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小保方会見 「最もゲスな質問」についてベテラン記者が検証

NEWS ポストセブン 4月13日(日)16時6分配信

 4月9日、STAP細胞についての論文を巡る小保方晴子氏の記者会見が開かれた。報道関係者が200人以上集まり、2時間半にも及ぶ会見では、下世話な質問も飛んだ。なぜ記者はそんな質問をするのか、フリーライター歴25年の神田憲行氏が考える。

 * * *
 小保方さんの記者会見ではさまざまなジャンルの記者から質問が飛び交っていて、実に興味深かった。職業柄「この質問はいい」「これはダメ」とか勝手にジャッジしながら見ていたのだが、いちばんダメな典型が「説教型」だろう。記者会見を自分の意見の開陳の場と勘違いしているタイプで、残念ながらわが陣営の「フリー」系の人に多いような気がする。記者会見では司会役の代理人弁護士から質問を遮られたのも当然と思う。

 「喧嘩腰」で質問する記者もいた。自らの疑惑についてのらりくらり答弁する政治家や公務員相手に、「あんたがやったことの重大性」をわからせるためにいきなり胸ぐら掴むような質問のやり方はある。だがこの場合はむしろ小保方さんに答えにくさだけしか残さなかったのではないか。中継されているネットを通じて記者の所属メディアも周知されるので、一般的にもマイナスイメージしかないと思う。

 面白かったのは、「喧嘩腰」記者に続いて司会に指名されたのが偶然にも同じ所属メディアの記者で、たぶん年配らしい彼は「僕は少し優しく聞きます」とソフトな口調で質問しだしたことだった。彼は前の「喧嘩腰」記者(声から判断すると若い記者だと思う)の質問の仕方を苦々しく感じていたのか。取材現場で同僚をたしなめるというか、当てこするのは珍しい。彼の口調はソフトだが質問は的確で、司会からあらかじめ「質問はひとつ限り」と制限されていたのに複数回許されていた。

 会見でもっとも「ゲスい」瞬間は、大阪のスポーツ紙記者がしたこの質問だろう(引用は毎日新聞HPから)

《−−笹井氏と不適切な関係にあったと報道されている。どう感じたか。

 小保方 そのようなことはありませんし、そのような報道が出て本当に戸惑っております。

−−ホテルなど、理研の給料だと考えられないような生活をしていた。

 小保方 そのホテルもそうですが、ホテルで生活をというか、滞在をしていたころは、ハーバードの研究員だったので、その旨の出張での滞在です。》

 ゲスい。ゲスいけど、自分もそこにいたらしたかもしれないなあ。ひとつ目の「関係」については私でもしない(してもまともに答える可能性がないから)。するとしたら

「一部報道にありましたが、どなたかのセクハラを会社に報告されましたか」

 かなあ。ふたつ目のホテル云々は、小保方さんの回答に驚いた。報道によるとホテル代は年間で500〜600万円という。ハーバード大学というところは、教授でもない人の出張旅費をそこまで負担するのだろうか。たいした大学である。

 二つの質問は今回の騒動の本質ではない。なぜ取材記者は本質でもない、ゲスい質問をするのだろうか。とくに週刊誌のライターは。ゲスいライターのひとりとして答えるなら、「読者が知りたいことがそこにあるから」ということになる。

 建前に聞こえるかも知れないが、記者は「読者の代表」として記者会見に臨席している。だから自分のメディアの読者が好みそうな質問は、自分の趣味ではなくても聞かざるを得ないときがある(逆にいうと、そう捉えないとやってられないところもある)。先述の説教記者がダメというのは、記者が説教する立場にないことに加え、それが誰の代表にもなっていないからだ。

 記者会見がネットで生中継されるようになって、取材活動の可視化が進んできた。取材する側としては緊張もあるが、メディアの特性、記者の質問の巧拙も比較しながら見るとけっこう面白い。

最終更新:4月13日(日)17時53分

NEWS ポストセブン

 

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