特定秘密保護法の恣意(しい)的な運用を防ぐために、国会はどのような役割を果たすべきか。

 自民、公明両党はプロジェクトチームをつくり、国会に設置する監視機関について与党協議を始めた。

 全国100を超える地方議会が秘密法廃止を求める意見書を可決しており、同法への不安が根強いことを示している。

 国会の監視機関にできるだけ強い権限を持たせ、少しでも不安を取り除くことが、強引に法律を成立させた与党が果たすべき、せめてもの責任だろう。

 ところが、自民党案は、監視に対してあまりにも腰が引けていると言わざるを得ない。

 衆参両院に「情報審査会(仮称)」を新設。国会の常任・特別委員会が政府に対して資料の提出を要求→政府が「特定秘密が含まれる」として提出を拒否→拒否された委員会からの要請を受けた場合に審査会を開き、政府に秘密の提供を要求しチェックする――という想定だ。

 当初案にあった「特定秘密の指定の適否は判断しない」との文言は、党内外からの異論に配慮し削除された。とはいえ、「判断する」と明示されたわけではなく、運用に問題があった場合に、審査会としてどう対応するのかもはっきりしない。

 一方、公明党案は、衆参合同の「両院情報委員会(仮称)」をつくり、政府による秘密の指定や解除のあり方を常時監視する。問題がある場合は、政府に改善を勧告できるとしている。

 与党協議では公明案を軸に、さらに国会にできることがないか、真摯(しんし)に検討すべきだろう。

 そもそも秘密法は、閣僚ら行政機関の長が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があると判断した場合は、国会への秘密提供を拒むことができると規定している。

 これによって政府に対する国会の調査・監視機能が制約され、三権分立が形骸化してしまうのではないか。懸念はなお強い。国会が自らの手足を縛るような法律を、なぜあれほど乱暴な手つきで成立させてしまったのか、いまも理解に苦しむ。

 議院内閣制の日本では、与党議員はどうしても政府と心理的に一体化しやすい。しかし国会議員は全国民の代表である。政府が「やりたいこと」を後押しするだけでなく、国民のために「やるべきこと」がある。それを忘れてもらっては困る。

 民主党を中心に野党案を出そうという動きもある。与野党を超えて、十分な権限を有する監視機関を設置し、国会の自負を示すべきだ。