「エンジニア版Y Combinatorをつくる」 国内最大の学生向けハッカソンDMTCが目指す エンジニアの理想教育とは【インタビュー前編】
IT界隈ではここ最近よく耳にするようになった「Hackathon(ハッカソン)」。 一口にハッカソンと言いますが、その形態は様々です。
例えば、FacebookやGoogle等有名企業が採用活動目的にハッカソンを開催する例にかぎらず、今ではベンチャーキャピタルやアクセラレータプログラムを持つ企業が新規事業家育成やアントレプレナー輩出を目的としてハッカソンを開催するケースも増えてきています。
今回インタビューを行った、DMTCが展開するハッカソンはそのどれにも当てはまりません。DMTCが開催するのは「エンジニアを目指す若い世代の育成」をテーマに、学生ひとりひとりのキャリアを尊重した育成プログラムを目的としたハッカソン。起業家を生み出す、世界を変える新規サービスを生み出すことが主目的ではなく、あくまでエンジニアひとりひとりのスキルや考え方、希望進路に合わせて、キャリア形成をサポートすることを目的としています。
今回のインタビューでは、DMTCを通じてエンジニアの育成に力をいれている山根淳平氏(DMTC責任者)にお話を伺いました。
ハッカソン型エンジニア育成プログラム「DMTC」とは
Q1. まず最初に「DMTC」とはなんですか?
DMTCはひとことで言うと「ハッカソン型エンジニア育成プログラム」です。
具体的に申し上げると「Webサービス・モバイル・アプリケーションの開発を通じて、エンジニア志望の学生のスキル向上・チームビルディング・自身のキャリア形成を行う、泊まり込みのキャンプ」です。2泊3日、72時間の中で、全国から集まったエンジニア志望の学生同士でチームをつくり、世の中にない全く新しいアイデアを考えて、機能するプロトタイプまで落とし込みます。
昨年は200名の学生がハッカソンキャンプに参加し、その中から60個のプロトタイプが完成しました。今年度は昨年の2倍以上の規模でDMTCを開催いたします。
これは、わかりやすい例としてよく使わせて貰っているのですが、私たちがやりたいことは、「エンジニア版のYCombinator(http://ycombinator.com/)」をつくることです。Y Combinatorは、カリフォルニアにあるベンチャーキャピタルであり、世界的に有名なアクセラレータプログラム(起業家育成、スタートアップ創造を目的とした短期間集中型のプログラム)を展開しています。目的は世界を変えるようなプロダクトを生み出すスタートアップの創造といったところでしょうか。
Y Combinator はDropboxやAirBnBを生み出す等、有名スタートアップを生み出す集合知、つまりエコシステムをつくることに成功しています。僕たちがやりたいことも、Y Combinatorと同様に「エンジニアを生み出すエコシステム」をつくることです。
Q.2 なぜエンジニアの教育に取り組んでいるのですか?
