Updated: Tokyo  2014/04/14 10:21  |  New York  2014/04/13 21:21  |  London  2014/04/14 02:21
 

4月消費者物価は増税抜きでも上振れか、追加緩和さらに遠のく可能性

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  4月14日(ブルームバーグ):4月に入って消費増税分を上回る値上げが行われているのではないかと指摘する声がエコノミストの間で増えつつある。月末に発表される消費者物価指数の結果次第では、物価見通しの上方修正が相次ぐとともに、日本銀行の追加緩和期待が一段と後退する可能性もある。

第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは、4月分のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)について、「1%台後半まで上昇する可能性が出てきた」と述べ、「4月25日に公表される4月分の東京都区部CPIの結果次第では、追加緩和観測が大きく後退する可能性もある」と指摘する。

新家氏はブルームバーグ・マーケッツ・マガジンが実施している日本の経済予測ランキングで2年連続トップに選ばれている。同ランキングで3位だったニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長も、4月のコアCPIは「消費税率引き上げの影響を除くベースで2%に急接近する可能性も否定できない」とみている。

日本銀行は消費税率引き上げの影響について、4月の消費者物価を1.7ポイント押し上げると試算している。25日発表される4月の東京都区部の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)から増税分を差し引いた上昇幅が前月(1.0%)を上回れば、消費増税を機に前月よりも大きな物価上昇が起きたことになる。

東大日次物価指数

エコノミストらが4月の物価上昇率の上振れを意識するようになったのは、東大の渡辺努教授らが開発した東大日次物価指数がきっかけ。同指数は日本全国の約300店舗で販売される商品(食料品や日用雑貨など)のデータを販売時点情報管理(POS)システムを通じて収集し、3日後に物価指数を公表している。

それによると、8日までの1週間平均は前年の同じ時期に比べ1.0%上昇した。3月の平均は前年同月比0.6%低下だったので、消費増税後は増税前に比べて差し引き1.5ポイント程度上昇したことになる。同指数は消費税を除くベースで算出しているため、増税分以上の値上げ、いわゆる便乗値上げが進んでいる可能性を示唆している。

JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは東大日次物価指数について「カバーしている品目はCPIバスケットの17%にすぎない」ため、「CPIを予測する精度は決して高くない」としながらも、4月の東京都区部コアCPIは現時点での同社の予想(消費増税分を除き1.0%上昇)を「上回るのかもしれない」と指摘する。

バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは4月以降の同指数の上昇について、「消費税率引き上げ分以上にスーパーの売り値が上がっている可能性を示唆する。今まで転嫁できていなかったコスト増の一部を、この機に売り値に反映しようとする姿が垣間見える」と指摘する。

97年とはかなり異なる

新家氏は「企業は頻繁な価格改定を好まないため、通常は4月や10月といったタイミングに価格改定が集中する傾向がある。今回はこの価格改定集中月である4月に消費増税が加わった」とみる。この機会に、これまでコスト増を転嫁できなかった分を合わせて値上げするという行動が増えるのは「不自然なことではない」という。

さらに、政府が増税分の円滑な価格転嫁を進めるために成立させた「転嫁対策特別措置法」が「この企業の対応にお墨付きを与える形になった」と指摘。「97年の引き上げ時には、『十分な価格転嫁ができるかどうか』ではなく、『便乗値上げを防げるか』といった議論が多かったことを考えると、状況は前回とかなり異なる」という。

ブルームバーグ・ニュースが日銀の4月7、8日の金融政策決定会合前に実施したサーベイでは、日銀の追加緩和予想時期が7-9月が最多となり、1カ月前は同数だった4-6月を大きく上回った。

年内の追加緩和は想定しにくくなる

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは、4月以降は各種の報道ベースや東大日次物価指数の跳ね上がりなどの動きに照らしてみると、「消費税増税分以上の値上げが実施されている可能性があり、消費者物価指数も消費税を除くベースで上振れしている可能性がある」とみる。

武藤氏は、こうした値上げが14年度CPIを「仮に0.3%ポイント程度でも押し上げることになれば、少なくとも14年度の日銀の見通しが達成されるがい然性は一気に高まる」と指摘。その場合、「7月や10月に想定されていた物価見通しの下方修正は実施されない可能性が高いと思われ、結果として年内の追加緩和は想定しにくくなる」としている。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net谷合謙三, 宮沢祐介

更新日時: 2014/04/14 00:00 JST

 
 
 
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