米国の広告売上高でインターネットがテレビを追い抜く。つい最近の予想よりも3年近くも前倒しで実現したのかと驚いたのだが・・。
実は先日、IAB(the Interactive Advertising Bureau)とPWC(Pricewaterhouse Coopers)から恒例の"IAB internet advertising revenue report"(2013年下半期版)が公表されたのだが、見出しが「Internet advertising surpassed Broadcast Television」 となっていた。ネットメディア業界の者にとってはTVメディアを凌駕するのが大きな目標でもあっただけに、そのレポートに応えて一部ネット業界ニュースサイトが"テレビを超えた"と喜び勇んだ見出しを付けたのだ。
IABのレポートで示された2013年のメディア別広告売上高(単位10億ドル)は次のようになる。
*メディア別広告売上高
インターネット広告売上高は428億ドルとなり、401億ドルのブロードキャストTVを抜いて、トップに躍り出た。ただし、レポートの本見出しの下に、次のような説明が付いている。
Internet advertising revenue now represents 57% of all Television (Broadcast and Cable) advertising.
インターネット広告売上高は、ケーブルも含めた全TV広告の57%になったということだ。つまり、IABではTV広告をブロードキャストとケーブルとに分けて計数しているのである。そこで、ワシントンポストの記事でも次のような図を掲載していたし、WSJも「Digital Ad Revenue Skyrockets, But Still Lags TV」との見出し記事でネットはTVとまだ差を付けられていると指摘した。
*全テレビ広告売上高とインターネット広告売上高
ただ、広告売上高で急成長するインターネットがTVを追い抜くのは時間の問題である。米国でも3〜4年以内にネットがメディア広告のトップに立つのは間違いないだろう。一方でTV広告は踏ん張っている。新聞のように広告売上高が急降下し続けているではなくて、メディア全体の広告売上高の成長に何とか付いて伸びてきている。その背景として、メディア接触時間を見てもTVの人気が根強いことがある。ニールセンの調査によると、一人当たりの月間TV視聴時間は185時間で、インターネット(オンライン+モバイル)の約3倍もある。eMarketerの調査ではTVとインターネットの接触時間は拮抗していたことからも分かるように、一般にTV視聴時間の調査は広告料金に影響するためバイアスがかかりやすい。それでも、日本に比べ米国のTV番組のほうが面白いせいか、米国人のほうがTVを長く視聴しているようだ。
*月間メディア接触時間。TV接触とオンライン接触とモバイル接触
そのせいか、各調査会社によるTV広告費の予測でも、2017年まで平均して5.2%の年成長率で伸び続けるという。それでもモバイル広告で勢いづくインターネット広告が、TV広告に追いつくのは遠くないと言えそう。
*米国のTV広告売上高の予測。各調査会社別の予測データをプロットしている
◇参考
・TVコマーシャル、リーチは頭打ちだが売上増続き「広告の王座」を堅守(メディア・パブ)
・Don’t buy the hype: The Internet hasn’t killed TV advertising(washingtonpost.com)
・博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2013」(博報堂DYメディアパートナーズ)
・広告キャンペーンの到達と効果測定(AD STUDIES vol.45,2013)
・Data Dive: US TV Ad Spend and Influence (Updated – Q3 2013 Data)(Marketing Charts)