政府が100%保有する日本郵政株の上場に向けて、本格的な検討が始まった。

 順調にいけば来秋ごろの上場が見込まれるという。売却益のうち4兆円は震災復興の財源に充てることが決まっている。

 だから先を急ぎたいのだろうが、日本郵政の将来像という肝心な点があいまいだ。このまま上場へ突き進むようでは、投資家や証券市場への背信行為になりかねない。

 持ち株会社である日本郵政は傘下に、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険という金融子会社2社と日本郵便を持つ。

 ポイントは、収益の大半を二つの金融子会社が稼いでいることだ。2社の株式はいずれ全部売却することになっているが、期限は定めていない。今回の上場へ向けた検討でも、この問題は白紙のままだ。

 まずはゆうちょ銀行とかんぽ生保の株式売却の展望と、売却後の日本郵政グループの経営や事業の姿をきちんと示す。そのうえで上場を進めるのが筋だ。

 金融子会社2社の株式売却のめどが立たないと、別の矛盾も深まる。

 日本郵政は政府が3分の1超の株式を持ち続ける。このため子会社2社は日本郵政の傘下にある限り、民業を圧迫しないよう、新規業務や預金額の上限撤廃などが認められず、収益力の向上に見通しが立ちにくい状態が続く可能性がある。

 この矛盾は政権交代などに伴う曲折を経た今の郵政民営化の枠組みに根ざしており、政府が決着をつけるべきものだ。

 日本郵政の将来の価値を左右する事情が不透明では、市場が上場後の株価に不確実性を感じてしまう。政府が皮算用する値段で株式が売れなくなれば、ツケは納税者に回るだろう。

 日本郵政の帳簿上の価値は12兆円に及ぶ。売り出せるのは、最大で3分の2の8兆円分。市場の消化能力にも限りがあるので、まず時価で4兆円分を3年ごとに3分割して売り出す案などが考えられる。となれば、政府保有株が、影響力の目安である過半数を切るまでに10年以上かかる可能性もある。

 政府は、そのうちに問題を処理すればいいと考えているのかも知れない。

 だが、金融子会社の株式売却が政治問題化しやすいことは論をまたない。いったん上場すれば、証券市場全体が政治に翻弄(ほんろう)されるリスクが高まる。

 それを分かっていながら、先行き不透明な半官半民の巨大企業を市場に送り出すようでは、政府として無責任だ。