【ベルリン=竹内康雄】国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は13日、温暖化ガスの排出削減に関する報告書を公表した。地球の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える国際合意を守るには、温暖化ガスの排出を2050年に10年比40~70%減らす必要があると分析。電力供給に占める再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーの比率を現在の30%から80%以上に引き上げる対策を取るよう促した。
7日始まった総会には、各国政府の政策担当者や科学者らが参加。最終的な文言の調整を進め、12日に報告書がまとまった。13日記者会見したIPCCのパチャウリ議長は「かつてない水準の国際協力が今、求められている」と述べた。
国際社会は産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることで合意している。そのためには、大気中の温暖化ガスの濃度を450PPM(PPMは100万分の1)以内にする必要があると説明。現在の水準は430PPMで、毎年1~2PPM増えている。「30年以降に対策をとる場合、困難さが大きく増す」と警告、早期に行動するよう求めた。
目標達成には50年に10年比で40~70%の排出削減が必要と推計。具体的に再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーを大幅に増やすことや、省エネや二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)の普及を挙げた。2100年には温暖化ガスの排出はゼロか、大気中からの回収でマイナスになる必要性を指摘した。
再生可能エネルギーについては「技術が大きく進展している」と評価し、大規模な普及も可能と指摘した。原子力は「ベースロード電源で排出削減に貢献できる」としながらも「さまざまな障害やリスクがある」と言及した。
一方、国際社会が現状のまま削減努力をしなければ、2100年には気温が3.7~4.8度上昇し、国際合意は守れないとの見解を示した。
温暖化ガスは1970~2000年の間は毎年平均4億トン(前年比1.3%)増えていたが、00~10年には10億トン(同2.2%)に急増したと説明。70年から10年までの排出のうち、化石燃料の燃焼や産業活動など人為的活動による排出が78%を占めたと推計した。産業革命が始まった時代の1750年から2010年までの排出量のうちほぼ半分が過去40年で排出されたという。
IPCCは昨年9月に第1作業部会が気候変動の科学的評価に関する報告書を、3月末には第2作業部会が温暖化による被害の軽減策についての報告書をまとめた。今回は第3作業部会がまとめ、7年ぶりの改定。国際社会は15年末に、20年以降の温暖化対策の次期枠組みの合意を目指しており、各国はこの報告書をもとに交渉を進めることになる。
温暖化ガス、IPCC