朝日ぐんまって?
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コラム 
記者の目
貨物列車 [2月22日号]

 今月4日の夜8時過ぎJR上越線で回送中の機関車が火災を起こし、翌5日の午後3時まで渋川駅と沼田駅の間が不通になった。上下28本の電車が運休や一部区間の運休となり、約3千人に影響が出た。5日朝の通勤通学はさぞかし大変だったろう。
 貨物列車は2日間に上下合わせて13本運休し、2本が遅れた。全てコンテナ列車で、東京や神奈川と札幌、秋田、新潟、富山、金沢とを結んでいる。主な貨物はコメや菓子、紙や金属という。すぐ傷むものはなさそうだが、いろいろ影響があったはずだ。
 ただ、火災を起こしたJR東日本が何回か配布した「お知らせ」は貨物列車に全く触れておらず、JR貨物も自分からは公表しなかった。朝日新聞も書かなかったので、偉そうなことは言わない。地味な貨物への影響は余程でないと省いてしまう。
 しかし、上越線にとって貨物輸送はことのほか重要だ。並行して走る新幹線が中長距離の旅客をがっちり握っているためだ。水上駅と新潟県の越後中里駅の間は通常、貨物列車が1日9往復あるが、旅客列車は6往復しか走らない。鉄道貨物を増やして設備をより有効に使えば、旅客列車の維持にもプラスに働く。
 貨物列車はトラックに比べてエネルギー効率がよく、環境に優しい。事故も少ない。もっと脚光を浴びていい。国鉄の分割と株式会社化から26年を迎え、JRの旅客会社と貨物会社はさらに協力して、鉄道貨物輸送の振興を図ってほしい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

原木シイタケ [2月15日号]

 先月末、県きのこ品評会の表彰式が県庁であった。さすが全国有数のキノコ生産県ならではの催しだ。我が前橋総局も後援し、記念品の盾を提供している。会場には全出品作219点がずらりと展示され、うち24点に金賞が贈られた。
 その出来栄えの素晴らしさには目を見張った。シイタケの傘は、二つに割ったボールほどの立体感があり、しっとりしたカステラのような茶色だった。マイタケはつやつやして力強く、まるで大輪の菊の花のようだった。
 生産者は今も、福島第一原発事故で飛散した放射性物質のために大変な苦労を強いられている。全都道府県中トップの生産量を誇る原木栽培の生シイタケは原木の不足と高騰に見舞われ、品評会も以前あった原木シイタケの部を菌床栽培のシイタケと統合せざるを得なくなったそうだ。
 最高賞に輝いた渋川市の森田富雄さんは「原木にこだわってやってきたが、これから先どうなるかわからない」と心配していた。林野庁は今年度、原木購入の支援事業を行っているが、群馬はなんと対象外だった。あんまりだと思って、林野庁に質したら、来年度は対象にするという。
 県は5日発表した来年度予算案に「しいたけ原木共同購入支援」として2千万円を計上した。1本あたり50円の補助で、40万本分。今年度予算より10万本分増やすそうだ。原発事故で農林業が被った害も計り知れない。行政には、より素早く、幅広い支援を心がけて欲しい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

曲技飛行 [2月8日号]

 法律は、およそ常識で危ないと思うことは禁じたり、許可を必要としたりしている。航空法91条は「人又は家屋の密集している地域の上空」での「曲技飛行」を原則禁止している。アクロバット飛行の墜落事故を考えれば当然だ。
 先月下旬、前橋市の夜空を複数の米軍機が飛び回った。22日、私は爆音に驚いた。榛東村の森野洋一郎さんは玄関先から米軍機の赤い光を連続撮影した。10分間に撮った163枚を重ねると、赤い点が航跡を描き、何度も旋回している様子がわかった。写真は25日の朝日新聞に載った。
 航空法施行規則によると、曲技飛行とは宙返りや横転、反転、背面、きりもみなど航空機の「姿勢の急激な変化」「異常な姿勢」「速度の異常な変化」を伴う一連の飛行を指す。22日の飛行が該当するかは不明だが、危険性に大差はないように私には思える。
 しかし、日米地位協定に伴う航空法の特例法によって航空法第6章「航空機の運航」の条文は91条を含め、ほとんどが米軍機には適用されない。だから、米軍はアクロバット飛行や低空飛行を平気でできる。住民への影響を最小限にするとの日米合意はあるが、役に立っているのやら。
 群馬県は2年前、政府や米軍に「県民生活に深刻な影響を与える米軍機の飛行は容認しかねます」との文書を送った。しかし、県も前橋市も騒音の測定すらしていない。群馬と同じように米軍機が東京やワシントンの上空を飛び回ったらどうなるだろう。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

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