています。
教員の間には戸惑いも
学習塾の指導方法を学校に取り入れることについて、教員の間では戸惑いが広がっています。
「花まる学習会」との連携をことしの夏から先行して行う市立武内小学校では16日、教員に概要が説明されました。
教員からは、「これまで研修を重ねて指導力をつけてきた自負がある。新しいものを取り入れればよいわけではない」という反発や、「塾の指導法が公教育の場に入ってくると学校と塾の立場が逆転するという恐怖感がある」といった声が上がりました。
教務主任の女性教諭は「現段階では戸惑いの気持ちが大きい。民間の塾のやり方が公教育に合うのかどうかは未知数で、そのまま取り入れるのは無理だと感じている」と話していました。
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