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農村V
昭和初期…
先月の空襲で夫を無くした絹江は焼け野原の東京を離れ
人里離れた小さな村の痩せた土地に畑作を営んでいる夫方の祖父母達と生活していた。
「絹江…絹江…」
トメは庭先で畑から取れた作物を洗っている絹江に声を掛けた。
「それが終わったら…洗濯も頼むよ…」
「はい…」絹江は額に滲んだ汗を拭いながら明るく返事を返した。
ただでさえ食料難の時勢に身よりの無い絹江を仕方なく引き取るしかなった祖父母達にとって
絹江の存在は食いぶちが増えただけでなく自分達の跡取りになるはずだった息子が
駆け落ち同然で絹江と上京し生活を始めた裏切り行為を祖父母は許していなかった。
「この次は洗濯ね…がんばらなきゃ…」
自らを奮い立たせる絹江は藁で出来たタワシで桶の中の野菜を擦った。
32歳になった絹江は熟した女の肉感を漂わせていた。
祖父の佐吉は軒先で押し黙ったまま藁を編んでいた。
いつも機嫌の悪そうな佐吉はしゃがみこむ絹江の丸みを帯びた尻姿に
ときおり目をやりながら黙々と藁を編んでいた。
「御婆様…」粗末な夕食が終わり後片付けをしている絹江はトメに恥ずかしそうに声を掛けた。
「なんじゃ…」
トメは苛立った表情で返事をした。
「昼間の畑仕事で…何か虫に刺されたみたいなんです…」
「それなら…爺様に頼んで…薬ば塗ってもらえ…」
この村の慣わしで薬を扱えるのは家長である佐吉にしか許されなかった。
「……。」予想通りのトメの言葉に絹江は言葉を無くしていた。
「どうしても…薬を自分で塗りたいのですが…」
「だめじゃ…明日の朝に頼め…」
「でも…あの…塗る場所が…」
「う…うるさいっ…口答えすんな…」
「……はい。ごめんなさい…」
トメの冷たく威圧的な態度に絹江は萎縮して小さく声を発した。
夕食後は何も娯楽が無いそこでの生活は
早朝からの作業に備えてただ寝るしか残されていなかった。
薄い煎餅布団に潜り込んだ絹江は寝巻きの裾から
細く白い手を差し入れてジクジクと痛痒い部分を弄った。
オデキのような腫れものは絹江の女の部分にほど近い会陰にできてしまっていたのだった。
(あっ…夕べより…膨れてる…このままじゃ化膿しちゃう…)
(でも…どうしよう…御爺様に…塗って貰わなきゃならないなんて…)
今の時分なら薬局や薬店はそこかしこに存在しているが
当時は何年か一度に村を訪れる行商人から購入する以外に
薬を手に入れる方法は無かったのだった。