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先日、前橋市役所で、市議会議長からある部署に宛てた要望書の複写か閲覧を希望したら、「行政情報公開請求書」を2階の情報公開コーナーに提出せよと求められた。公務員間の要望書で、個人のプライバシーに関する情報は一切無いというのに。
その日はコーナーが閉まるため、翌金曜の午前に請求書を出した。月曜日に、幹部の立派な角印を押した公開決定通知書と要望書の写しを手にし、コピー代を払った。その時、その部署の担当者に要望書の内容に関連する質問をしたら、再び公開請求書を出すよう求められた。いやはや。
新聞記者の私はあれこれ言い張って、答えを引き出せたが、普通の市民だったらどうなっていたか。問い合わせのたびに請求書を求められては、疲れ果ててしまうだろう。仕事でなければ、面倒になって諦める人もいるはずだ。
手続きは市情報公開条例が定める。誰でも請求でき、行政に原則公開を義務づけているのはよろしい。しかし、手続きを経ず、幹部の決裁なしに職員が公開できる情報は、図書館の本や公表目的で作ったものに限られている。これでは、職員が申請書を求めるのも無理はない。
条例は「市民に説明する責務が全うされるように」とうたっている。今も融通を利かせてくれる職員はいる。ならば、原則として職員が裁量で情報を公開できることを認め、例外として申請書が要る場合を定めればいい。条例改正を、ぜひ新年の課題にして欲しい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

総選挙が終わった。この選挙は、最高裁が昨年3月に「憲法の投票価値の平等の要求に反する」と判示した2009年総選挙と同じ選挙区割り、定数で行われた。さっそく、一票の格差を放置したままの選挙の効力を争う訴訟が全国各地で起こされた。
選挙前には、格差を放置したままの選挙の差し止めを求める訴訟もあった。これは最高裁が先月末、一、二審判決を支持して、棄却を決定した。最高裁自身が違憲状態と言っていたのに、それでも憲法の番人か。予想通りだが、けしからん。
そう思って、決定文を取り寄せて読んでみた。良しあしはともかく、選挙人として行政機関の行為の是正を求める訴訟は、特別の規定が法律にない限りできないとある法律で決まっているので、差し止め請求はできないという。いわゆる門前払いの決定だ。
ということは、考えてみれば、今回の衆院選を「合憲」と決めつけたわけではない。東京高裁の判決も興味深い。違憲状態の選挙によって国民が被る不利益は選挙後の「効力に関する訴訟を通じて是正されることが予定されている」と指摘している。
何だか、選挙を一部無効とし、再選挙を命じる判決が下されるような気がしてきた。野田さんは、定数是正が完了しなくても「首相の専権事項として(解散を)判断する」と言って、実行した。一部の選挙区でも再選挙になったら、野田さん、責任をとって、その費用を負担して下さいね。専権で。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

今春、群馬県に越してきてから、これほど驚いたことはない。16日の衆院選で県内の投票所の99%が午後7時までに閉まるという。山奥や離島なら驚かないが、県庁所在地の前橋市も、人口が最も多い高崎市も全部7時までに投票を締め切るとは。
全国では繰り上げ閉鎖する投票所は3分の1に過ぎない。私のような転勤族には、8時まで投票できると思っている人が多いだろう。今回は慌ただしい年の瀬だけに、期日前投票に行きそびれて、投票日に仕事があれば、遅くなる人がいるはずだ。期日前は投票所数だって少ない。
高崎市の場合、昨年の知事選から全108投票所の7時閉鎖に踏み切った。昨年春の県議選では95カ所が8時まで開き、7時以降8696人が投票した。7時過ぎも1カ所平均90人が投票に来た。市選管は、開票を早め、投票所の立会人の負担を減らすよう要望があったと説明する。
しかし、公選法40条は「投票所は、午前7時に開き、午後8時に閉じる」と定め、繰り上げは「特別の事情」がある場合の特例に過ぎない。全国の実態を見れば群馬だけ特別の事情が多いはずがない。前橋市では5年前、繰り上げの要望書が選管に出されたが、理由は高崎と似たり寄ったりだった。
今回、みなかみ町は県内で唯一、繰り上げを大幅に減らし、8時まで投票所を開く。人件費は増えるが、真っ当な判断だ。担当者は他の自治体の方針を聞いて「がっかりした」と話していた。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

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