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埼玉県と群馬県が今月上旬、利根川の水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題の調査結果を発表した。証拠が残っておらず、断定できないが、埼玉県のD社が高崎市のT社に処理を委託した廃液が原因と「強く推定」されるという結論だった。
ただ、廃液中の原因物質は規制対象ではなく、浄水場で塩素と反応してホルムアルデヒドができた。このため、廃棄物処理法や水質汚濁防止法の違反は問えないという。これをもって両社の「法的責任問えず」とする報道があった。幕引きを批判するつもりだったのかもしれない。
しかし、法的責任には、刑事責任と行政法上の責任だけでなく、民事責任もある。民法709条は、故意か過失で他人の権利を侵害したら、損害賠償の責めを負うと定めている。排出規制の見直しは当然だが、民事責任の追求も再発防止に役立つ。
今回は死者が出たわけではないが、千葉県では一時35万世帯が断水し、市民が水を求めて長い行列を作った。群馬や埼玉、東京でも取水停止や検査で大騒ぎになった。これで何の責任も問われないのでは、規制の網にかからない新しい化学物質は捨て放題になってしまう。
ましてD社は2003年にも同じ原因物質を出し、同様の騒ぎを起こしていた。埼玉県の上田清司知事は11日の会見で、損害賠償の請求は「基本的にはやるべきだ」と語った。千葉県も都も検討を始めた。群馬県もぜひ考えて欲しい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

先日、県庁32階の展望台に昇った。もしやと思い、案内係に尋ねてみると、やはり東京スカイツリーが見えるという。その日は駄目だったが、彼女が取り出した写真には、熊谷のセメント工場の煙突がそびえ、その向こうに展望台を備えた塔の上半身が写っていた。
県庁からスカイツリーまで直線距離で約100キロ。撮影した伊勢崎市職員の金井実さんによると、撮ったのは今年1月3日で、快晴だった。事前に地図で目印を探し、展望台で望遠レンズを使って写した。方角がはっきりした後は、肉眼でも見えたという。
ただ、そうそう、いつも見えるわけではない。昨年12月、金井さんが行った時は、晴れてはいたが、もやっていて、遠くは見えなかった。31階南側の日本料理店では、まだ誰も見ていないとか。来店客から時々尋ねられるが、残念な返答をせざるを得ないようだ。
県・赤城山広域振興協議会は3月からインターネットサイトで、赤城山周辺から撮ったスカイツリーの写真を募集しているが、6月初めになってもまだ応募がない。サイトには、ぐんまフラワーパークから撮ったライトアップされたスカイツリーがあるが、応募作ではない。
開業の前後、朝日を含めて新聞もテレビも連日、大騒ぎした。群馬には、その東京作の紙面と電波が届く。しかし、そもそも群馬でそれほど盛り上がるはずがない。逆に県民の皆さんを白けさせてしまったかもしれない。100キロは近くて遠い。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

夏の高校野球の開幕まで1カ月を切った。来週15日には県大会の組み合わせ抽選会が開かれ、7月7日が開会式だ。夢の甲子園への切符をかけて県内5球場で68チームが熱い戦いを繰り広げる。大会は高校野球連盟と朝日新聞が主催。ぜひ会場にお運び下さい。
今年は健大高崎に注目が集まっている。昨夏に続いて春も甲子園に初出場してベスト4に進み、さらに春の関東大会で、並みいる強豪を下して初優勝したからだ。関東大会は、準決勝で2番手投手が好投し、選手の層の厚さを見せつけた。県勢の優勝は29年ぶりだ。
もちろん、関東大会に一緒に出場した前橋育英、前橋商をはじめ他校にもチャンスは十分ある。逆に、県大会で健大高崎を倒せば、甲子園での活躍が約束されたようなものだ。今年の県大会は間違いなく、例年以上に盛り上がるだろう。
さらに、今年は秋の関東大会が群馬県で開かれる。例年、出場枠は各県2校だが、開催県は3校出場できるので、今秋は群馬が上位に勝ち残る確率が高い。春の甲子園出場校は、秋の大会の成績を材料に選ばれる。うまく運べば、今春に続いて2校が甲子園の土を踏めるかもしれない。
今春、前橋に来てから、会う人、会う人、誰もが口をそろえて「群馬の夏は暑い」とおっしゃるので心の準備はしていたが、6月に入って、日に日にそれを肌で感じ始めた。おまけに高校野球が熱を帯びて、私の夏は間違いなく猛暑になりそうだ。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

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