周富徳さんの店、“感無料”のエビマヨに行列

2014年4月15日6時0分  スポーツ報知

 「エビマヨ」で追悼―。誤嚥(ごえん)性肺炎のため、8日に死去した中華料理人・周富徳(しゅう・とみとく)さん(享年71歳)が経営していた東京都港区の中華料理店「広東名菜 富徳」には14日、周さんの味を求めて多くのファンが訪れた。マネジャーの長男・志鴻(しこう)さん(46)は、亡き父が考案した「エビマヨ」を、来店した客に無料で提供。行列ができたランチタイムには約200人が足を運び、“炎の料理人”の死を悼んだ。

 「周富徳を偲んで、ランチタイム、ディナータイムにエビのマヨネーズをすべてのお客様にご用意させていただきます」―。店頭に貼られた紙には、ファンを大事にした父の思いが込められていた。開店してまもなく、店頭には約30人の列ができた。「父が大好きだったエビマヨを、一人でも多くの皆さんに味わってほしいんです」。志鴻さんは、店に入りきらない客の方に目を向け、無料サービスで提供した真意を話した。

 13日に伝えられた周さんの訃報は、店を構える青山のオフィス街にも瞬く間に広まった。店内にある全126の座席はすぐに埋まり、午前11時から午後3時までのランチタイムだけでも、200人近い客にエビマヨが提供された。店を訪れた20代OLは「早すぎる。もっと周さんの真心こもった料理を食べたかった」と残念そう。30代の男性サラリーマンは「店のノウハウは息子さんに継承されているようで、さすが」とうなった。

 周さんの命を奪った誤嚥性肺炎は、病気などで咳(せき)をする力が弱まり、口腔(こうくう)内にすむ細菌や逆流した胃液が誤って気管に入って引き起こされる。志鴻さんによると昨年8月、横浜市内の病院に入院した周さんは、10月に胃を切開して管で直接栄養を取る状態となり、口からは固形の食事を取れなくなった。大好きだったアイスクリームや果物も禁じられた。「せめて氷だけでも…」という家族の願いは病院側に受け入れられ、周さんはうれしそうに氷をなめていたという。

 今年2月には退院するまでに回復したものの、3月下旬に容体悪化。今月8日、帰らぬ人となった。「心を込めて作れ」というシンプルかつ奥深い父の“遺言”。料理人としても志鴻さんは、その志を全うするつもりだ。この日、店を後にする客の笑顔を見れば、天国の父も安心していることだろう。(江畑 康二郎)

 【周富徳さんのエビマヨレシピ】

 ▼材料(3人前) 大エビ6尾、塩、こしょう少々、卵2分の1個分、片栗粉適宜、ごま油少々、油、(A)(マヨネーズ150グラム、コンデンスミルク150グラム、フレッシュミルク75グラム、塩・ジン・トマトケチャップ各少々)

 ▼作り方

 〈1〉殻をむいた大エビを背割りにして背わたを取る。塩・こしょう・ごま油をかけ、溶き卵にくぐらせたあと、片栗粉をまぶす。〈2〉180度の油でカラッと揚げる。〈3〉2色ソースを作る。(A)の材料のうち、ケチャップを入れる前のものを混ぜ合わせ、さっと火を通す。そのうちの半分にケチャップで色をつける。〈4〉完成した2色のソースをエビにあえて皿に盛る

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