Hagex(Hagex (id:hagex))さんが釣り本を出したと聞いて早速購入して読んでみました。一応研究者ですので本はいろいろ読んではいるのですが,ここで紹介しても全く面白くありません。しかし,Hagexさんの本はネット情報の真偽を見破るために参考になる部分があるので紹介します。
2ch、発言小町、はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い (アスキー新書)
- 作者: Hagex
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/04/10
- メディア: 新書
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内容は釣り師の話になるわけですが,特に釣りに興味がなくても参考になるのが第6章「「社会の釣り」であるネットのデマを見破る」です。原発事故以来,さまざまなデマが出てきており,ツイッターはデマッターと揶揄されたりもしました。このようなデマを流す人たちを非難してもデマそのものはなくならないでしょう。
そうした状況の中では「デマを見破る力」を情報の受け手の側が身につけるしかありません。その力を身につけるためにこの本は参考になると思います。Hagexさんはネットデマの特徴を6つ上げています。
- ショッキング
- 差別的な要素
- 政治的な要素
- 他人に伝えたくなる
- 画像が使われている
- 感動のエピソード
これらはどれも真実らしく語られているわけですが,いろいろ確認してみるとおかしいと分かるわけです。当事者が否定するような場合もあります。実際,この中でいくつか触れられている事例は私もネット上で目にしており,だまされそうになったものもあります。それはこの本にも載っている以下の事例です。お笑い好きだからかな(笑)。
ビートたけしが講談社に殴り込みに行き,収入が減ったたけし軍団員に対して,金銭的な援助を行ったというエピソードが,2013年4月,facebook上で広がる。これに対して,グレート義太夫が否定。実は以前からあったデマエピソードだが,facebookのシェア・「いいね!」によって,再び注目を集め,拡散した。(176~177頁)
今回も山中さんが小保方さんを擁護するニュースが流れていましたが,日付を確認するとかなり前のものだったというのがありましたね。こういうのはデマではありませんが,今これを信じてしまうと「デマ」となってしまいますよね。
山中伸弥氏:「STAP研究に協力、小保方さん大歓迎」は、2ヶ月前の記事です。(秋元祥治) - 個人 - Yahoo!ニュース
この本ではデマの分類だけではなく,デマを見破るポイントも紹介しています。
デマを見破るポイント
(1)不自然な点を探す
「モヤモヤするポイント」はないか探す。
(2)フックを見つける
何かしらの魅力が隠されているのでそれを見つける
(3)なぜこれが流行しているか考える
「ショッキングな要素」で思考を停止させる効果がデマにはあるので客観的に判断する練習をする必要がある。
(4)情報の流れを追いかける
「情報のソースのチェック」と「情報の伝播するルート」を追いかけること
(5)画像の有無をチェックする
他のニュースやエピソードで使われた画像を流用している可能性があるのでgoogleの画像検索でチェックする。
(6)多くの人がRTやシェアしているものはとくに疑ってかかる癖をつけておく
「フィクション」であるという前提で読む
(178~181頁)
なるほどと思われるものが多く含まれていて,私のように大学院でこのような訓練をしていると,ある程度デマを見分けることはできるかなと思います。研究はそもそも先行研究や資料を疑ってかかるものですので,こういうことを日々やっているわけです。ただ何でも疑いたくなるので「性格悪い」と言われることもあるわけですが(笑)。
それで以下の部分。これは誰もが気をつけないといけないことだと思います。
デマの判断側はどうしても「良いことをしている」という意識があるので,主張や対応が強引になりがちである。デマ退治をしているつもりで,実は自分がデマ発信側になっていた!という危険性も十分あるので,気をつけよう。(182頁))
この本の最後の章ではトピシュ (id:topisyu)さんへのインタビューが載っていまして,こちらもおもしろいのでぜひ読んでみてください。
角川本社ビルでHagexさんのインタビューを受けてきました - 斗比主閲子の姑日記
最後に古典をご紹介。世論がどのように形成されるのか。こちらも読むと非常に面白いですよ!!