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コラム 
記者の目
群馬の一票 [11月23日号]

 来月の総選挙は、最高裁が違憲状態と判示した前回総選挙と全く同じ選挙区、定数で実施されることになった。これでは一票の格差を放置した違憲選挙だ。昨年9月現在で300小選挙区の中で一番多い千葉4区の有権者は最少の高知3区の2・38倍もいる。
群馬の選挙区はどうか。県内最多の群馬1区の有権者数は全国99位で、高知3区の1・87倍。四捨五入すれば、千葉4区も群馬1区も同じ2倍だ。高知3区の票のおよそ半分の価値しかない。一票の格差は他人事ではない。
 総務省がまとめたランキングを眺めていたら、県内の格差も気になってきた。2区は170位、5区は187位、3区は213位、4区は228位だ。1区の有権者数は、県内最少の4区の1・32倍だ。これは許容範囲か否か。
 最高裁判決は、最大格差を2倍未満に抑えるような立法措置を求めている。では1・9倍なら問題はないのか。確かに、それ以上の格差縮小が不可能ならば仕方がないが、先週、この欄で説明した通り、選挙区を全国一つにすれば、格差は縮小どころか解消できる。まず、それを検討するのが筋だろう。
 県議選の選挙区の定員1人当たりの有権者数を計算したら、今年9月現在で最多は沼田市、最少は甘楽郡で、格差は1・95倍だった。法改正が要るが、県議選も全県1区にすれば格差は消える。昨春の県議選は全18選挙区中5区が無投票だった。全県1区なら無投票当選はなくなるだろう。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

一票の格差解消法 [11月16日号]

 最高裁が先月、一票の格差が最大5倍だった2010年の参院選を違憲状態と断じた。最大2・3倍の格差だった09年の衆院選でも同様の判決を昨年3月下している。なのに、「近いうち」の衆院解散が騒がれても選挙制度の改正が一向に進まない。
 衆院小選挙区の「0増5減」が議論されているが、有権者が増減し、300もの小選挙区の間を移動する限り、繰り返し選挙区割りの変更が必要になる。弥縫策に過ぎない。腹立たしく、不思議なのは、格差を完全に解消する方法があるのに、誰も口にしないことだ。
 格差は、ある選挙区と、別の選挙区との一票の重みの違いだ。だったら、選挙区を一つにしてしまえば格差は生まれようがない。小学生でも分かる簡単な理屈だ。暴論と言われるかもしれないが、今だって参院選の比例区は全国一つ。解決できない障害はない。
 比例代表制にするか否かはまた別の選択だ。以前あった参院全国区は比例ではなかった。テレビによく出るタレントや全国組織の候補に有利と批判されたが、有名候補に票が集中すれば、それだけ他候補の当選ラインは下がる。都民が故郷群馬の候補を選ぶことだって可能だ。
 衆院の全480議席を、全国一つの選挙区で争うと、09年の総選挙の投票者総数約7千万人で計算すれば、単純な当選ラインは15万票くらいになる。どこに力を入れて票を集めるかは自由だ。候補者のみなさん、本当の実力を見せてくれませんか。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

ラフティング [11月9日号]

 先月末、みなかみ町の利根川でラフティングを初めて体験した。同行の5人とガイド1人がオールを1本ずつ手に大きなゴムボートに乗り込んだ。ガイドの指示に従って漕いだり、体を左右に動かして重心を変えたりして2時間余りかけ、約2・5キロ下った。
 雪解けで水が増す春から初夏に比べれば穏やからしいが、岩の合間を縫い、きつい傾斜を下り、水しぶきを浴びて迫力は十分。途中の深い淵ではボートを下りて高さ3メートル前後の崖から飛び込みもした。40〜50代のおじさんがみな童心に帰っていた。
 終わってウエットスーツを脱ぎながら、ふと考えた。携帯電話を身につけず、手の届く所にも置かずに3時間近く過ごしたのは何年ぶりだろう。身につけていた私物はスーツの下の水着1枚と固定用バンドをつけた眼鏡だけ。ほかは一切合切、更衣室のロッカーに置いていった。
 普段、携帯は就寝中は枕元に置き、泳ぐ時も浜やプールサイドに持っていく。人間ドックに入った時も持ち歩いた。最近、会社からスマートフォンが貸与され、ますます携帯をさわる頻度が増えた。電車に乗れば、誰もが携帯とにらめっこ。手放さないのは私に限った話ではない。便利であってもどこか悲しい。
 春になると、みなかみ町から沼田市まで30キロも利根川を下る1日ツアーを催すそうだ。ぜひ参加して仕事を完全に忘れて過ごしたいが、「防水の携帯を持って行け」と言われるかもしれない。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)


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