裁判所内でフリージャーナリストを脅迫
【芸能人を怯えさせた“歩く録音男”の正体と闇(2)】芸能プロ代表だった下谷地(しもやち)卓也容疑者(39)が、所属していた20代女性タレントから100万円脅し取ったとして、恐喝の疑いで警視庁に逮捕された事件が奇妙な広がりを見せている。あらゆる会話を録音し、不気味がられていた同容疑者は今年2月、裁判所でフリージャーナリストを脅す事件も起こしていたのだ。
「俺は、亀田兄弟と業務提携しているプロダクションのもんだ!」
東京地裁に、似つかわしくない怒号が響いたのは今年2月7日正午ごろのこと。2階にある司法記者クラブから出てきたフリージャーナリスト片岡亮氏(41)の前に、デカい男が立ちはだかった。
目撃者によると、男はいきなり「てめえ!」と片岡氏を呼び止め、冒頭のセリフを叫び「こんなことやりやがって。どうなるか教えてやろうか!」などと威圧的に話し現場は騒然。この男こそ下谷地容疑者だった。
記者クラブではこの直前まで、損害賠償請求訴訟の提訴会見が開かれていた。原告は昨年9月、人気ボクサー亀田興毅(27)・和毅(22)兄弟らに試合会場で監禁され、精神的苦痛を受けたとする日本ボクシングコミッション(JBC)の職員。片岡氏はこの会見に関係者として出席していた。
JBC職員の監禁被害を自身のブログでいち早く伝えていた片岡氏を相手取り、亀田兄弟は名誉毀損で2000万円の損害賠償請求訴訟を起こした。訴訟合戦の様相だが、これに亀田側の関係者を名乗る下谷地容疑者も“参戦”し、会見場から出てきた片岡氏を威圧したというわけだ。
「下谷地氏はいきなり目の前に現れ、顔を5センチほどまで僕に近づけてニラみつけてきました。慌てて周囲にいた記者らが割って入り、僕は1階のロビーに下りたんですが、彼はそこにも現れ、腕を高く上げ、何やら叫んでいました」(片岡氏)
この出来事は一部ニュースサイトでいち早く報じられた。すると下谷地容疑者は自ら、このサイトに電話をし「脅迫はしていない」と否定。関係者によると「自分が亀田興毅を○○の会長に紹介し、興毅と父親の史郎さんの4人で食事をした。その関係で、亀田兄弟の裁判について事実関係を確かめるため、片岡氏に質問をしただけだ。その際、片岡氏を『てめえ!』と呼びつけてしまった。それで騒動になってしまった」。だが、騒動はこれで終わらなかった。
「その後、僕が暴力団関係者だとするウソのファクスが一部マスコミにばらまかれまして…。現物を見た知人の週刊誌記者は『下谷地が以前、他のトラブルで書いた文体とソックリだ』という話をしていました。もしかしたら送信者は下谷地氏で、嫌がらせされた可能性もあります」(片岡氏)
片岡氏は3月、地裁での一件を脅迫だとして警視庁に被害届を出し、ファクスばらまきの件と共に「現在、丸の内署が捜査中」という。また、下谷地容疑者はかつて、高田道場所属の格闘家だったこともあり、元キックボクサーの片岡氏とは初対面ではなかった。
「すっかり下谷地氏のことは忘れていたんですが、後で思い出したのは、1998年に同じ総合格闘技の大会に出場することになったときのことです。彼は元プロボクサーという触れ込みでしたが、試合経験があるようには見えず、試合直前になると荷物を置いたまま、会場から去ってしまったんです。当時の主催者が困惑していたのを覚えています」(片岡氏)。高田道場所属時代は、記者会見でK―1選手を名指しで挑発したこともあった下谷地容疑者だが、結局は試合を見せることはなかった。その後は格闘技大会のプロデュースをしたり、芸能プロを経営したりしていたが、関係者の間ではトラブルの多い人物として知られていた。
(続く)