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ウィンドウズXP サポート終了

4月9日 21時00分

田辺幹夫記者

2001年に発売されたパソコンの基本ソフト、ウィンドウズXPのサポートが、4月9日で打ち切られました。
今後はパソコンがウイルスに感染する危険性が高まりますが、家庭や企業では、まだ多く使い続けられるとみられます。
切り替えの現状と、使っている人はどうすればいいのかなどについて、科学文化部の田辺幹夫記者が解説します。

サポート終了

今から13年前の2001年に発売されたウィンドウズXP。
家庭や企業で広く使われてきましたが、メーカーによるサポートが4月9日で打ち切られました。
発売元のマイクロソフトは、これに合わせて記者会見を開きました。

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加治佐俊一 最高技術責任者は「XPの発売から月日がたち、インターネット上では高度なサイバー攻撃が行われるようになった。XPのウイルス感染率は最新の基本ソフトの20倍以上であり、早く新しい環境に移行してほしい」とパソコンを取り巻く環境の変化を説明し、対策を呼びかけました。

高度化する攻撃

実際、XPが発売された当時と比べると、ウイルスなどによるサイバー攻撃は高度化していて、最近ではネットバンキングを狙った巧妙なウイルスや、省庁や重要インフラ企業を標的にしたサイバー攻撃も起きています。
こうした状況にXPでは対応しきれないなどとして、メーカー側は7年前、サポート打ち切りの日程を発表し、事前に周知を図ってきたとしています。

進まない入れ替え

しかし、基本ソフトの入れ替えはスムーズには進みませんでした。
民間の調査会社、IDCジャパンによりますと、ことし6月末の時点でも、国内では▽個人のパソコンの9%に当たる351万台、▽企業や自治体などのパソコンの7%に当たる241万台の、合わせて600万台近くで引き続きXPが使われる見通しです。

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自治体でも切り替えが間に合わないケースがあり、総務省の調べでは、サポート切れの時点で、全国の自治体のパソコンの13%に当たる26万台余りがXPのままだということです。

対応に追われる中小企業

打ち切りの5日前、LEDライトの販売などを行う大阪の中小企業、トライアークでは、XPのパソコンの入れ替え作業を急ピッチで進めていました。
この会社では、年度末の業務が忙しく人手が割けなかったことから、営業などで使っているパソコン十数台の入れ替えが直前になったということです。
基本ソフトの変更には120万円ほどかかる予定だということです。
トライアークの西村正廣社長は、「私たちのような中小企業では費用がかかって、正直、大変しんどいですが、ウイルスの感染や個人情報の漏えいなどが起きてしまったら、お金では取り返せない、いちばん大切なお客様からの信頼を失うことになりかねないので、期限までに終わらせて安全に業務ができるよう取り組んでいます」と厳しい現状を話していました。

4割余りの企業が利用

3月上旬、大阪の金融機関が、取引先の中小企業1800社余りを対象に調査を行いました。
すると、回答があった1277社のうちXPをまだ利用していた企業は、40%余りの537社で、このうち268社がサポート打ち切り後もXPを利用すると答えたということです。

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調査を行った大阪信用金庫の平山和久副調査役は、「XPを使い続ける危険性が十分に理解されておらず、『まだ使えるものは使おう』と考える経営者もいるのではないか」と分析していました。

危険高まる期限切れソフト

サポート終了後も使い続けると、どのような危険性があるのでしょうか。
基本ソフトには、「ぜい弱性」と呼ばれる欠陥がたびたび見つかっています。
サポートのあるうちは、このぜい弱性を修正するプログラム(「パッチ」とも呼ばれます)が作られ、無償で配布されていましたが、サポート終了後はこれがなくなります。
そうすると、たとえセキュリティー対策ソフトを導入していても、ぜい弱性は残るため、パソコンがウイルスに感染する危険性が高まるのです。

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遠隔操作 パスワード盗難

コンピューターウイルスに感染すると、パソコンを遠隔操作されて掲示板に勝手に書き込みをされるなど犯罪行為の踏み台にされたり、パソコンに保存している重要な個人情報が持ち出されたりするほか、ネットバンキングなどのパスワードが盗まれる危険性もあります。
最近では、大手出版社などアクセス数の多いホームページが改ざんされ、閲覧した人がウイルスに感染するよう仕組まれることもあり、XPの欠陥を狙った攻撃の手法が闇のサイトで売買されることもあるということです。
セキュリティー会社、NRIセキュアテクノロジーズの浅野岳史さんは、「パソコンを家に例えると、壁に穴が開いてもそのまま放置され、そこから財産を持って行かれるような状況だ」と説明します。

それでも使うのなら

XPのサポートが終わったあと、さまざまな事情でXPを使わざるをえない場合、どうすればウイルス感染のリスクを下げることができるのでしょうか。
セキュリティーの専門家、情報処理推進機構の加賀谷伸一郎調査役は、どうしても使わなければならない場合、▽最新の修正プログラム(パッチ)をパソコンに適用する、▽パソコンをネットワークから切り離す、▽USBメモリーや外付けのハードディスクなどを使わない、という対策でウイルス感染のリスクを少しは下げられるとしています。
そのうえで「できるだけ早く、サポートが継続している基本ソフトに乗り換えることが大原則」と説明しています。

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今後もサポート切れが

パソコンの買い換えや基本ソフトの入れ替えには手間もお金もかかるため、直前に慌てないためには前もって準備することが必要です。
今後は、▽ウィンドウズビスタが2017年4月11日、▽ウィンドウズ7が2020年1月14日、▽ウィンドウズ8と8.1が2023年1月10日に、それぞれサポートが切れる予定です。
こうした基本ソフトを利用している人は、例えば「東京オリンピックの年に『7』のサポートが終わるんだな」などとサポート切れの時期を頭に入れ、切り替えの予定を立てるとともに、メーカー側も早い段階から利用者に知らせていく努力が必要だと感じました。