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【秘密保護法 言わねばならないこと】

(20)「戦争できる国」狙う 政治学者 白井 聡氏

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 報道の自由という観点から見て大変危険な法律であることは確かだが、それ以上に大きな問題がある。それは、国家安全保障会議(日本版NSC)の新設や集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更などと並び、日本を「戦争ができる国」にするための政策パッケージの一環だということだ。

 安倍晋三首相の訴える「積極的平和主義」は、戦後の日本の平和主義を「消極的」だと否定している。戦争をしないことで安全を保つのか、することで保つのか。その点で発想の大転換が行われた。

 だが、こうした方針に漠然と賛成している人に、これから中国やアジア諸国との関係がさらに悪化し、実際に武力衝突が起きることへの本当の覚悟があるとは思えない。これこそが「平和ボケ」というものだ。

 僕の知る限り、こうした事態に対して、特に若い世代の関心があまりに低い。政治に深く絶望する気持ちも分かるが、多くは国家権力がどういうものか、深く考えたこともないのだろう。国家は常に国民を優しく包み込んでくれるものだ、という現実離れした感覚なのではないか。

 庶民がどう思おうが、国家には国家の意思があり、時に個人との決定的な対立が生じうることを分かっていない。例えば、福島や沖縄には、実際に国家の犠牲になっている人がいる。

 では、本当に戦争となった場合、いったい、誰が行くのか。若い人だ。そんなことも分からずに、国を戦争へ近づける動きを支持するような間抜けなことをしていると、むしられます。お金だけじゃなくて、命までむしられる。それが嫌なら、知ろうとする努力をしなけりゃいけない。

 <しらい・さとし> 1977年生まれ。文化学園大助教。著書に『永続敗戦論』(太田出版)など。

 

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