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野田首相が先月末、国会答弁で「『三丁目の夕日』の時代は、今日より明日がよくなると皆思っていた。そういう時代をつくりたい」と語った。三丁目の夕日は、高度成長が始まる昭和30年代の都市近郊を舞台にした長寿漫画で、何作か映画にもなった。
昭和32年生まれの野田首相はずいぶん思い入れが強いようで、国会の外でも頻繁にこのネタを使って話すらしい。映画に出演した女優の話で笑いをとってから「ツケを将来に残しておいて、今日より明日がよくなるとは思えない」と増税の必要性を説くのが常という。
その甲斐あってか、消費増税法案が成立した。しかし、昭和30年代には「ツケ」即ち借金をしなかったというのだろうか。政府の一般会計は均衡財政を徹底していたが、国鉄が新幹線の建設費を世界銀行から借りたのは有名な話だ。民間企業は借金に走り回っていた。
ところが、昭和30年代のツケは、経済成長によって問題にならなかった。もちろん無駄な投資や浪費もあったろうが、全体として見れば、借金が投資を支え、成長を生んだ。三丁目の夕日から導き出す教訓があるとすれば、むしろこちらではないだろうか。
親子二代の住宅ローンがある。子供にツケを残すことになるが、広く丈夫で満足のゆく家で長く暮らせるならば、子供にとっても悪い話ではない。ツケを残すのは悪と決めつけて、消費税を上げれば、消費が減って、それこそツケが回ってくる。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

観戦してきた。群馬代表の高崎商は残念ながら、1回戦で隣県埼玉の浦和学院に敗れてしまった。悔しいが、今春の選抜大会8強の強豪とあって、致し方ない。群馬勢には、10月に群馬で開かれる秋の関東大会で頑張って欲しい。
せっかく来たので大阪駅周辺を歩いた。ほどなく阪神百貨店地下1階に長い行列を発見した。50人は並んでいる。「ガトーフェスタ ハラダ」の店だ。ラスク人気は大阪でも大したもの。行列の女性のひとりは「今日はお盆前で特に多いが、いつも行列ですよ」と話していた。
しかし、群馬の菓子とは知らないだろうと思い、「どこの県の会社かご存じですか」と尋ねてみると、「群馬やね」と即答された。ほかにも男女3人に聞いたが、皆、ちゃんと知っているので驚いた。やはり人気の食べ物は産地の知名度も確実に上げてくれるようだ。
近くにある群馬県大阪事務所も訪ねた。こちらはオフィスビルの8階。同じフロアに茨城、長野、新潟など6県の、9階に10道県の事務所もある。どこも旅行会社の店頭のように様々な資料を揃え、飾っているが、人影はまばら。栃木県の事務所は8年前に撤退した。
いずれの県の事務所も大きな仕事といえば観光物産の宣伝だけでなく企業誘致もあって、人の入りや行列の有無だけで評価はできない。とはいえ、大阪の、二つの群馬の顔はずいぶんと対照的。ハンカチで汗をぬぐいつつ思った。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

今、吹奏楽ブームだ。高校の吹奏楽部を描いた映画や、吹奏楽コンクールの悲喜こもごもを紹介するテレビ番組のおかげで、楽器を手にする人もファンも着実に増えている。戦前から吹奏楽連盟と一緒にコンクールを主催してきた朝日新聞としては大変うれしい。
夏は吹奏楽の季節でもある。4〜7日には県のコンクールが前橋市のベイシア文化ホールで開かれ、小中高大の学校や一般の約120団体が演奏を披露した。うち22団体の西関東コンクール出場が決まった。成績発表の瞬間、会場は歓声につつまれ、涙を流す子供もいる。
今年は幸運なことに、この西関東コンクールが前橋で開かれる。群馬、埼玉、新潟、山梨4県のコンクールを勝ち抜いた中学、高校が参加し、全国コンクール出場を目指すレベルの高い演奏を聴かせてくれる。9月8、9日で、会場は県コンクールと同じだ。
日付が戻るが、今月19日には県マーチングコンテストが前橋市のALSOKぐんまアリーナである。マーチングは、行進しながら吹奏楽を演奏するもの。バトントワリングや旗振りを交えた演奏もある。舞台での演奏とは違った魅力があり、一糸乱れぬ動きには目を見張る。
どんなブームにも陰りはつきものだが、吹奏楽ブームは一向に冷める兆しが見えない。吹奏楽の魅力を伝え、さらに多くのみなさんに幅広く多様な音楽に触れて欲しい。猛暑続きに恐縮だが、会場にお運び頂ければ本当にありがたい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

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