朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
記者の目
堀越二郎 [9月27日号]

 藤岡歴史館で今月上旬まで開かれていた企画展「堀越二郎の軌跡」を観た。最終日の2日前とあって、平日にもかかわらず、予想以上に混んでいた。館の入場者は例年7千人ほどだが、2カ月足らずの企画展の間に2万2千人余りが訪れたという。
 堀越は、宮崎駿監督が作ったアニメ映画「風立ちぬ」の主人公のモデルだ。1903年に今の藤岡市で生まれ、旧制藤岡中を出て一高、東大へ進んだ。展示を通して、彼が極めて優秀な技術者であり、零戦をはじめとする戦闘機の開発に大きな足跡を残したことがよくわかった。
 半面、彼が戦争について、戦争のために自分が果たした役割について、戦中、戦後どのように考えていたかを示す展示が見あたらず、物足りなかった。航空機開発関連以外では、趣味のゴルフの展示が面白かったが、彼の全体像が見えるわけではない。
 上映中の「風立ちぬ」でも主人公の「堀越二郎」は零戦を開発する。敗戦後の最後の場面では、夢の中で飛行機作りの先人に「終わりはズタズタでした」と語る。これは創作だ。
 堀越が70年に出した著書「零戦」を読んでみた。「日本の国はなんと愚かしい歩みをしたことか」と述べるかたわら、「全身を打ち込める仕事を与えてくれた海軍や会社に深く感謝しなければならない」と記している。日本が侵略した国に対しては「隣国の中国でそれ(=零戦)が験されることに、胸の底に痛みをおぼえていた」としか書いていない。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

ぶらりの楽しみ [9月20日号]

 参院選と高校野球が終わり、久しぶりに丸一日の休みがとれたので、妻と2人、車でぶらりと出かけた。まずは水沢うどんの、入ったことがなかった店で腹ごしらえ。続いて伊香保の旅館で日帰り温泉の露天ぶろを楽しみ、石段街の喫茶店で一休みした。
 前橋への帰り道、ブドウ狩りでもしようかと話しながら走っていると、榛東村で「耳飾り館」という看板が目に飛び込んできた。いったい何だろう。さっそく、駐車場に車を入れた。国指定重要文化財の表示もある。私が玄関に向かうと、ブドウ狩りを聞き流していた妻もついてきた。
 主な展示品は近くの茅野遺跡から出土した何百点もの縄文時代の耳飾りだった。円形の素焼きの土製で一円玉大のものから直径5センチくらいのものまである。それを耳たぶに開けた穴に入れる。耳栓式耳飾りというそうだ。穴を徐々に広げれば、より大きな飾りを入れられる。
 今でも中国の山岳民族などが使っているという。縄文時代の日本と現代の遠国との時空を超えた文化のつながりに思いをはせる。最初、現代のイヤリングを思い浮かべて、どうやってぶら下げたのかと考えてしまったのが、我ながら可笑しい。
 展示によると、日本には耳飾り空白期間が2回あった。弥生時代と、奈良時代から江戸時代までの千年以上とだ。言われてみれば浮世絵で耳飾りを見た覚えがない。なるほど、そうか、面白い。偶然知ることは楽しい。これこそ、ぶらりと出かける味わいだろう。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

 

甲子園優勝 [9月13日号]

 夏の高校野球甲子園大会で前橋育英が優勝した。春の関東大会準優勝の実績があるので、何試合かは勝ち進むと思っていたが、優勝は想像していなかった。今となっては自分の不明を恥じるばかり。22年ぶりの初出場初優勝に甲子園で立ち会えて感無量だった。
 当日の前橋も体感したかった。行きつけの散髪屋さんは、決勝戦の時間、まったく客が来なかったと話していた。パブリックビューイングは大盛況で、一投一打に歓声があがったそうだ。高校野球連盟とともに大会を主催する朝日新聞社の一員として本当にうれしい。
 群馬県庁と前橋市役所の皆さんが優勝報告会を準備して下さったのもありがたかった。ただ、甲子園大会の運営ルールは明文で祝賀行事は校内で開くよう定めている。事情を説明して県と市に納得してもらい、非公開の優勝報告となった。期待していた市民の皆さんには本当に申し訳なかった。
 高野連も朝日も、高校野球は教育の一環という立場を第一にしている。このため、教育的な配慮に基づく様々な制限を設けている。大会を盛んに報道するくせに、矛盾しているじゃないかと思う方も多いだろうが、どうかご理解頂きたい。
 夏の甲子園は5年後に100回大会を迎える。この間、輝かしいドラマが繰り広げられる一方で、投手が連投で肩を壊したり、スター扱いが選手を駄目にしたりする問題も生じた。歩み続けながら問題を解決していくのが主催者の役目だ。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)


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