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コラム 
記者の目
本当のねじれ [7月26日号]

 参院選が終わった。結果はご存じの通り、与党の自民党と公明党が合計76議席、改選議席の63%を獲得し、非改選議席と合わせて過半数を占めた。これで、与党が多数の衆院と、少数与党だった参院との「ねじれ」が解消され、安倍首相はご満悦のようだ。
 しかし、有権者の投票結果をよく見て欲しい。自公を合わせた得票率は47選挙区全体が48%、比例区が49%で、半分に届かない。つまり与党の得票率と獲得議席こそ、ねじれている。自公は、議席の3分の2をとった昨年暮れの総選挙でも得票率が小選挙区全体で45%、比例区で39%しかなかった。
 得票率と獲得議席がねじれるのは1人区が多く、2位以下への票が死票になるからだ。参院選挙区の3分の2、31県が改選数1。衆院選は全480議席のうち300議席が定数1の小選挙区だ。安倍さん、ねじれが問題というなら、まずこのねじれこそ直して下さい。
 22日、弁護士グループが今回の参院選の全47選挙区について一票の価値の格差を問い、選挙無効を求める訴訟を起こした。もちろん群馬県選挙区についても提訴された。群馬は参院議員1人あたりの有権者が最少の鳥取の3・37倍もいる。
 今、選挙制度の正統性が問われている。制度のねじれや一票の格差は、今回、投票率が低かった理由のひとつとも考えられる。ゆがんだ制度が、投票してもしなくても結果に大差はないと考える有権者を増やしているのではないだろうか。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

充電スタンド [7月19日号]

 今月初め、新前橋駅に行く折、偶然、電気自動車のタクシーに乗った。その車は床下にバッテリーがあるため座席が高くて少し乗りにくかったが、静かにスムーズに走り、乗り心地はよかった。群馬県内の電気自動車の登録台数は3月現在で727台になったそうだ。
 私が働く大手町には前橋市が設置した充電スタンドがある。時々、市の防犯パトロール車が充電しているのを見かける。先日、赤城山麓の富士見温泉に行ったら、そこにもあった。県内の一般利用できる充電スタンドは5月現在で95カ所という。
 ただし、充電スタンドの利用はまだまだ低調のようだ。市によると、2012年度の利用台数は市の車を除いて2カ所合わせて320台。1日1台にも届かない。私も一般の車が充電しているのを見たためしがない。もったいない話だ。
 道すがら運転手に聞いて驚いたことに、市の充電スタンドは、タクシーは原則利用禁止という。課金装置がないため利用者から電気代を徴収していないので、営利目的の車は除外しているそうだ。一般車の利用時間も、安全のため充電の際にスタッフを立ち会わせているので限られている。
 設置には、富士見温泉のスタンドの場合で、充電装置と配線工事に430万円かかった。だが、この分は丸々国の基金から補助が出て、市は看板などの付帯工事を負担しただけ。ただで作ったようなものだから、無頓着なのか。もっと使ってもらう知恵を絞って欲しい。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

野球少女 [7月12日号]

 夏の高校野球県大会が開幕した。先週末から今週にかけて1、2回戦があり、すでに参加66チームの半分は「夏」が終わった。半面、甲子園を目指すチームの戦いはこれから一段と熱を帯びる。3回戦以降は敷島球場と高崎城南球場。ぜひ観戦にお越し下さい。
 6日の開会式では、ユニホーム姿の野球少女、高崎市立乗附小6年の杉山楓さんが颯爽と登場し、注目を集めた。例年、出場選手の前で少年野球チームの代表が応援のメッセージを述べる。女子は今回が初めてだ。「最高にすてきな夏にして下さい」と呼びかけた。
 楓さんは2年生から野球を始め、今は男女一緒のチームの主将でエースピッチャーという。1970年代の漫画「野球狂の詩」に出てくる女性投手水原勇気を思い出す。県によると昨年の調べでスポーツ少年団傘下の県内小学生の女子野球選手は361人。想像より多く、驚いた。
 楓さんは中学に進んだら野球部に入るつもりらしい。中学も男女混成で女子が試合に出場できる。ただ、県内の中学校の女子野球部員は30人ほどしかいない。小学生の女子選手数は男子選手の7%程度になるが、中学生では1%未満になってしまう。
 高校に進学すると、さらに野球少女は絞られてくる。ソフトボール部は多いが、女子野球部がある高校はわずかだ。全国高等学校女子硬式野球連盟は加盟16校という。楓さんは「私は野球が大好きです」と話していた。長く続けられるといいね。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)


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