これは私自身が強く感じている「学ぶべきプログラミングを、気軽に学べる環境が少ない」といった問題意識と深く関係しています。
「エンジニアを生み出すエコシステム」と偉そうに言っていますが、実は僕自身は文系出身で、もともとNPO等で途上国支援をやっていた人間です。元々はITとはほど遠いところで活動をしていました。
NPOでの活動を行う中で、自分ひとりでも社会で戦えるスキルを身につけたいと思い、教本を買ったり企業でインターンシップを行ったり、スクールに通ったりする事でプログラミングの習得に励みました。結果としてそれなりのスキル・ナレッジは身に付いたのですが、学習の過程で様々な課題を感じました。
まず本格的にプログラミング学習を開始するとなると参考書も1冊数千円と安くありませんし、スキルを伸ばせば伸ばすほど、それに比例して教材や環境構築に必要な金額も上がっていきます。
スクールに通うのにも、数十万円かかりました。じゃあそこで学んだからといって、直ぐに社会で使いこなせる技術力がついたというと、決してそういった訳でもありませんでした。
そこでまずは学生側が高いお金を払う必要なく、質の高いプログラミング教育を受けることが出来るモデル。更には、社会で通用するより実践的な部分についても学べるモデルを構築できないかなと考えていました。
その中でハッカソンというものにシリコンバレーで出会い、ハッカソンを軸とした「エンジニアを生み出すエコシステム」、つまり「ハッカソン型エンジニア育成プログラム」を考えるに至りました。
Q.3 エンジニアを生み出すエコシステムについて詳しく教えてください
少し難しいですが、エコシステムとはそもそも、動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系というもとの意味から転化されて、「経済的な依存関係や協調関係により発展していく形態」を意味しています。
これだけでは分かり辛いので、私たちの場合に当てはめて表現してみます。「経済的な依存関係や協調関係により発展していく形態」を「エンジニアをつくるエコシステム」という言葉に置き換えると、ここで言うエコシステムとは、「エンジニアを志望する学生が協同でプロダクトを開発し成長できる環境。また企業やメンターによるサポート体制のもと、開発手法や育成カリキュラムが集合知として溜まっていくことで、更に次世代に受け継がれていく循環環境」と定義することができます。
DMTCはプログラミングに興味関心を持ち、少しの技術力さえあれば誰もがキャンプに参加する事ができます。また全国から集まるエンジニア志望の同世代たちと一緒にWebサービスやスマホアプリをつくっていく事が可能です。
もちろんそれだけで終わることはなく、DMTCに参加した学生は就職や起業、フリーランスなど様々なキャリア支援を受けることができます。そしてDMTCのプログラムを終了した学生には任意的にではありますが、「メンター」として次世代の育成にも協力してもらっています。
こういった動きはIT業界の中でも注目をいただいており、すでに協力企業(会場提供、地方学生の交通費・食費提供をしてくださる企業)やハイアリングスポンサー(インターンシップや採用枠をご提供いただいている企業)は100社を越えています。
これはIT業界が一丸となって、エンジニアの育成支援・サポートを行なっているという事を意味しています。スポンサー企業には実際に企業で働かれているエンジニアの方、ときにはCTOや技術責任者の方にプログラムに加わっていただいています。例えば、キャンプの中で学生の開発メンターや審査員として、社会で使われている技術の伝達にご協力いただいています。
Q4. 何故エコシステムを作るために「ハッカソン」という手段を選んだのですか?
確かにエンジニアを育成するといった観点で言えば、ハッカソンでなくともプログラミングスクールを開校するなど、別の手段も考えられます。その中でも我々がハッカソンにこだわる理由としては「ハッカソンが現実社会を表す縮図だから」です。
その様な考えに至る前提として「既存の教育で学べる事と、社会で必要とされている技術力に大きな乖離があるのではないか」、つまり現実社会で必要な知識や技術を身につける環境が、既存の教育期間にはまだまだ少ないのではないか、といった問題意識がありました。
「自分は何のために教育を受けるのか」という問いに真っ向から応えるならば、誤解を恐れずに言うと、それは「お金を稼ぐため」でしょう。そしてお金を稼ぐということは、誰かが私たちが提供できること、生み出した価値にお金を払ってくれる事だと考えています。つまり教育の先には「誰かの為になるプロダクトを作る、何らかの形で社会に貢献する」というゴールが必要です。
では既存の教育ではそういった「ゴール=社会における価値創造」が学べる仕組みが用意されているでしょうか。特に情報技術に関する領域においては、既存の教育で教わる技術といっても、CやJava言語だけといった大学も多く存在しています。
一方で、社会ではHTML5/CSS3、JavaScriptなど技術進歩が著しく、次から次へと新しいテクノロジーが生み出されています。数十年イノベーションが起きてこなかった既存の教育と社会の乖離を埋める必要があるのです。
※インタビューの後半も近日アップ予定です。
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