|
宇宙飛行士の向井千秋さんが来月から朝日新聞の群馬のページにエッセーを寄稿して下さることになった。今も世界を駆け巡り、大忙しにもかかわらず、故郷、群馬のためならばと、こちらの無理な願いをかなえてくれた。掲載は5週に1回。乞うご期待。
向井さんは館林市出身。小学校4年の時、弟の足を治したいとの思いを作文に書いてから、医者を志したという。中学3年から東京に移り、慶応大学医学部に進み、心臓外科医になる。そして宇宙飛行士に転身し、94、98年に宇宙に行く。
先日、御礼と打ち合わせのため茨城県つくば市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)を訪ねた。入り口近くには大きなロケットが置かれ、見学に来た子どもたちが歓声をあげて記念写真を撮っていた。向かうは宇宙飛行士養成棟。名前からして非日常の世界。50過ぎの私もワクワクした。
インターホンで到着を告げると、向井さん本人が1階玄関まで下りてきて明るい笑顔で迎えてくれた。自然体で気取りのない、さわやかな人だ。日本人なら老若男女、誰でも知っている超有名人だが、館内見学者の誰にでも気軽に「こんにちは」と声をかけていた。
猛暑の時期で、向井さんは凍らせたペットボトルのお茶を2本用意し、帰りに私に持たせてくれた。筑波から高速道路で2時間余り、とんぼ返りの運転はきつかったが、ボトルを振って溶けたお茶をすすりながら、うれしい気分に浸った。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

群馬2区選出の石関貴史衆院議員と前橋市に拠点を置く上野宏史参院議員が日本維新の会に加わった。その直前、会の討論会に2人が出席するので、前橋総局からも記者を大阪へ出張させた。ただ、2人ともあまり発言しなかった。
この機に、会の基本政策「維新八策(案)」をサイトから印刷して読んでみた。A4判15枚。表紙には「日本再生のためのグレートリセット」「給付型公約から改革型公約へ」「皆さんにリンゴを与えることはできません。リンゴのなる木の土を耕し直します」とある。
リセットはゲーム感覚で格好いいが、何だか昔の約束は忘れてくれ、無い袖は振れない、と言われているような感じ。「リンゴがなる木を植えます」と言わず、「土を耕し直します」と遠回しなのはリンゴを実らせる自信がないからか。
頁をめくって目に付くのが10回以上出てくる「自立」の文字。地方には「国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で」と自立を促す。具体策は「地方交付税制度の廃止」と「消費税の地方税化」が目を引く。
交付税は、自治体間の格差を縮めるため、所得・法人・酒・消費・たばこの5つの国税の一定割合を県市町村に配分する制度だ。消費税から交付税に回す割合を増やせば、消費税の地方税化とさして変わらない。そもそも地方が払った5税は地方の財布でもある。なのに交付税を廃止して、自立の名の下で格差を広げる結果にならないか。議員方の議論を期待したい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

先週訪ねた嬬恋村のキャベツ畑は壮観だった。車が坂を上りきり、視界がパッと開けたかと思うと、緑の株が丘陵の表面を隙間なく埋めて左右に延々と広がっていた。絶叫イベントで知られる「愛妻の丘」からは周囲ばかりか、遠く浅間山のすそ野まで畑が見える。
キャベツ農家の佐藤梅仁さんに話を聞いた。就農して12年余り。栽培面積は20ヘクタール。6月末から11月初めの収穫期は夜明け前から畑に出る。だから大きな投光器があった。人も使って、多い日は1600箱収穫する。刈り取りは腰をかがめる重労働だ。
13年前、私が担当していた農水省がキャベツの自動収穫機の開発に予算を投じていたのを思い出した。当時、朝日の別の記者が少しちゃかして記事にした通り、今、畑を眺めれば一目瞭然、やはり実用化は失敗に終わったようだ。
自動収穫機の代わりか、嬬恋村のキャベツ農家では130人の中国人が働いている。インドネシア人もいるとか。一方、今夏は在庫がだぶついて、出荷調整を強いられた。絶対量は少ないが、中国や韓国からキャベツの輸入が増えている。夏秋キャベツ日本一の嬬恋も安閑としていられない。
佐藤さんに名刺をもらった。キャベツのような薄緑の紙は、神奈川県から嫁いだ奥さんが選んだ。メールアドレスは「梅ちゃんキャベツ」とある。苦労はあっても、キャベツ一筋で頑張ると話していた。梅ちゃんを応援したくなった。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

最近のバックナンバーに戻る |