朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
記者の目
新幹線と車椅子 [8月23日号]

 久しぶりに満員の新幹線に乗った。甲子園に行く日がお盆の帰省ラッシュと重なった。列車が新横浜を出た時には、自由席はデッキが乗客で埋まり、客室の通路にも人が立っていた。私は指定席の車両に移って何とか空席を見つけ、後で車掌に差額を支払った。
 ほっと一息ついて、車内販売で買ったサンドイッチをつまみながら、はたと思い至った。この席が空いていたのは、車椅子の乗客用の席だからではないか。11号車の東京寄りの席で、3人掛けシートが並んでいる側にある2人掛けシートの席だ。
 後日、JR東海に問い合わせたら、その席はやはり車椅子の乗客が優先だが、一般客の予約を受けないわけでもないらしい。いずれにしても、その場に車椅子の乗客がいなかったため座れたわけで、名古屋、京都で車椅子の乗客が現れれば、席を譲るつもりでいた。しかし、予想通り、現れなかった。
 悲しいかな、まだまだ今の日本では、車椅子の利用者は簡単に列車に乗れない。混雑の時期はなおさらだろう。JR東海は普段でも車椅子の乗客には「事前の予約を推奨している」という。気軽に自由席に乗ることは許されないのだろうか。
 一昔前に比べれば、駅のエレベーターや列車内のスペースは格段に整備されてきた。その努力は認める。それでも自由に乗りにくいのは、結局、乗員や駅員の数に余裕がないからではないのか。そんなことを考えているうちに新大阪に着いた。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

スケートの季節 [8月16日号]

 夏真っ盛り。少しでも涼しくなるようにスケートの話をしたい。フィギュアの安藤美姫選手が出産して、来年のソチ五輪を目指すと宣言して話題になっている。世界選手権で2回優勝し、五輪にも2回出た有名選手だから当然だろう。
 この安藤選手が11月に前橋のリンクに登場するかもしれない。彼女はここ2シーズン欠場したため、日本代表になるには、10月の関東選手権と、11月の東日本選手権を勝ち抜かなければならない。東日本選手権は群馬県総合スポーツセンターのアイスアリーナで行われる。
 安藤選手が出場すれば、観客が増える。関東選手権は急きょ会場を埼玉県川越市から横浜市に変更した。川越のリンクは観客席がないからだ。心配になって総合スポーツセンターに尋ねると、こちらは2千席あり、問題ないようだ。さすがはスケート王国、群馬の施設だ。ほっとした。
 ただ、このリンクは10月から4月初めまでしか営業していないと聞いて驚いた。そもそも夏に氷を張れるようにはできていないという。さらに聞くと、県内で通年営業しているアイススケート場はないそうだ。川越のリンクは、観客席はないけれど、年中無休だ。
 通年で利用者がどれくらい増えるかわからないが、冬だけというのも寂しい。一方、2千人の客席は、再来年の冬季国体の会場にもなるが、なかなか満席にならないらしい。何かいい対策はないものか。考えていたら、また暑くなってくる。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

合唱コン [8月9日号]

 いきなり宣伝になって恐縮だが、朝日新聞社は様々なイベントを主催している。その代表格が、本欄でも取り上げたことがある高校野球と吹奏楽コンクールだ。今年の高校野球は前橋育英が夏の甲子園初出場を決めた。吹奏楽も近年大人気。有り難いことだ。
 もうひとつ、本欄で初めて紹介したいのが合唱コンクールだ。根強い人気を誇る。今年は、先月28日に伊勢崎市で年に1度の県大会が開かれた。中学校から社会人まで同声、混声の26団体がハーモニーを競い、10団体が9月の関東大会に出場することになった。
 その日は、高校野球の決勝と重なってしまった。私は野球の閉会式の後、前橋市の敷島球場から伊勢崎へ車を飛ばし、何とか数団体の演奏を聴き、表彰式に臨んだ。プログラムの半分も聴けず、合唱の参加者のみなさんには本当に申し訳なかった。
 それでも、普段、合唱を目の前で聴く機会のない私には貴重な一時だった。社会人になると、合唱団にでも入っていない限り、合唱をすることはほとんどないし、生で聴く機会も少ない。歌うのはカラオケくらい。合唱ではなくデュエットがせいぜい。メディアで聴くのも1人の歌が多いだろう。
 合唱を聴きながら思った。人の声って、こんなに美しいものだったのか。50歳を過ぎていまさらだが、仲間と一緒に素晴らしいハーモニーを奏でられたら、さぞ楽しいことだろう。おそらく来年の合唱コンでも私は同じ思考を繰り返しそうだ。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)


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