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微妙な異彩を放つ丼物、それが「肉丼」
「丼物」と聞いてまず思い浮かぶメニューは何だろう。上の写真にもあるカツ丼・玉子丼・親子丼・中華丼あたりは誰でもすぐに出てくるだろう。
そういった中、やや謎めいた雰囲気をもっているのが写真まん中にある「肉丼」。 定番と言えるほど、どこの店にあるわけでもない。牛丼や豚丼が何の肉を使っているかはっきりしているのに対して、「肉」止まりであるところも気になる。 実体を知るべく、いろいろな肉丼を食べてみよう。 > 個人サイト テーマパーク4096 小さく息切れ 野菜というヴェールをまとう肉丼たち丼物の中でも独特のポジションに位置する「肉丼」。肉の丼物であるのはわかるが、そこから先が見えてこないところにミステリアスなムードを感じる。
すでにうまそうな雰囲気漂う
なじみのメニューに混ざる「肉丼」
まずやってきたのは、埼玉県草加市にある「陣太鼓」というお店。商店街になじんでいて、古くからありそうな中華食堂といった雰囲気だ。
海老チャーハンとマーボー丼に挟まれてメニューにたたずむ「肉丼」の文字。他のどれも名前から様子が想像できるのに、肉丼だけははっきり見えてこない。 その実体はこれだ。 野菜を従えて登場した肉丼
なるほど、こういう肉丼もあっていいよね、という肉丼。「肉丼」と名付けておいて、野菜もふんだんに使ってくるスタイルだ。タマネギのはみ出しも肉丼らしいワイルドではないか。
みそ汁・漬物に加えて卵も標準装備
卵投入でワイルドからマイルドに
「今日のごはんはお肉よ〜」と子供をおびき寄せておいて、ばっちり野菜も仕込むお母さんのスタンスだ。
子供ならチェッと思うかも知れないが、今は私も大人。野菜も大事だねと言い聞かせて肉丼を食べる。野菜の受容精神も広くなっているので、おいしく食べられる。 肉丼はこうしたごく普通の中華料理店のメニューにひっそりとたたずんでいることが多いようだ。埼玉県蕨市の「池田家食堂」もそうだ。
外観からは店名がわからないのもすごい
丼物3番目というポジションの肉丼
玉子丼と親子丼という関連の高い丼物の間に割って入る「肉丼」。「いつも定番だけじゃつまんなくない?」と、お店が提案してきているようにも見える。
この店にはもう1つ、気になるメニューがある。 肉丼以上に謎めくスープ
「肉スープ」である。
肉丼はまだ聞いたことある感じもするのだが、肉スープは新鮮。「肉」も「スープ」も全く普通なのに、合体して「肉スープ」になると独特の響きが出てくる。こちらも注文してみよう。 注文間違いにも思えるビジュアル
底からどんどん出てくる肉たち
やってきたのは、ほとんど野菜しか見えない「肉スープ」であるはずのスープ。謎が深まるようにも見える。
心配しながらかき回すと、下の方からはずかしがり屋の肉が続々と出てきて一安心。「俺こそが肉だ」と主張しがちの肉だが、今回ばかりは奥ゆかしい。 肉丼という満月にかかる野菜という雲
肉スープほどではないにせよ、続いて登場した肉丼も主人公であるはずの肉はやや控えめ。存在を示しつつも、野菜たちに身を隠す。お肉のチラリズムだ。
雲がかかった満月のようでもある。しかし「肉丼」という言葉の響きからすると、もう少し主張してもよいのではないか。 この向きからだと立派に肉丼
牛の楊枝入れの味わい
丼物は見る角度によって表情を次々と変えることがある。この店も肉丼もまさにそうで、上の写真からだと肉が主役になっていることがよくわかる。
北島三郎座長公演も、脇を固める役者がいてこそサブちゃんが映える。そういう肉丼だと思う。
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