「避難区域」記者が歩く福島の今 広野・二ツ沼総合運動公園 パークゴルフ場
■昨年再開、愛好者の笑顔戻る
青空が広がる広野町の二ツ沼総合運動公園のパークゴルフ場に、お年寄りの楽しそうな笑い声が響く。
除染のため天然芝を全て張り替え、昨年11月に再オープンした。国際パークゴルフ協会公認の起伏に富んだ全36ホールが自慢だ。公園を管理する町振興公社社長の青木隆さん(61)によると、再開以降、町民をはじめ、東日本大震災前から利用していた双葉郡内の愛好家が避難先から訪れているという。
町は、東京電力福島第一原発事故発生後、全町避難した。平成23年9月に緊急時避難準備区域が解除され、新たなまちづくりを始めている。
3月24日現在の人口は5185人。このうち、避難先から戻り、町内への居住届を提出した人は前月より44人多い1399人。1年前と比べると570人余り増え、町民は着実に古里へ戻りつつある。
小中学校の児童、生徒数も増えている。入学式を終えた広野小の児童数は91人で昨年より22人増え、広野中生も50人で8人増加した。
ただ、今も隣接するいわき市に3千人を超える町民が避難している。背景には依然として不安定な状態の福島第一原発や、除染が完了したとはいえ、放射性物質への不安がある。さらに、学校や病院、スーパーなど、生活に便利な市街地での生活は3年が過ぎ、町に戻るよりも市内で暮らすことを選択しようとする人も少なくないという。
町は、帰町支援の一環として、災害公営住宅を整備している。集合型(鉄筋コンクリート2階建て)4棟38戸と、一戸建て(木造2階建て)10戸の計48戸を造っている。一戸建てはほぼ完成し、現在は集合型の建設を進めている。10月から入居が始まる予定だ。
かつて、小学生からお年寄りまで、3世代の交流の場としてにぎわった二ツ沼総合運動公園。現在は一部が除染や廃炉を担う企業が事務所を置いており、公園の機能が震災前に戻ってはいない。今後、各企業から町へ返還を受けて徐々に遊具などを整備する予定で、青木さんは「町民が広野に戻ってくるきっかけになればうれしい」と話している。(いわき支社報道部副部長兼富岡支局・古川雄二)
(カテゴリー:震災から3年1カ月)