脱法ドラッグ:乱用者の半数近くが幻覚 覚醒剤上回る

毎日新聞 2014年04月15日 02時30分(最終更新 04月15日 02時35分)

乱用薬物別の健康被害と乱用者の特徴
乱用薬物別の健康被害と乱用者の特徴

 吸引直後の車の暴走運転などが相次いでいる脱法ドラッグの乱用者について、国立精神・神経医療研究センター(東京都)が精神病床がある全国の病院を対象に調査したところ、統合失調症のような幻覚・妄想状態が続くケースが半数近くに上り、覚醒剤患者を上回った。薬への渇望を抑制できない「依存症」も覚醒剤患者並みに多かった。脱法ドラッグの乱用が、一過性の問題行動にとどまらず、覚醒剤と同様に深刻な健康被害につながる危険性が初めて示された。

 センターは2年に1度、薬物乱用と精神疾患の関係について調査している。最新の2012年は全国1609施設が9〜10月に診察した薬物乱用患者の原因薬物などを調べ、回答があった1136施設の有効な848症例を分析した。その結果、10年調査までほとんど症例がなかった脱法ドラッグが原因の16.3%(138例)を占め、覚醒剤の42.0%(356例)に次ぐ2位になった。3位は睡眠薬と抗不安薬を合わせた向精神薬の15.1%(128例)だった。

 さらに、治療や再乱用防止教育に生かすため、13年度になって12年調査を詳細に分析。薬物を1年以内に使ったケースを抽出して最新の状況を探ったところ、覚醒剤の138例と脱法ドラッグの126例が拮抗(きっこう)し、脱法ドラッグの乱用が急増している実態が裏付けられた。向精神薬は86例だった。

 幻覚・妄想などの精神障害を発症したケースは脱法ドラッグが45.2%と最も多く、覚醒剤の34.1%を上回った。依存症は向精神薬が72.1%と最多だったが、脱法ドラッグも58.7%で、覚醒剤とほぼ同じ割合だった。

 各薬物の乱用者を比較したところ、脱法ドラッグの平均年齢(27.9歳)が最も若く、男性の比率が90.5%と最多だった。覚醒剤患者の50.0%が暴力団と交流していたのに対し、脱法ドラッグは7.1%。覚醒剤に比べると学歴も高い人が多く、ごく普通の若い男性が、好奇心から脱法ドラッグの乱用を始め、依存症に陥るケースが多い傾向が明らかになった。

 脱法ドラッグを巡る規制は年々強化されてきたが、調査を担当した同センター薬物依存研究部の松本俊彦・診断治療開発研究室長は「規制を逃れるために化学構造を一部変えた『新種』が流通する構図は変わらない」と指摘。「法規制や取り締まりだけでは限界がある。再乱用防止のための薬物教育や治療体制の整備が急務だ」と話している。

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