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先週、前橋JC(青年会議所)の賀詞交歓会に出席した。市長や商工会議所会頭をはじめ200人が集う大きなパーティーだが、若い会員たちが歓待してくれて雰囲気が大変いい。役員が町づくりの意気込みを語り、最後は全員で肩を組みJCのテーマ曲を歌った。
JCといえば、1970年代に日本JC会頭を務めた麻生太郎元首相の顔が浮かび、2、3代目のボンの集まりとの印象があって、あまり親しみを覚えたことがなかった。しかし、全国各地で選挙の立候補予定者の公開討論会を開いていることを数年前知って見直した。
もともと国会議員や知事の選挙では候補者そろい踏みの立会演説会が公費で開かれていたが、公職選挙法が変わって83年に廃止されてしまった。JCは、演説会より一歩進めて討論会に取り組んでいるのだから立派だ。
今回の都知事選でも東京JCが討論会を計画したが、細川護熙氏が参加を見送り、流会となった。政治改革を唱えて首相を務めた人が討論会を避けるとは一体どういう了見だろう。東京JCの会員も呆れているのではないだろうか。
前橋JCは2007年の知事選や08年、12年の市長選の際、討論会を開いてきた。普段も町おこしのイベントを催したり、市と災害時に協力する協定を結んだりして地域の発展のため力を注いでいる。それもこれも私のような転勤族には欠ける郷土愛の表れと思う。今年も創意あふれる様々な活動を期待している。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

桐生育ちの画家山口晃さんの作品展に足を運んだ。県立館林美術館で昨秋から開かれていたが、時間がとれず、最終日の13日になってしまった。駐車場は満車。入場券購入の行列に並ぶこと10分。大変な人気だ。
展示は「画業ほぼ総覧」の約80点。多くは日本古来の絵巻物や屏風絵、人物画のような体裁だが、現代人と丁髷姿が行き交ったり、サイボーグ風の武人や馬が登場したり、電車に日本建築の屋根がのっていたりする。時空を超えた不思議な作品が並ぶ。
例えば自画像は、歴史の教科書で見た伝源頼朝像の顔が本人になっている。03年作の「奨堕不楽圖」は、煙をあげる瓦屋根の高層ビルが発端にあり、地侍が槍や鉄砲を手に軽トラや半身馬のバイクに乗って馳せ参じる。大砲を据えた城や山車、ビルが並び、最後は近未来風の軍艦や戦闘機が発進する。さてタイトルは何の語呂合わせでしょう?。
作品の意図を考えていたら、あっという間に2時間が経つ。係員が「別館も」と勧めるので外に出ると欧風の建物が現れた。美術館が作品を集めてきた彫刻家ポンポンのアトリエの再現という。山口さんの作品を満喫した直後の私には、何とも唐突だった。
ポンポンは80年前に没したシロクマ像で有名な仏の彫刻家。群馬や館林とは縁がない。美術館のテーマが「自然と人間」だから収集してきたという。もちろん作品は魅力的だし、縁はなくてもいい。私は時空に縛られ過ぎなのか。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

マルハニチロホールディングスの子会社が群馬工場で作った冷凍食品から農薬が検出され、この正月は大忙しだった。20年ほど前、経済記者として化学業界を担当していたというのに、その名「マラチオン」には記憶がなかった。お恥ずかしい。
百聞は一見に如かず。ホームセンターでマラチオンの入った殺虫剤を買ってきた。店員に尋ねると、昔からアブラムシの駆除によく使われてきたロングセラーだという。陳列棚には家庭園芸用の小瓶と農家が使う500ccの瓶が並ぶ。誰でも簡単に買える。
嗅いでみると、激臭ではないが、シンナーのような匂いがした。それもそのはず、成分表示によると、マラチオンは50%で、残りは有機溶剤などだ。異臭の原因としてマルハニチロが工場の工事で使った塗料を疑っていたと説明したのもうなずけた。
だとしても、最初の苦情があった11月13日から回収発表の12月29日まで46日間もかかったのは納得できない。その間、口にして気分が悪くなったり腹をこわしたりした人がいるようだし、冷凍食品が原因とは気づかずに繰り返し食べた人もいるかもしれない。事実を早く発表すれば、被害は減らせたはずだ。
発表を聞いて消費者が早く返品すれば、原因解明も早くなり、会社の負担も抑制されたかもしれない。細かい事情や社内の判断はまだ判然としないが、体面や目先の損得勘定に拘泥すると墓穴を掘るという典型ではないか。(朝日新聞前橋総局長・高谷秀男)

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