私たちはこのまま破局への道を歩み続けるのか。

 煎じつめれば、それが地球温暖化をめぐる世界の多くの専門家からの問いかけである。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめる報告書の概要が固まった。

 07年の前回から中身はそう変わらないが、この7年間に各国で重ねられた研究により、温暖化とその甚大な影響がより確実に見えてきた。「懐疑論」はほぼ否定されたといってよい。

 報告書によると、このままでは今世紀末に世界の平均気温は産業革命前より3・7~4・8度上昇する。国際目標の2度未満を大きく上回る。

 水資源や農作物などへの悪影響はすでに表れている。熱波や洪水、台風など極端な気象現象や海面上昇の恐れが高まり、生き物の大絶滅が起きかねない。水や食料の欠乏は、人間を戦争に駆り立てる要因にもなる。

 対策は待ったなしだ。二酸化炭素など温室効果ガスの排出を減らして気温上昇を抑える「緩和策」と、温暖化に伴う災害や凶作などに備える「適応策」の両輪を回すべきときだ。

 今世紀末の気温上昇を2度未満に抑えるにはどうしたらよいのか。世紀半ばのガス排出量を10年比で4割から7割減らし、そして世紀末にはゼロにする。それでやっと目標達成の可能性が高まるという。

 そのためには、もっと省エネと再生可能エネルギーの利用を進めるとともに、ガスを空中に出さない新火力発電などを普及させることが重要だ。

 原子力の拡大は、核の拡散や廃棄物処理など別のリスクの深化が避けられない。原発事故の処理も総括もできていない日本のとるべき選択肢ではない。

 ことし9月の国連気候変動サミットを起点に、来年末には20年以降のガス排出削減に向けた新しい枠組みがつくられる。

 各国がバラバラに動いても状況は改善しない。環境技術を途上国に広め、統一的な炭素価格の導入でガス排出を減らすなど世界の協調行動が必要だ。

 英米独や中韓では、温暖化で起きる問題を定期的に調べ、国や自治体レベルの適応計画づくりも進めている。そうした流れに日本政府は遅れている。

 日本が昨年示したガス排出削減の目標は、努力不足として国際的に批判された。国の適応計画づくりも来年の予定だ。

 世界に通じる削減目標を早急に詰めるとともに、温暖化に備えた防災構想や省エネ型の都市づくりなどを強力に進める態勢を整えるべきだ。